杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰…

杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰で眺める上から目線を大切に、サッカーらしさ、サッカー的なノリにこだわる。好みは攻撃的サッカー。地域ではポルトガル、バスク、フランス。取材で訪れた国の数は70弱。コーヒー、紅茶、カレーにうるさい。

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攻撃的MFの進化形。中盤天国時代の名残を留める荒木遼太郎の高度なFW的瞬間芸

 U-23アジアカップ準決勝でイラクを下し、パリ五輪出場を決めた日本。様々な要因が絡んでの好結果だろうが、今季のJリーグで調子のいいアタッカーがチームに勢いをもたらしたという印象が強い。  FC町田ゼルビアの平河悠、藤尾颯太、FC東京の松木玖生、荒木遼太郎の4人である。平河は左右のウイング。藤尾はCF兼右ウイング。松木と荒木は4-3-3のインサイドハーフとして上々のプレーを見せた。松木を除く3人は、この五輪チームの中では常連ではなかった。23人の枠内に最後に飛び込んできた、

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    • 五輪サッカーは多機能性を育む場。U-23日本代表で大化けが期待できる選手は誰

       カタールのドーハで開催されているU-23アジアカップ。日本は準々決勝でカタールを下し、8大会連続となるパリ五輪出場まであと1勝に迫った。とは言っても、本来これは絶対に負けられない戦いではない。U-23は文字通りアンダーカテゴリーの大会で、主なる目的は育成である。監督、選手が目の前の試合に全力を傾け、勝利を追求するのは当然としてもA代表の戦いとは似て非なるもの。概念が根本的に異なる。  大袈裟に言えばチームは敗れても選手が育てば問題ない。五輪好きの日本人にはそこまで割り切れ

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      • 10人になっても4-4-1を貫いた日本と、5バックで日本に臨んできた韓国。真の勝者に輝くのは

         中国、UAE、韓国を相手に2勝1敗。U-23アジアカップで日本は準々決勝進出を決めた。3戦ともとりわけ監督采配という点において見どころの多い試合だった。  1-0で迎えた前半17分、西尾隆矢がレッドカードで退場するハプニングが起きた中国戦では、そこから10人でどう戦うかに注目が集まった。選択肢は大きく分けて2つ。それまで通り前からプレスを掛けに行くか。あるいは後方に多く人を配し、ゴール前を固めるか。試合展開は監督の判断1つで大きく変わる。大岩監督は大きな選択を迫られること

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        • いつ退任しても不思議ではない鬼木監督。狭き門を戦う大岩監督。サッカーは監督で決まる

          「日本人監督の中では実績ナンバーワン」とは、2018年ロシアW杯後、田嶋幸三前会長が森保一を代表監督に招聘した理由について述べた台詞だ。  2012年優勝、2013年優勝、2014年8位、2015年優勝、2016年6位。2017年は一転、シーズン中盤まで采配を振るも降格圏を脱せず、そこで解任の憂き目に遭う。これが、森保監督のサンフレッチ広島時代の成績だ。田嶋前会長はこの5シーズン半の実績を高く評価したわけだ。  広島は2017年シーズン、15位で終了。辛うじてJ2降格を免

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          デニス・ベルカンプ、フランチェスコ・トッティ、ラウール……プレッシング全盛時代の10番はかくあるべし

           ゲームメーカーが減少する一方でウイングが台頭。現代サッカーの傾向である。日本サッカー界もいつしか中盤に好素材がひしめき合う中盤天国からウイング天国に一変した。  筆者が最初にその気配を感じたのは、1990年代前半のイタリアだった。日本では中盤天国の時代を迎えようとしていた時である。プレッシングという新しい波が到来していたイタリアでは、それに相応しい布陣だとして中盤フラット型の4-4-2が流行りだすことになった。フォーフォーツーはイングランドの伝統的な布陣だが、イタリア式は

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          技術委員長の権威低下を招いた田嶋会長時代の8年間

           サッカー協会の会長に宮本恒靖氏が就任した。47歳での就任は戦後では最年少とのこと。学年や年齢に基づく年功序列、先輩後輩の関係が色濃く残る日本式スポーツ社会において、若さは障害にならないか。  サッカー協会の業績と何より関係深いものは、W杯における代表チームの成績である。宮本会長には自分より8歳年上の森保一代表監督に、解任を迫る時が訪れるかもしれないのだ。日本的な上下関係のコンセプトが、そこで障害にならないだろうか。監督としての実績で大きく上回るのも森保監督だ。「W杯で最高

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          技術委員長の権威低下を招いた田嶋会長時代の8年間

          久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

           チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイング然と構えるケースだ。  日本のメディアは4-2-3-1の3の両サイドをサイ

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          久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ…

          森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

          「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。  たとえば、つい2〜3シーズン前まで1試合3点を目標に掲げていた川崎フロンターレの鬼木達監督である。昨季あたりから5バ

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          男子サッカーはメジャー競技なのに女子サッカーはマイナー競技。当たり前であってはいけない話が起きる理由

