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優しさは弱さではない
ZOOMでプレゼンをしていると、画面越しに相手の顔が曇っていくのが見えて嫌な汗を掻く。自分の口調が自然と早口になり、声が少し上擦っているのに気付いて情けない気持ちになる。対面で仕事するのが当たり前だったときも同じようなことはあったけど、オンラインでその頻度が上がった気がする。
相手の顔色が、気になり過ぎてしまう。
ちょっとした反応で、期待を裏切っているような気がして、お前じゃダメだと言われているような気がして。プロジェクトがうまくいくかではなく、それに左右されてしまう。うまくいっていないと感じると、もう辞めてしまおうかという気持ちで覆われる。声がでかくて一貫性のある人が勝つ会社、業界ということもあって、自分のダメな部分が際立つ。もっと、相手の反応を無視してでも、自分のペースに持っていく強さがないといけない。事実、相手に喋らせる隙を作らずに意見を捲し立てる人が、うまくいっているようにも見える。
それが正解だとすると、僕は弱い。
相手の反応や立場を気にして、喉元まで出かけた言葉を呑み込む。それではいけない。
「顔色ばっか伺ってるよね。
優しいのかもしれないけど、弱さの裏返しだよね」
と、随分前にどっかの誰かに言われたことを、ずっと覚えていて、ことある度に思い出す。
優しさは、弱さの裏返し。
優しい、という長所が足枷になってる事実は、気持ちが沈む。
けれど、最近はその言葉を振り払って、グッと堪えて考え直す。
ここで終わってはいけない。
本当にそうだろうか?
歳をそれなりに取ってきたおかげで、僕は違うと思えてきた。
相手の反応を気にし過ぎる分、他の人が気付いていないことに気付くこともある。
相手の顔色を見る分、自分が気付かなくなった懸念に気付く。
人の目を気にしながら話す人は、相手を取り入れようとする覚悟がある。
自分以外の意見を締め出そうとせずに、相手と向き合う強さがある。
結局、どうやって見ようとするか、だ。
一発屋と言われる芸人やアーティストは、多く人の人生では出すことができない、渾身の一撃を出すことができたスーパーマンだ。
汚くてくたびれたスニーカーは、人がたくさん前に進むことができた証拠だ。
年季の入った建物の錆は、歴史の積み重なりだ。
短所は長所であって。
誰かにとって悪いと思うことは、他の誰かが良いと思うことだ。
僕たちの目の前にある日常は、いつでも表裏一体だ。
だから、どうか自分を少しだけでも良いから許してあげて欲しい。
大丈夫。
価値観も、世の中も、ちょっとしたきっかけで変わる。
そうすれば、あの人のことも許すことができる。
優しさは弱さではない。
優しさは、あなたが強い証だ。
やさしさ / チャットモンチー
<太・プロフィール> Twitterアカウント:@YFTheater
▽東京生まれ東京育ち。
▽小学校から高校まで公立育ち、サッカーをしながら平凡に過ごす。
▽文学好きの両親の影響で小説を読み漁り、大学時代はライブハウスや映画館で多くの時間を過ごす。
▽新卒で地方勤務、ベンチャー企業への転職失敗を経て、今は広告制作会社勤務。
▽週末に横浜F・マリノスの試合を観に行くことが生きがい。
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