マガジンのカバー画像

オオキユーヒ三題噺まとめマガジン

200
三題噺をまとめました
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

117.三題噺「ラスボス、シャンパンファイト、フランケンシュタイン」

117.三題噺「ラスボス、シャンパンファイト、フランケンシュタイン」

 昼休み、僕が購買へお昼ご飯を買いに行っていると、先輩と出会った。

「旅に出た後輩くんとエンカウントした」

 BGMを口ずさみながら、先輩は抑揚のない機械音声の声真似をした。

 今日はRPGごっこをするみたいだ。

「どんな設定なんですか?」

「後輩くんは魔王軍に所属するけど人類と仲良くしたいフランケンシュタインで、人の心を学ぶために旅に出たの。今は檜の棒を装備しているよ」

 かなり変な

もっとみる
116.三題噺 「魔法使い、日の目を見る、マスタード」

116.三題噺 「魔法使い、日の目を見る、マスタード」

 休み時間、先輩が教室にやってきた。

「後輩くんは魔法使いになれたら何する?」

「いつもいつも唐突ですね」

 先輩は僕の前の席に跨って座っていて、背もたれに寄りかかっている。

 絶妙に見えそうで見えないという奇跡みたいなことが起こっている。すごい。
 これはもはや魔法じゃないだろうか。

「先輩は何かしたいことあるんですか?」

「私? 私はね〜」

 先輩は僕のペンケースからマスタードイ

もっとみる

115.三題噺「天国と地獄、万有引力、非常識」

 今日は夏休み明けの登校日。

 始業式が終わった教室で、僕は隣の席に座る同クラさんを見た。

「どうしたの? さっきからずっと祈ってるけど……」

 同クラさんは僕を見て、不安げに半袖で露わになっている二の腕を触った。

「この後、席替えでしょ? いい席になりますようにって神様にお願いしてるの」

 同クラさんはかなり必死だ。

「いい席って、後ろの席とか窓際のこと?」

「それもあるけど……。

もっとみる

114.三題噺「河原、超越、ライフライン」

 僕は後輩ちゃんに河原に呼び出された。

 メッセージには「今こそ決着のとき」って書かれてたけど、なんの用事だろう。

「先輩、決闘をしましょう」

「え? というか、どうして制服なの? 学校は明日からなのに」

「あっ……これは、正装、だからですよ?」

 後輩ちゃんは吃った。

「もしかして、今日学校だと間違えてた?」

「そ、そんなことないですよ? 登校しちゃって誰もいないなぁ、なんでだろう

もっとみる
113.三題噺「一瞬、エネルギー切れ、アメリカンドッグ」

113.三題噺「一瞬、エネルギー切れ、アメリカンドッグ」

 朝、先輩から通話が来た。

「後輩くん! 海行こ! 海!」

 僕は拒否するつもりもなかったため、先輩の突拍子もない誘いをOKした。

 海の家でお昼を済ませてから、砂でお城を作ったり、海で水をかけあったりした。

 先輩の水着姿は眩しくて未だ直視できない。

「もう夏休み終わりなんだからやり残したことがないように今日は遊び尽くすぞ〜!」

「あとは何をするんですか?」

 正直、僕はもうクタク

もっとみる
112.三題噺「粋な計らい、塩分、敬語」

112.三題噺「粋な計らい、塩分、敬語」

 生徒会長の俺は、先生の家に来ていた。

 食卓には手料理が並べられているが、先生の前にはあるものが無かった。

「今日はお酒飲まないんすね」

「休肝日なんだ。酒飲みとして健康に気を遣っているんだよ。とはいえ、いつもの癖で塩分は摂ってしまうのだがな」

「自己管理をしっかりしてるん……ですね」

「どうして言い直したんだ?」

「失礼かなって。俺、先生に対して不器用な敬語しか使えないじゃないっす

もっとみる
111.三題噺「手相占い、マヨネーズ、ムーブメント」

111.三題噺「手相占い、マヨネーズ、ムーブメント」

「あれ? 同クラさん?」

「えっ……? あっ、こんにちは」

 歩いていたら、偶然同クラさんを見つけた。

 思いがけない出会いだったからか動揺している。
 これは、1人でいたい感じかな?