           北朝鮮を2-1で下し、パリ五輪出場を決めたなでしこジャパン。もしこの一戦に敗れ、五輪の出場権を逃していたら、女子サッカーへの関心は低下する。女子サッカー界の今後のためにも絶対に負けられない試合。関係者だけでなく、選手自身がそう口にしていた。  試合後、テレビのインタビュアーに5バックで戦った件に付いて問われた池田太監督は「前線から圧力をかけていきたかったから」と、伝わりにくい答えを返した。触れられたくない点にいきなり話を振られ、動揺を抑えながらそっけなく雑に返したという印

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          いま改めて痛感する伊東純也の希少性。右利きの右ウイング。代わりがいない選手であるゆえん

           アジアカップ期間中にチームを離脱した伊東純也は、次の代表戦(北朝鮮戦)に復帰することができるだろうか。軽々なことは言えないが、日本サッカー界にとって重要な問題であることは確かである。  ベスト8に終わったアジアカップ。その決勝トーナメントで伊東という選択肢があれば、違った結果になっていた可能性は高い。日本に必要不可欠な、代わりのいない貴重な選手。筆者の目に伊東はそう映る。  他の右ウイング候補は現状、堂安律と、森保監督が1トップ下で使いたがる久保建英を含めた2人だ。いず

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          いま改めて痛感する伊東純也の希少性。右利きの右ウイング…

          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その2)

           香川がマンチェスター・ユナイテッドで満足な活躍できなかった理由について、ファーガソンの後任にあたるモイーズ監督との、相性の悪さを口にする人が多い。しかし、香川がポジションをカバーする概念を持ち合わせていないことは入団当初から明白だった。サイドを離れ、気がつけば内寄りで構えるその癖は、高い位置でボールを奪おうとする欧州サッカーに入ると、好ましくないものとして際立って映ったものだ。  テレビ解説者には、逆に「ポジションは試合が始まってしまえば、あってないようなもの」と、反対の

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          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多く…

          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その1)

           アジアカップでベスト8に沈んだ森保ジャパン。森保監督は解任した方がいいと考える。協会によりよい新監督を探す力があるか、そこもまた心配される点だが、それはともかく、監督を変えた方がいいと考える一番の理由はそのイラク戦の采配にある。  南野拓実を左ウイングとして先発させたことだ。  浅野拓磨、久保建英、伊東純也、そして南野。スタメン表に名を連ねたアタッカー4人の顔ぶれを見たとき、筆者はてっきり1トップ=浅野、1トップ下=南野、左=久保、右=伊東の並びだと思った。久保と伊東は

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          想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

           日本がアジアカップのグループリーグで敗れたのは、初めて本大会に出場した1988年以来、36年ぶりの出来事だ。1-2でイラクに敗れた第2戦はまさしく事件に相当した。  4-2で勝利した1戦目のベトナム戦、3-1で勝利した3戦目のインドネシア戦ともに相手の健闘を讃える必要はあるが、日本のデキは3戦連続して低調だった。重要なのはバランスで「アジアは甘くない」と言って、苦戦を外的要因に求めすぎるのはよくない。内に潜む要因により目を凝らしたい。  病状は重い。選手のパフォーマンス

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          出ない杭は打たれない?森保監督解任論が出ない日本サッカーを取り巻く構造

           イラク戦。その1-2の敗戦には、様々な要素が絡んでいることは言うまでもない。目立つのは、あの選手がもう少しこうしていれば失点は防げた等々、敗因を失点シーンに絡んだ選手個々に求めようとする声だ。サッカーの本質から外れた、言うならば今日的な反応だなと思う。  サッカーは流れのスポーツだ。失点の原因を探ろうとしたとき、遡るべきは1プレー前なのか、2プレー前なのか、さらにその前になるのか。糸を慎重にたぐっていく必要がある。  わかりやすいのは1プレー前、2プレー前だ。今日ダイジ

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          日本代表、アジアカップ初戦で再認識したカタールW杯以降の成長点

           アジアカップ初戦、対ベトナム戦の日本は、いいのか悪いのか評価の難しいサッカーをした。多数派はその4-2の勝利を苦戦とする声だ。トルシエ・マジックに原因ありと、現ベトナム監督=元日本代表監督を持ち上げた。しかしベトナムのサッカーは本当によかったのか。  日本とベトナムは、2019年アジアカップ準々決勝で1-0、2022年カタールW杯アジア最終予選では、アウェー戦1-0、ホーム戦1-1と過去3戦、スコア的に僅差の争いをしている。特に2022年3月に対戦した最後の試合は、消化試

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          アジアカップ。グループリーグ突破のオッズは1.01倍。絶対的本命・日本に求められる優勝の飾り方

           昨日、アジアカップが開幕した。しかし本日行われる日本の初戦、対ベトナム戦はテレビ放送がない。3戦目のインドネシア戦、決勝トーナメント1回戦も同様。視聴環境はDAZNに限られる。  ユーロ、コパ・アメリカ等と同格のれっきとした大陸王座決定戦だ。代表チームのイベントとしてはW杯に次ぐ格式を誇る大会である。驚くべき事態である。従来の概念に基づけば事件と言えるかもしれない。しかしベトナム戦、インドネシア戦に格式を抱けるかと言えばノーだ。負けるはずのない試合。引き分けでもセンセーシ

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