杉山茂樹
スポーツライター杉山茂樹が月4回程度発行する有料記事
日本サッカー協会は「ナショナル・フットボール・フィロソフィとしてのJAPAN‘S WAY」と題した指針をホームページに掲載した。 我々のアイデンティティに目を向けることで「弱者の論理から脱却し」、我々の武器を持って世界に打って出ていこうとの発想であり、世界の頂点を目指す道筋を立てていこうとしたのですーーとは、その冒頭部分を抜粋したものだが、このジャパンズ・ウェイで2050年までにW杯優勝を狙うのだという。 弱者の論理から脱却しとあるが、それはつまりの強者の論理になる
世の中が示す善し悪しの基準について、疑問を抱きたくなる瞬間がある。もちろんサッカー界の話だが、東アジアE1選手権が終了したばかりの現在も、その例外ではない。 最終戦で韓国に3-0で勝利し、優勝を飾ったことは嬉しい話ではある。しかし、たかが東アジアE1選手権だ。お互いメンバーは国内組。韓国にはJリーグでプレーするプレーも含まれていたので、正確には非欧州組となるが、それぞれこの中から純然たるA代表に入りそうな選手は数名だ。1.8軍クラス同士の戦いに勝利したことを特段、喜ぶ気
川崎フロンターレ対パリサンジェルマン(PSG)戦の舞台となった国立競技場の、その記者席に着席するや、筆者の脳裏には24時間前に観戦した日本代表対香港のスタンド風景が蘇った。 国立競技場と鹿島スタジアムは、同じ競技が行われる舞台には見えなかった。この日、国立競技場を埋めた観衆は64922人。先月行われたブラジル戦の観衆(63638人)を上回る、新しくなった国立競技場の最多入場者を記録したのに対し、香港戦の鹿島スタジアムを訪れた観衆はわずか4980人。日本代表のホーム戦で、
東アジアE1選手権、最大の見どころは、大会後にある。9月に欧州で行われるとされる国際試合のメンバーに、ここから何人が食い込めるかという点だ。極端に言えば、多ければ多いほど好ましいい。W杯本大会にプラスに作用すると考える。 今回のカタールW杯はこれまでとは異なり欧州シーズンの真っ只中に行われる。日本代表が最後に戦うテストマッチは9月で、大会直前に実施されたスパーリングマッチは今回、行われないという。 W杯アジア最終予選が終了したのは今年3月なので、そこから本大会までの
報道受付ゲートまで徒歩数分。何を隠そう筆者は国立競技場の近隣住民である。一方で、サッカー系のスポーツライターとして世界に存在する無数のスタジアムを訪れてきた。1000には届いていないと思うが、300〜400では収まらない。筆者と比較対象のサンプルを同程度、持ち合わせている人はそう多くいない。というわけで、気がつけば自称スタジアム評論家になっていた。 4年に1度のW杯やその中間年に行われるユーロは、その半分以上が新築かそれ同然に改修されたピカピカのスタジアムで行われる。世
Jリーグと日本代表、訴求力が高いのはどちらと問えば後者だ。日本のサッカー界は、日本代表を中心に回っている。両者の関係は徐々に詰まってきているとはいえ、4年に1度開催されるW杯を中心に動いていることは確かである。 他国よりもその度合いは強い。本場欧州は必ずしもそうではない。チャンピオンズリーグを頂点とするクラブサッカーありきで成立している。欧州は都市国家を中心に発達を遂げてきたが、現代の欧州サッカーには、そうした歴史的な背景をとくと垣間見ることができる。日本にはない独得の
去る土曜日。横浜F・マリノスが柏レイソルに4-0で勝利した試合を横浜国際日産スタジアムで観戦した後、等々力競技場に移動。川崎フロンターレがジュビロ磐田に1-1で引き分ける試合を観戦した。首位横浜FMとそれを勝ち点1の差で追う3位川崎。両者は成績的には競った関係に見える。鹿島アントラーズとともに3強を形成しているように見えるが、どちらのサッカーが魅力的に見えるかと言えば、横浜FMになる。2つのスタジアムを梯子してみて、それは改めて鮮明になった。 川崎にとって不利な点は、比
久保建英が正念場を迎えている。今季途中、マジョルカの監督にハビエル・アギーレが就任したとき、その出場機会は増すと思われた。日本代表監督を半年間、務めた経験があるアギーレに、スペインでよく見かける日本人選手への偏見はないはずだ。久保にとって歓迎すべき監督であるかと思われた。 ところがアギーレ就任以降、久保の先発は8戦中わずか2試合に終わる。ルイス・ガルシア・プラザ前監督時代より出場機会を大きく減らすことになった。元日本代表監督であるアギーレから評価されなかったという事実は
