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そのサッカーを疑え!

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サッカー日本代表。ベストメンバーで臨み2試合で12-0は戦力の浪費か。無駄遣いを嘆く

サッカー日本代表。ベストメンバーで臨み2試合で12-0は戦力の浪費か。無駄遣いを嘆く

 中国戦7-0。バーレーン戦5-0。2試合合計すると12-0だ。喜ばしい話に聞こえるが、筆者は勝ちすぎたとみる。それぞれ3-0で十分なのに12点も取ってしまった、と。へそ曲がりだからではない。日本もそうした考え方をしていかなければならない時代に突入したと考えるからだ。

 2026年北中米W杯アジア3次予選。日本が所属するC組を多くのメディアは“死の組”だ。大変なことになったと騒いだ。しかし出場枠

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日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

 チャンピオンズリーグ(CL)に出場できるか否か。日本代表クラスの選手にとって、このことはますます大きな問題になってきた。

 8月29日。中国戦(9月5日)、バーレーン戦(9月10日)に臨む日本代表メンバー発表会見が行われたその夜、日本時間で日付が変わった未明、CL2024-25シーズンのリーグフェーズ抽選会が行われた。

 ご承知のようにCLは今季から大会方式が大改革された。一言でいえばさらに

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欧州より30年遅れか。「ポケットをとる」がTV解説者の間でいまごろ流行語になるニッポンの問題

欧州より30年遅れか。「ポケットをとる」がTV解説者の間でいまごろ流行語になるニッポンの問題

 サッカーを特に現場のスタジアムで観戦していて、ワクワク楽しみになる瞬間はどこか。

 「マイナスの折り返しが決まった瞬間だ」と述べたのはヨハン・クライフだ。折り返す距離がゴールに近ければ近いほど、シューターはボールとマーカーとGKの3つを同時に視界に捉えることができる。その難易度は下がる。まさに決定的チャンスになる。ゴールを逆算した時、このルートこそがいちばんの近道になる。逆にディフェンダーはシ

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W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

 9月5日の中国戦を皮切りにスタートする2024年W杯アジア最終予選。抽選の結果を受け、メディアは一斉に日本が所属するC組を“死の組”だと報じた。3グループ(A、B、C)の中で最も厳しそうなグループであることは確かで、たとえば韓国が戦うB組と比較すれば一目瞭然だ。無風区。韓国は張り合いがないくらい緩い組に振り分けられた。

 しかし今回のアジア枠は8.5だ。各組で3位、4位になった計6チームにも、

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パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

 0-3の敗戦といってもいろいろある。0-2に近いものもあれば0-4に近いものもある。0-1に近いものもあれば0-5に近いものもある。サッカーの結果、スコアには幅がある。内容とスコアを照らし合わせながら実際の差はどれほどなのか、探る必要がある。

 結果がすべてという価値観に支配されるスポーツの世界において、サッカーは異端に属する。だが得点が最も入りにくいという競技の特性を忘れ、つい他の競技と同じ

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4-3-3ほぼ1本で戦う大岩ジャパン。森保監督の言説によれば賢く、したたかではないとなる。はて?

4-3-3ほぼ1本で戦う大岩ジャパン。森保監督の言説によれば賢く、したたかではないとなる。はて?

 100%そうあってはいけない。引いた目が必要だと思いつつも、気がつけば日本贔屓になっているオリンピック。「ニッポン!」と叫ぶことができる団体戦は、個人種目より万人受けしやすいはずで、球技の団体種目にとっては人気を獲得する絶好のチャンスになる。

 なでしこジャパンの選手たちが、結果を残さなければ日本の女子サッカーの将来は危ういと、使命感を露わに臨む気持ちはよく分かる。普段、女子サッカーを見ない人

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ウインガーの有無。パリ五輪サッカーで日本の女子A代表より男子U-23の方が断然、魅力的に映る理由

ウインガーの有無。パリ五輪サッカーで日本の女子A代表より男子U-23の方が断然、魅力的に映る理由

 パリ五輪。パラグアイに大勝した男子サッカーとスペインに逆転負けした女子サッカー。それぞれのサッカーは、同じ国の代表チームとは思えないほど、スタイルにおいて大きな隔たりがあった。

 首尾一貫、高い位置から行こうとする男子に対し、女子はスペインに同点弾を許し1-1で後半を迎えると5バックで後ろを固めた。さらに逆転されると、今度は最終ラインの枚数を5から4に減らし、反撃に出ようとする姿勢を見せた。

