カットされたパイナップル
山本文緒さんの「パイナップルの彼方」という作品を読んだ。
辛いことから逃げ出したくて、誰も自分を知らない遥か遠い地に逃げては。と考えてしまう主人公、深文。
深文と同じこと、誰しも考えたことがあるんじゃないかな。
人間関係が上手くいかなかった時、人生が楽しいと思えない時。ここじゃないどこか、誰も私を知らない場所で全て1からやり直してしまいたいと思う。
文緒さんのあとがき、すごく共感出来ることが多かった。
逃げてしまうことを妄想することで今の私を保てている。逃げれる、と思えばもう少し頑張れた。
私は、「あと数年後には田舎に引っ越すのだ。」と、謎の確信を持っている。
家族や友人にはもっともらしく、自然に囲まれて静かに暮らしたい、だなんて言っているのだけれど。
これこそまさに、私が現実を受け止めるために作り出した、"逃げる"妄想なのかもしれない。
「パイナップルの彼方」を読むまでは、その自分の考え、決定をかっこいいとすら思っていたのに。
それが妄想である、所詮現実逃避するための妄想に過ぎず、実現することはない。と言われてしまったようで、恥ずかしさとショックがあった。
私が悩んで考え抜いた、「かっこよくてすごい考え」が、パイナップルのようにバラバラにカットされてしまった。一見立派に見えるけれど、いざカットされるとパイナップルはあまりかっこよくも立派でもなかった。
まだまだだな。
パイナップルの酸っぱさがちょうどよく染みた。
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