ブラジル代表に0-1。日本は来るカタールW杯で優勝候補の本命に挙げられているFIFAランキング1位の強豪を、PKによる1失点に抑えた。これを善戦と見るか。 スコア的には善戦だが、内容的には振るわなかった。惜しいチャンスはゼロではなかったが、決定的なチャンスはゼロだった。惜しいチャンスにしても、「惜しい度」をABCに分類すると、最低ランクのCが2、3度あったに過ぎない。耐え忍ぶことはできたが、キチンと崩すことができなかった。最少失点差の敗戦に満足したとすれば進歩はない。筆
J1リーグは全34試合中16試合を消化した段階でおよそ20日間の中断に入った。6月2日から6月14日まで4試合、日本代表戦が行われるためだが、このタイミングで、鹿島アントラーズ、川崎フロンターレと入れ替わり首位に躍り出たのが横浜F・マリノスだ。満を持すようにじわりと一歩、前進したという感じだ。 鈴木優磨と上田綺世の2トップとディエゴ・ピトゥカ抜きには語れない鹿島。得点への期待感がレアンドロ・ダミアンに偏りつつある川崎に比べると、横浜FMは顔ぶれが多彩だ。 エース不在
6月にパラグアイ、ガーナ、ブラジル、チリorチュニジアと4試合を戦う森保ジャパン。7月には東アジア選手権(香港、中国、韓国)も控えている。今回のカタールW杯はご承知のように、通常の6月ではなく11月に開幕する。本番までまだ半年ある。 前回、ハリルホジッチ解任を受けて西野朗ジャパンが誕生したのは2018年4月。ロシアW杯本大会の2ヶ月前だった。ハリルホジッチに批判的な声は多数を占めていたが、それが監督交代を望む声に直結していたわけではない。大会直前の交代はリスキーだとの声
日本語は難しさにおいて、世界でも指折りの言語として知られる。音読みと訓読みがあることの厄介さに加え、語彙の多さも習得が難しい要因だとされる。一方、サッカーはデータの類が決定的に少ない感覚的なスポーツだ。指導者に問われているのは伝える力で、高い表現力が不可欠になる。言葉はおのずと重要なウエイトを占めることになる。 サッカーと難解な日本語と相性がいいと考えるのが自然だ。外国人の指導者より日本の指導者の方が、サッカー指導に必要な言葉を潜在的に多く持っている。同義語、類義語に加
チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、レアル・マドリード対マンチェスター・シティは、合計スコア5-5となり、延長にもつれ込んだ。選手交代枠はそれと同時に、最大5人から6人にまで拡大された。 シティのグアルディオラ監督が5人で止めたのに対し、レアル・マドリードのアンチェロッティ監督は6人の枠をすべて使い切った。フィールドプレーヤーとして先発した10人中6人、つまりその半分以上の選手がベンチに下がったことになる。 これは何を意味するか。ご承知の通り交代枠はコロナ禍以前3人
FC東京対ガンバ大阪。昨日(4月29日)国立競技場で初めてJリーグの試合が開催された。天皇杯、ルヴァンカップ、高校選手権など、これまで行われた試合はいずれも日中で、ナイターとして行われるのは初だった。夜の国立競技場がサッカー場として、どんな表情を示すかも関心事の一つだった。 そもそも国立競技場は、東京五輪後、球技場に改装される予定だった。トラックを撤去し、その4コースあたりまで客席を延ばす計画になっていた。それがどういうわけか頓挫した。球技場専用でなくなったことを問題視
マジョルカは先月末、降格の危機にあるチームの立て直しを図るため、ルイス・ガルシア・プラザ監督を解任。後任にバスク系のメキシコ人、ハビエル・アギーレを迎えた。 チームには日本人が期待する久保建英がいる。元日本代表監督が、日本メディアにサービス精神を発揮したとしても不思議はない。現地から送られてくる監督の久保評は確実に増えている。日本のメディアにとっては歓迎すべき話である。久保が、ページビューが見込める訴求力の高い選手であるのに対し、アギーレは日本通だ。八百長への関与を疑わ
ヨーロッパリーグ(EL)準々決勝で、バルセロナを合計スコア4-3で下し、ベスト4入りを決めたアイントラハト・フランクフルト。その3-4-2-1の2シャドーの一角として、鎌田大地はホーム戦、アウェー戦ともスタメン出場を飾った。初戦のホーム戦では後半36分に交代しているが、第2戦のアウェー戦では、フルタイム出場を果たしている。選手交代枠5人制で行われた試合で、アタッカーがフルタイム出場するのは珍しい事例だ。実際、先発した他のアタッカー2人は途中交代でベンチに下がっている。