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EURO2024。優勝したスペインをヨハン・クライフは天国から絶賛しているに違いない

EURO2024。優勝したスペインをヨハン・クライフは天国から絶賛しているに違いない

 ユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012とスペインはこの4年間で3度、ビッグ大会を制している。ユーロを連覇し、その中間年に行われたW杯でも優勝したチームはスペインしか存在しない。当時のスペインは強いチャンピオンだった。しかし筆者の見立てでは、今回のスペインの方が10数年前のチームより上で、なにより好チーム度で上回った。筆者にはスペイン史上最高のチームに映った。

 従来の中盤サッカーにウイ

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ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

 決勝でスペインがイングランドを2-1で下し、通算4度目の優勝を飾ったユーロ2024。スペインの強さは7戦全勝という数字に現れていた。準々決勝のドイツ戦は延長戦を含む120分を戦った末の勝利だったが、総合的に見て決勝までの6試合を3勝1PK勝ち2分で勝ち上がってきたイングランドを上回っていたことは確かだった。決勝戦の試合内容を踏まえても妥当な結果と言っていいだろう。

 スペインとイングランド。そ

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EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

 ユーロ2024。前回のこの欄で、後ろで守る5バックのチームが増えている。その数3割強。揺り戻し現象が起きていると述べた。しかし、その一方で優れたウィンガーの存在も数多く目に止まる。

 基本的に5バックにはウインガーは存在しない。マイボールに転じたとき5-2-3(3-4-3)になる5バックを除き、サイドアタッカーはウイングバック1人に限られる。

 そのウインガーの活躍がいつになく目立つというこ

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EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

 スイス、ハンガリー、スコットランド、デンマーク、セルビア、ポーランド、チェコ、ジョージア。以上は、ユーロ2024のグループリーグにおいて、5バックになりやすい守備的な3バックをメインに戦ったチームだ。その数8。本大会に出場した全24チームの3分の1に当たる。

 2022年カタールW杯では32チーム中10チーム程度だった。微増である。しかしこれがユーロ2016との比較になると一変する。当時はウェ

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荒くれ者風なのにクレバー。イタリア戦でMOMに輝いたスペインのククレジャにSBのあるべき姿を見た

荒くれ者風なのにクレバー。イタリア戦でMOMに輝いたスペインのククレジャにSBのあるべき姿を見た

 グループステージの3巡目を迎えているユーロ2024。スペイン対イタリア、フランス対オランダなど有力国同士が早くも対戦するなど、目が離せない状態にある。

 決勝戦まで7試合。先は長い。前々回のユーロ2016を制したポルトガルはグループリーグで、ハンガリー、アイスランド、オーストリアという弱者と同居しながら3戦3分、勝ち点3と大苦戦。グループリーグ3位、全体の15番目の成績で決勝トーナメント(ベス

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空前のスケールで行われる2026北中米W杯。難しくなった将来の日本単独開催と問われる森保監督の覚悟

空前のスケールで行われる2026北中米W杯。難しくなった将来の日本単独開催と問われる森保監督の覚悟

 2026年北中米W杯。緯度で見ると北からカナダ、アメリカ、メキシコの順に並ぶ。W杯の長い歴史の中で初めて行われる3ヶ国開催。取材観戦する側にとって大変そうに感じるのはそれぞれの国をまたぐことになる移動だ。

 イメージするのは縦移動。カナダからアメリカを挟んでメキシコに行くのは大変そう。その逆もしかりで、真ん中のアメリカに拠点を構え、必要に応じてメキシコ、カナダに移動することが旅行の常識的なスタ

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オーバーエイジ問題。W杯に続く大会は五輪ではなく本日決勝を迎えるCLだとの認識に立てるか

オーバーエイジ問題。W杯に続く大会は五輪ではなく本日決勝を迎えるCLだとの認識に立てるか

 五輪本大会に臨むU-23日本代表。メダルの可能性はオーバーエイジの顔ぶれ次第できまるといっても過言ではないが、顔ぶれは明らかになっていない。先日のメンバー発表(6月に行われるアメリカ遠征)の会見でも、所属クラブとの交渉役である山本昌邦ナショナルチームダイレクターの口から、前向きな言葉は出てこなかった。

 オーバーエイジとして五輪出場を積極的に希望している選手が、そもそもどれほどいるか、だ。招集

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