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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#読書

短編小説『月明かりに照らし出される幻想』

「そろそろ閉店の時間になります」 追い出されるように二人はカフェの外に出た。 「随分、遅…

大河内健志
7か月前
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短編小説『美しさの代償』

カーテンの開く音。 部屋中に満ち溢れた光で目を覚ます。 手を伸ばした。 美月はいない。 …

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短編小説『朝日の中で蘇るゆうべの記憶』

となりで眠っている貴島さんの心地よい寝息。 カーテンの隙間から、こぼれ出た朝日に照らしだ…

30

短編小説『思い出を失ってしまう悲しみ』

お父さんを失った悲しみよりも、お父さんとの思い出を失った悲しみの方が大きい。 お父さんと…

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短編小説『お月様だけが知っている』

大阪でゲリラ豪雨が発生したニュースがテレビで流れていた。 落雷で電車が止まり混雑する駅の…

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短編小説『美しさが理性を封じ込める』

激しくなった雨に耐え切れなくなり、私たちはエデンの園を追われるアダムとイブのように、あの…

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短編小説『月明かりに照らされて』

カーテンの隙間から、月明かりが差している。 その殺菌灯のような薄紫の淡い光は、美月の右の頬を掠め、肩を超えバスローブの合わせ目からのぞく豊かな山裾に達していた。 それは白いバスローブと、それに劣らないほどに白い美月の肌を、薄いマリンブルーに染め上げていた。 美月が傍らで心地よい寝息を立てながら眠っている。 妻のバスローブを着て、私のベッドにいる。 私は、もう一度彼女の豊かで形の良い乳房を見たいと思った。 月明かりにそれを晒してみれば、どれだけ美しい事だろう。 そ

短編小説『荒れ狂う大地の中のオンナとオトコ』

「何と呼んだら良いですか?貴島さん」 オトーサンが突然消えた。 ワタシは抱きしめられた。…

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短編小説『君の若さに嫉妬する』

私がその騒いでいるグループの方を見ていて、気にしているのに気付いたのか、マスターが近くに…

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短編小説『年の離れたオトモダチ』

急いで返信した。 香田さんからもらった社内メールのように、用件の後に大きな空白を開けて、…

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短編小説『オトーサンは憂鬱になって、あの病気にかかってしまった』

香田美月を別に避けているのではないけれど、会合があったりして、いつもの電車に乗らなかった…

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短編小説『やっとオトーサンと呼べた』

最後の最後にやっと「オトーサン」と呼べた。 ずっと、言いたかった。 よかった。 言えた。…

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短編小説『さまようオヤジ』

後ろを振り返った。 香田さんはまだ別れた場所にいた。 私が振り向いたのが分かったのか、百…

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短編小説『あなたを想いながら、ひとりお酒を飲んでいます』

単身赴任で大阪に行っている夫の裕司の分まで夕食を作った。 テーブルに差し向かいでそれを並べた。 この時期、裕司がいつも飲んでいる冷酒も買ってきて、並べた。いつもの食卓、いつもの食器。 裕司の大好きなさばの煮付け。 でも、本人だけがいない。 サティのジムノペティがずっと頭の中で流れ続けている。 ずっと裕司のことを考えている。 病院で言われたこと。ガンかもしれないこと。手術もできない場所にあること。・・・ ジムノペティの旋律に合わせて、繰り返し頭の中でまわって行く