杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰…

杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰で眺める上から目線を大切に、サッカーらしさ、サッカー的なノリにこだわる。好みは攻撃的サッカー。地域ではポルトガル、バスク、フランス。取材で訪れた国の数は70弱。コーヒー、紅茶、カレーにうるさい。

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    スポーツライター杉山茂樹が月4回程度発行する有料記事

記事一覧

他人が育てたウイングをウイングバックで使い「超攻撃的」と讃えられる森保監督。他人の褌で相撲を取るな

(写真:岸本勉/PICSPORT)  森保監督が代表監督に就任したのは2018年7月なので、以来6年3ヶ月が経過したことになる。残された期間は2年近くもある。サッカーには様々…

杉山茂樹
6時間前

ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。それぞれの見分け方にはいろいろあるが、筆者が一番だと考えるのは攻守が入れ替わるポイントだ。ボールを奪うポイントであり、奪われる…

杉山茂樹
9日前
3

次期サッカー日本代表監督は日本人では難しい。ハリルホジッチの毒舌が懐かしい理由

 サッカーには選手の優劣を示すデータが他の競技に比べてあまりにも少ない。基準は監督の目。すべてはその主観に委ねられる。クラブの監督は対象の範囲が所属選手に限られ…

100〜
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杉山茂樹
2週間前
5

ピンチに立つ遠藤航。選手の個性と監督の個性。優位に立つのは。サッカー代表監督の任期8年が長すぎる理由

 サッカーは監督で決まる。サッカーの特殊性を語る時、外せないのは監督だ。もちろん他の競技にもあてはまることだが、影響力はサッカーが図抜けている。選手の善し悪しを…

100〜
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杉山茂樹
3週間前
2

三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

 先の中国戦、バーレーン戦に三笘薫、堂安律を両ウイングバックに据えた3-4-2-1で臨んだ森保ジャパン。7-0、5-0の大差勝ちだったことも手伝い、そのサッカーを超…

100〜
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杉山茂樹
3週間前
3

サッカー日本代表。ベストメンバーで臨み2試合で12-0は戦力の浪費か。無駄遣いを嘆く

 中国戦7-0。バーレーン戦5-0。2試合合計すると12-0だ。喜ばしい話に聞こえるが、筆者は勝ちすぎたとみる。それぞれ3-0で十分なのに12点も取ってしまった、と。へ…

100〜
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杉山茂樹
1か月前
4

日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

 チャンピオンズリーグ(CL)に出場できるか否か。日本代表クラスの選手にとって、このことはますます大きな問題になってきた。  8月29日。中国戦(9月5日)、バー…

100〜
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杉山茂樹
1か月前

欧州より30年遅れか。「ポケットをとる」がTV解説者の間でいまごろ流行語になるニッポンの問題

 サッカーを特に現場のスタジアムで観戦していて、ワクワク楽しみになる瞬間はどこか。  「マイナスの折り返しが決まった瞬間だ」と述べたのはヨハン・クライフだ。折り…

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杉山茂樹
1か月前
1

W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

 9月5日の中国戦を皮切りにスタートする2024年W杯アジア最終予選。抽選の結果を受け、メディアは一斉に日本が所属するC組を“死の組”だと報じた。3グループ(A、B…

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杉山茂樹
1か月前
3

パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

 0-3の敗戦といってもいろいろある。0-2に近いものもあれば0-4に近いものもある。0-1に近いものもあれば0-5に近いものもある。サッカーの結果、スコアには幅が…

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杉山茂樹
2か月前
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4-3-3ほぼ1本で戦う大岩ジャパン。森保監督の言説によれば賢く、したたかではないとなる。はて?

 100%そうあってはいけない。引いた目が必要だと思いつつも、気がつけば日本贔屓になっているオリンピック。「ニッポン!」と叫ぶことができる団体戦は、個人種目より万…

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杉山茂樹
2か月前

ウインガーの有無。パリ五輪サッカーで日本の女子A代表より男子U-23の方が断然、魅力的に映る理由

 パリ五輪。パラグアイに大勝した男子サッカーとスペインに逆転負けした女子サッカー。それぞれのサッカーは、同じ国の代表チームとは思えないほど、スタイルにおいて大き…

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杉山茂樹
2か月前

EURO2024。優勝したスペインをヨハン・クライフは天国から絶賛しているに違いない

 ユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012とスペインはこの4年間で3度、ビッグ大会を制している。ユーロを連覇し、その中間年に行われたW杯でも優勝したチームはスペインし…

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杉山茂樹
2か月前
2

ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

 決勝でスペインがイングランドを2-1で下し、通算4度目の優勝を飾ったユーロ2024。スペインの強さは7戦全勝という数字に現れていた。準々決勝のドイツ戦は延長戦を含…

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杉山茂樹
3か月前

EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

 ユーロ2024。前回のこの欄で、後ろで守る5バックのチームが増えている。その数3割強。揺り戻し現象が起きていると述べた。しかし、その一方で優れたウィンガーの存在も…

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杉山茂樹
3か月前

EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

 スイス、ハンガリー、スコットランド、デンマーク、セルビア、ポーランド、チェコ、ジョージア。以上は、ユーロ2024のグループリーグにおいて、5バックになりやすい守備…