 僕が帰ろうとすると、同クラさんに袖を遠慮がちに掴まれた。

「もう少し一緒にいたいんだけど……ダメ、かな?」

「いいよ。暇だったし」

「勇気出してよかった……」

 ファミレスで話をすることになって、

もっとみる
110.三題噺「ラップ、アドレナリン、金儲け」

110.三題噺「ラップ、アドレナリン、金儲け」

 僕は先輩の家にやって来た。
 今日は手料理を振る舞ってくれるらしい。

「いらっしゃい。後輩くん!」

 インターホンを鳴らすと、エプロンをつけた先輩が出迎えてくれた。

「お、おじゃまします……」

「あれ? 後輩くんガチガチだけど緊張してる? 看病してくれた時に来たのに」

「あの時は、必死で……。今は緊張でアドレナリン分泌されてます」

「あははっ。私と後輩くんの仲なんだから気楽でいいのに

もっとみる

109.三題噺「予習、におい、ボディチェック」

「お兄ちゃん。行ってくるね」

 私は、明日先輩の家に行くから緊張でガチガチのお兄ちゃんに声をかけて家を出た。

 両思いなんだから付き合っちゃえばいいのにと思うけど、面白いから放っておいてる。

「〜♪」

 鼻歌を歌いながら私はナル君の家に向かう。

 ナル君のお姉さんが私を家に上げてくれた。
 この人もお兄ちゃんのことが好きだ。

 いったいお兄ちゃんは何人の女の子に好かれてるんだろう。
 

もっとみる
108.三題噺「ポートレート、あるある、ハーフ」

108.三題噺「ポートレート、あるある、ハーフ」

 僕は後輩ちゃんと近くの公園に来ていた。

 後輩ちゃんは髪の毛をハーフアップのお団子にしていて、ゆるふわな雰囲気だ。

「花火大会行けなかったので、先輩には今日一日私に付き合ってもらいますよ」

「わかった。何するの?」

「写真撮りながら先輩とのんびり散歩したいなと思って……。いいですか?」

「いいよ」

 歩きながら、後輩ちゃんと他愛もない話をする。

 後輩ちゃんの首にはミラーレス一眼が

もっとみる
107.三題噺「盆踊り、独白、困り顔」

107.三題噺「盆踊り、独白、困り顔」

 今日は花火大会。

「着付けてもらってたら遅くなっちゃった」

 僕は浴衣を着て来た先輩に見惚れた。

「どうしたの? 早く行こ?」

「そ、そうですね」

 歩きながら先輩と話す。

「もうすぐ夏休みが終わっちゃうね」

「楽しかったですね」

「うん! 最高の夏だったよ」

 今日も楽しむぞ〜、と先輩はウキウキだ。

「あ! いいの発見!」

 先輩は小走りで屋台のひとつに近づく。

「金魚

もっとみる
106.三題噺「秒殺、文学、病院通い」

106.三題噺「秒殺、文学、病院通い」

 僕は目的もわからずに同クラさんに呼ばれて待ち合わせ場所に来た。

 リボンのついたブラウスにスカート、ベレー帽というコーデは大人しめの雰囲気の同クラさんに似合っている。

 メガネもかけていて、髪をおさげにしているから文学少女みが増していた。

「今日はどこ行くの?」

「……カラオケ」

 同クラさんはお腹の前で指をいじいじして恥じらいながら言った。

 カラオケだと密室に2人きりになっちゃう

もっとみる
105.三題噺「ピストル、磨りガラス、コンセント」

105.三題噺「ピストル、磨りガラス、コンセント」

 僕は先輩と一緒にカフェで勉強していた。

 隣に座る先輩はシャーペンのノックカバーを唇に当て、さっきから難しい顔をしている。

「ぬわぁ〜」

 突然、可愛いうめき声が右耳に届いた。

 見てみると先輩は背もたれに寄りかかって天井を仰いでいる。

「どうしたんですか?」

「勉強飽きた」

「まだ10分しか経ってないですよ」

「休憩しよ! 休憩!」

「……まぁ、いいですよ」

 甘いものでも

もっとみる
104.三題噺「まつぼっくり、ブランド品、土下座」

104.三題噺「まつぼっくり、ブランド品、土下座」

 生徒会長をしている俺は、先生の家にお呼ばれしていた。

 前回も来たことはあるが、いまだに緊張して体はガチガチだ。

 部屋番号を押してオートロックを解除して貰おうとしたら、随分声が聞こえるのが遅い。

「先生?」

「……あぁ、すまん……。呼んだ立場なのに寝坊してしまった」

 先生はどうやら寝起きのようだ。

「いくらでも待ちますよ」

「いや、外で待たせるのも悪いから入ってくれ。鍵は開けて

もっとみる