パートナーなのは、あなただからだよ

パートナーの話をしようと思う。

私は複数愛者だ。
理由は単純明快で複数人に恋愛感情を持つからだ。
振り返ってみればそれは中学くらいから心当たりがある。
ただ、この感情を受け入れて生きていこうと思えるようになったのは、なんだか都合のいい話に聞こえるかもしれないし矛盾しているように感じるかもしれないけど、今のパートナーのことが大切で大切で仕方ないからだ。


付き合って丸5年。
今でも毎日のように大切な存在だと思う。それは、付き合う前に何度も話し合いをした経験があるからだと思っている。



私とパートナーはある東北の県で知り合った。
パートナーがまだ大学院生のころ、私が仕事で行った先に彼はいた。
綺麗な肌にニコニコとしている姿が可愛く、話しているなかで垣間見える奥手なところも印象的だった。簡単に言えば一目惚れだ。
仕事でもう一度会うことがあり完全に気持ちが持っていかれていたので、着々とアピールを続けていた。

ある夜、電話をすることになった。
そこでは色々なしょうもない話をしたあと、人と付き合うということに話が及んだ。
彼はいう。
「僕はネガティブなんだけど、ずっと一緒にいるとか、そういうことは言えないんだよね。だから付き合う時にずっと一緒にいようとか言われても『うーん』って思っちゃう」
私は反論する。
「気持ちはわかる。だけど今、『ずっと一緒にいたい』と思っているなら、そう表現してもいいんじゃないの?」
二人して「そっか」と腑に落ちた感覚があった。

単純な話だが、彼と話していて、こういうお互いに話し合って納得する、現状の最適解を作り出すということが多くあった。

その後も何度も電話をした。

遠距離で付き合っていくならどうしたらいいのか。
将来のことはどう考えているのか。
子供ができない未来とは。

私たちはルールを決め、互いの希望を確認していった。
毎日どんなくだらないことでもいいけどLINEをすること。
週1回は電話をすること。
月に2回は会うこと。
遠距離だった僕らはそんなルールで出発した。


ルールの変更もあった。
電話はそこまでしなくてもいいよねとか、転勤で遠距離の距離が伸びたから会うのは月に一回だねとか。
そうやって一緒に話し合いながら心地いい関係を探り続けた。


そして新型コロナウイルスの感染拡大。
お互いのルールを守れなくなって、会えなくなった。
寂しかったけど、そこでなんだか肝が座った気がした。今の自分は、この人がいないとダメだと毎日思っているなぁと。そしてもうこの関係が盤石で、こんなに大好きなんだから、もっと自分らしく生きていきたいと。

パートナーと電話をした。
ポリアモリーと呼ばれる関係性を作りたいと。
お互いが理解した上で、恋愛や性愛関係に及ぶかもしれない人と出会ってみたいということ。
パートナーは難色を示した。ただ、私も限界だった。恋愛や性愛だけではなく、友情となる人との出会いも無くなってしまっているかもしれないことが。パートナーが大好きで大切だからこそ、彼を重荷に感じたり、一般常識に絡め取られることなく生きたいと思っていた。

パートナーとは別れることも話した。
だけどもう別れられないし、別れてももはや関係が変わらない、定期的に会うよねという結論になった。
そして、何度も何度も話して、未知なる自分達の関係を作ろうということになった。パートナーもやってみるかと渋々動き出してくれた。

私もパートナーも恋愛になるかもしれない人と知り合った。
これまでにない経験を互いにして、ヒリヒリしたり、お互いに思いを馳せたりした。その上でまた話し合った。

そこでできたルールが、彼は誰かと会ったことを可能な範囲で私に言うこと。私はあまりヤキモチを妬かず、どちらかというと相手の楽しかったことをどんどん知りたいタイプ。だからなるべく報告してねとした。

彼は、私が誰と会ったのかを報告はしないでいいよ、特に聞きたくないよということになった。聞いてもいい思いになることはないからだという。
そのルールは仮のようなものだけど、僕たちは今日までそんな感じで何やかんやきている。そんな関係を保ったまま同棲もスタートした。



私はそのおかげで友達、いや親友ができた。
毎日の鬱憤も、大好きなアーティストのことも、将来の不安も。いろいろなことを話せる親友たちだ。
そしてパートナーへの想いも強くなったと思う。全部をパートナーに求めるのではなく、パートナーの大好きなところが他の人と比較したりすることでより輝いて見えるようになった。
新しい恋人はできていないが、最近は友達が増えたことでなんだか自分のその複数愛的なキャパが満たされているとも思えてきている。


ここまで読んでも納得出来ない人は多くいるだろう。
だけど僕らはそうやって毎日を一緒に作り上げ、同性婚にさえも疑問を呈して(別姓を選べたり個人保障が進んだ方がいいのではないかという立場)、男性同士が住める賃貸を必死で探して、会社にカミングアウトして、共通の友達とも遊びながら関係性を作ってきた。
その姿を否定されても、僕らは手を取り合いながらずっと歩いて行きたいと、今、思っている。

私は六月から仕事の関係で、半年間だけだがパートナーとまた遠距離生活になる。
でもその距離は僕らにとって、いい方向にしか向かないと確信めいたものがある。
僕たちは話し合いをやめないし、最適解を必ず作る。
だってそんなあなたが、ぼくたちが大好きだからね。

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