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杉山茂樹
3か月前
4
他人が育てたウイングをウイングバックで使い「超攻撃的」と讃えられる森保監督。他人の褌で相撲を取るな

他人が育てたウイングをウイングバックで使い「超攻撃的」と讃えられる森保監督。他人の褌で相撲を取るな

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 森保監督が代表監督に就任したのは2018年7月なので、以来6年3ヶ月が経過したことになる。残された期間は2年近くもある。サッカーには様々な考え方がある中でトータル8年はあまりにも長い。

 欧州組は増えるばかり。選手のレベルは右肩上がりを示すが、国内の盛り上がりはそれに比例しているとは言い難い。外国に比べ、論点、論争、議論がないことが大きい。前回のW杯最終予

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ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。それぞれの見分け方にはいろいろあるが、筆者が一番だと考えるのは攻守が入れ替わるポイントだ。ボールを奪うポイントであり、奪われるポイントだ。好守が高い位置で入れ替わるほど攻撃的。低ければ守備的となる。

 だが、それには相手との戦力差が関係する。互角だとすればとの前提に基づく。対中国、対バーレーンがいい例だ。戦力差が大きいと傾向は見えにくい。守備的サッカーをしても相

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次期サッカー日本代表監督は日本人では難しい。ハリルホジッチの毒舌が懐かしい理由

次期サッカー日本代表監督は日本人では難しい。ハリルホジッチの毒舌が懐かしい理由

 サッカーには選手の優劣を示すデータが他の競技に比べてあまりにも少ない。基準は監督の目。すべてはその主観に委ねられる。クラブの監督は対象の範囲が所属選手に限られるが、代表監督の場合は無限だ。主観をその国の国籍を有するサッカー選手すべてに適用できる。選び放題。悪く言えば切り放題。実力のある選手でも代表監督との相性が悪ければ選ばれない。他に類を見ない強権の持ち主に対し、任期8年はいかにも長い。

 逆

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ピンチに立つ遠藤航。選手の個性と監督の個性。優位に立つのは。サッカー代表監督の任期8年が長すぎる理由

ピンチに立つ遠藤航。選手の個性と監督の個性。優位に立つのは。サッカー代表監督の任期8年が長すぎる理由

 サッカーは監督で決まる。サッカーの特殊性を語る時、外せないのは監督だ。もちろん他の競技にもあてはまることだが、影響力はサッカーが図抜けている。選手の善し悪しを示す客観的なデータがなにより少ない。基準は監督の目だ。布陣も選択肢が何通りもある。この布陣にあって、あの布陣にはないポジションもある。定番がないために選手の出場機会は監督の思惑、相性の善し悪しに委ねられる。

「趣味の問題」だとはイビチャ・

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三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

 先の中国戦、バーレーン戦に三笘薫、堂安律を両ウイングバックに据えた3-4-2-1で臨んだ森保ジャパン。7-0、5-0の大差勝ちだったことも手伝い、そのサッカーを超攻撃的布陣だと評すメディア報道が目に付いた。4-3-3あるいは4-2-3-1で臨む場合、三笘、堂安は左右のウイングを張る。それぞれの所属クラブであるブライトン、フライブルクでも同様だ。彼らは言ってみればFW。アタッカーである。

 一方

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サッカー日本代表。ベストメンバーで臨み2試合で12-0は戦力の浪費か。無駄遣いを嘆く

サッカー日本代表。ベストメンバーで臨み2試合で12-0は戦力の浪費か。無駄遣いを嘆く

 中国戦7-0。バーレーン戦5-0。2試合合計すると12-0だ。喜ばしい話に聞こえるが、筆者は勝ちすぎたとみる。それぞれ3-0で十分なのに12点も取ってしまった、と。へそ曲がりだからではない。日本もそうした考え方をしていかなければならない時代に突入したと考えるからだ。

 2026年北中米W杯アジア3次予選。日本が所属するC組を多くのメディアは“死の組”だ。大変なことになったと騒いだ。しかし出場枠

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日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

日本に問われる、華々しく巨大化したCLと日本代表との向き合い方。選手はアジア予選では上達しない

 チャンピオンズリーグ(CL)に出場できるか否か。日本代表クラスの選手にとって、このことはますます大きな問題になってきた。

 8月29日。中国戦(9月5日)、バーレーン戦(9月10日)に臨む日本代表メンバー発表会見が行われたその夜、日本時間で日付が変わった未明、CL2024-25シーズンのリーグフェーズ抽選会が行われた。

 ご承知のようにCLは今季から大会方式が大改革された。一言でいえばさらに

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欧州より30年遅れか。「ポケットをとる」がTV解説者の間でいまごろ流行語になるニッポンの問題

欧州より30年遅れか。「ポケットをとる」がTV解説者の間でいまごろ流行語になるニッポンの問題

 サッカーを特に現場のスタジアムで観戦していて、ワクワク楽しみになる瞬間はどこか。

 「マイナスの折り返しが決まった瞬間だ」と述べたのはヨハン・クライフだ。折り返す距離がゴールに近ければ近いほど、シューターはボールとマーカーとGKの3つを同時に視界に捉えることができる。その難易度は下がる。まさに決定的チャンスになる。ゴールを逆算した時、このルートこそがいちばんの近道になる。逆にディフェンダーはシ

