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【狩猟採集民族最新データ4選】人間関係大事、農業への移行の真相、ハイリスクハイリターン戦略、肉食と人口密度

今回は「狩猟採集民族」に関する最新の研究を4つほどまとめておこうと思います。

ご存じの通り、狩猟採集民族は最近ホットな研究テーマの一つで、単に私たちの先祖の生活を知れるだけでなく、食事から人間関係まで私たちが現代を生き抜くためのヒントを教えてくれる貴重なデータでもあるんですよね。

それでは早速見ていきましょうー!


1. 人類の急速な進化を促進したのはやっぱり”アレ”

人類が今まで複雑な文化を急速に発展させてきたというのはよく聞く話ですが、新たに「狩猟採集民族の文化の発展を後押ししてきたのはやはり人間関係じゃない?」みたいな研究(R)が出ておりました。

これはScience Advances誌に掲載されたチューリッヒ大学などの研究で、まずはフィリピンの異なるキャンプに住むアグタ族の人たちにトラッカーをつけてもらい1か月にわたってメンバー間の交流を調べております。そのうえで、コンピュータモデルによって植物由来の薬を創る文化的な創造をシミュレートしたところ、以下のようなことがわかりました。

  • アグタの人たちは自分の所属するグループのメンバーと最も頻繁に交流していたが、ほぼ毎日別のグループにも訪れていた

  • 出会うたびに薬用植物に関する知識を共有してその知識を組み合わせることによってより効果的な治療法を開発するモデルでは、医薬品が完成するまでに平均250回(森林キャンプ)~500回(海岸キャンプ)の社会的相互作用が必要だった

  • 一方すべての個人が互いにつながっていて、新しい情報があれば即時にネットワークの全メンバーに情報が伝達されるネットワークを用いて同じシナリオをシミュレートしたところ、新薬の開発には500~700回ほどの情報伝達が必要になった

ということで、一気に情報が全員に伝わってしまうと進歩も一歩ずつになるのに対して、実際には新しい発見が小さいクラスター内で並行して伝達されることによって結果的に進歩も早くなるみたい。

研究チーム曰く、

「キャンプ間の訪問」は狩猟採集民のソーシャルメディアであるといっていいだろう。私たちは、何か新しい問題解決法が必要な時、ネットで調べ、複数の情報源を使って様々な人から情報を得る。狩猟採集民も全く同じようにソーシャルネットワークを利用しているのだ。

今回の発見は、このような小規模で相互に結びついた集団という社会構造が、人類がアフリカ大陸に進出、脱出する過程で人類を特徴づける一連の文化・技術革命を促進した可能性を示唆している。

とのこと。個人の知識を他者と共有し、組み合わせることで革命的な解決策を生み出すことができ、このユニークな能力こそが人類とその他の動物を区別しているのだ、と。

現代を生きる我々にも高いクリエイティビティが要求されますけど、「普段は小さな集団に身を置きながらも外部のコミュニティとの定期的な情報交換も怠るべからず」ってのは30万年前のご先祖様たちと通じるところがありますよねぇ。


2. 農業への移行は本当に人類の進歩の象徴といえるのか?

続いてもフィリピンのアグタを対象にした研究で、こちらは「狩猟採集から農耕への移行が時間の使い方にどんな違いをもたらすのか?」って問題を調べてくれております(R)。一般に人類が農業を始めたことは不安定な生活から抜け出すことができた大きな進歩の一つとしてとらえられがちですけど、本当にそうなのか?ってとこですね。

ここでは10のコミュニティに住むアグタの359人を2年間にわたって調べておりまして、おおよその結論をまとめておくとこんな感じになります。

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