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113.三題噺「一瞬、エネルギー切れ、アメリカンドッグ」

 朝、先輩から通話が来た。

「後輩くん! 海行こ! 海!」

 僕は拒否するつもりもなかったため、先輩の突拍子もない誘いをOKした。

 海の家でお昼を済ませてから、砂でお城を作ったり、海で水をかけあったりした。

 先輩の水着姿は眩しくて未だ直視できない。

「もう夏休み終わりなんだからやり残したことがないように今日は遊び尽くすぞ〜!」

「あとは何をするんですか?」

 正直、僕はもうクタクタだ。

「夏といえば? BBQだ〜!」

 先輩は高らかに宣言した。

 BBQ場に着くと、明らかに2人分の量じゃない食材が用意されていた。

 まさか2人だけで食べるのかと思っていたら、先輩はスマホで誰かに連絡し始めた。

 数十分後。

「2人きりで海で遊ぶなんてずるいです!」

 先輩は同クラさんと後輩ちゃんになぜか怒られていて謝っていた。

 マカロンくんと先生も遅れてやってきて、みんなで堪能した。

「最高に夏って感じで楽しかったです」

「あはは。なにその感想〜」

 先輩と僕が後片付けを引き受け、今は夕暮れの下で2人きりだ。

 夏休みは一瞬の間に過ぎ去ったように錯覚してしまうほど、充実していた。

「ねえ、後輩くん」

「なんですか?」

 先輩はゆっくり深呼吸して、唇を開けた。

「……やっぱり、なんでもない」

「……?」

「アメリカンドッグ食べたいなぁ〜」

「まだ食べるんですか……」

 僕はエネルギー切れで、お腹もパンパンだ。

 片付けが終わった後、先輩と並んで歩いて、コンビニでアメリカンドッグを買った。

「後輩くんも食べるんじゃん」

「見てたら食べたくなっちゃって」

 あはは。おかしい、と先輩は笑った。

「学校、楽しみだね。文化祭もあるし」

「僕は生徒会選挙もあるので忙しいかも」

「おぉ! ついに生徒会長の座を奪うときが来たんだね」

「奪うわけじゃないですよ」

 でも、順当に行けば、おそらく僕が生徒会長になるのだろう。今から気が重い。

「じゃあね。新生徒会長くんっ」

「家の近くまで送りますよ?」

 先輩はううん、と首を横に振った。

「もう十分、後輩くんと一緒にいれたから。……それに、これ以上独り占めするのは同クラちゃんと後輩ちゃんに悪いからね」

 後半は聞き取れなかったけど、先輩が言うなら問題ないのだろう。

「夜道、気をつけてくださいね」

「ありがと!」

 僕は手を振って先輩を見送った。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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