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W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

W杯予選。死の組、アジアのレベルアップを口実に?引いて構える5バックを森保監督はどれほど採用するか

 9月5日の中国戦を皮切りにスタートする2024年W杯アジア最終予選。抽選の結果を受け、メディアは一斉に日本が所属するC組を“死の組”だと報じた。3グループ(A、B、C)の中で最も厳しそうなグループであることは確かで、たとえば韓国が戦うB組と比較すれば一目瞭然だ。無風区。韓国は張り合いがないくらい緩い組に振り分けられた。

 しかし今回のアジア枠は8.5だ。各組で3位、4位になった計6チームにも、

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パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

パリオリンピック。スペイン優勝でいっそう露わになった日本サッカーの方向性なき強化策

 0-3の敗戦といってもいろいろある。0-2に近いものもあれば0-4に近いものもある。0-1に近いものもあれば0-5に近いものもある。サッカーの結果、スコアには幅がある。内容とスコアを照らし合わせながら実際の差はどれほどなのか、探る必要がある。

 結果がすべてという価値観に支配されるスポーツの世界において、サッカーは異端に属する。だが得点が最も入りにくいという競技の特性を忘れ、つい他の競技と同じ

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4-3-3ほぼ1本で戦う大岩ジャパン。森保監督の言説によれば賢く、したたかではないとなる。はて?

4-3-3ほぼ1本で戦う大岩ジャパン。森保監督の言説によれば賢く、したたかではないとなる。はて?

 100%そうあってはいけない。引いた目が必要だと思いつつも、気がつけば日本贔屓になっているオリンピック。「ニッポン!」と叫ぶことができる団体戦は、個人種目より万人受けしやすいはずで、球技の団体種目にとっては人気を獲得する絶好のチャンスになる。

 なでしこジャパンの選手たちが、結果を残さなければ日本の女子サッカーの将来は危ういと、使命感を露わに臨む気持ちはよく分かる。普段、女子サッカーを見ない人

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ウインガーの有無。パリ五輪サッカーで日本の女子A代表より男子U-23の方が断然、魅力的に映る理由

ウインガーの有無。パリ五輪サッカーで日本の女子A代表より男子U-23の方が断然、魅力的に映る理由

 パリ五輪。パラグアイに大勝した男子サッカーとスペインに逆転負けした女子サッカー。それぞれのサッカーは、同じ国の代表チームとは思えないほど、スタイルにおいて大きな隔たりがあった。

 首尾一貫、高い位置から行こうとする男子に対し、女子はスペインに同点弾を許し1-1で後半を迎えると5バックで後ろを固めた。さらに逆転されると、今度は最終ラインの枚数を5から4に減らし、反撃に出ようとする姿勢を見せた。

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EURO2024。優勝したスペインをヨハン・クライフは天国から絶賛しているに違いない

EURO2024。優勝したスペインをヨハン・クライフは天国から絶賛しているに違いない

 ユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012とスペインはこの4年間で3度、ビッグ大会を制している。ユーロを連覇し、その中間年に行われたW杯でも優勝したチームはスペインしか存在しない。当時のスペインは強いチャンピオンだった。しかし筆者の見立てでは、今回のスペインの方が10数年前のチームより上で、なにより好チーム度で上回った。筆者にはスペイン史上最高のチームに映った。

 従来の中盤サッカーにウイ

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ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

ユーロ2024決勝。スペインに敗れたイングランドを見て想起したのは10数年前のスペインという皮肉

 決勝でスペインがイングランドを2-1で下し、通算4度目の優勝を飾ったユーロ2024。スペインの強さは7戦全勝という数字に現れていた。準々決勝のドイツ戦は延長戦を含む120分を戦った末の勝利だったが、総合的に見て決勝までの6試合を3勝1PK勝ち2分で勝ち上がってきたイングランドを上回っていたことは確かだった。決勝戦の試合内容を踏まえても妥当な結果と言っていいだろう。

 スペインとイングランド。そ

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EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

 ユーロ2024。前回のこの欄で、後ろで守る5バックのチームが増えている。その数3割強。揺り戻し現象が起きていると述べた。しかし、その一方で優れたウィンガーの存在も数多く目に止まる。

 基本的に5バックにはウインガーは存在しない。マイボールに転じたとき5-2-3(3-4-3)になる5バックを除き、サイドアタッカーはウイングバック1人に限られる。

 そのウインガーの活躍がいつになく目立つというこ

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EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

 スイス、ハンガリー、スコットランド、デンマーク、セルビア、ポーランド、チェコ、ジョージア。以上は、ユーロ2024のグループリーグにおいて、5バックになりやすい守備的な3バックをメインに戦ったチームだ。その数8。本大会に出場した全24チームの3分の1に当たる。

 2022年カタールW杯では32チーム中10チーム程度だった。微増である。しかしこれがユーロ2016との比較になると一変する。当時はウェ

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