見出し画像

106.三題噺「秒殺、文学、病院通い」

 僕は目的もわからずに同クラさんに呼ばれて待ち合わせ場所に来た。

 リボンのついたブラウスにスカート、ベレー帽というコーデは大人しめの雰囲気の同クラさんに似合っている。

 メガネもかけていて、髪をおさげにしているから文学少女みが増していた。

「今日はどこ行くの?」

「……カラオケ」

 同クラさんはお腹の前で指をいじいじして恥じらいながら言った。

 カラオケだと密室に2人きりになっちゃうんだけど、同クラさんは気にしないのかな?

 でも、こんなことで動揺するのも変だから僕は平静を装って了承した。

「い、行こう?」

 同クラさんは突然、僕の手を遠慮がちに握ってきて引っ張った。

 頼もしいというより恥ずかしい。

 しかも、いつの間にか恋人繋ぎに移行されている。

 指が絡んで手のひらが密着して、体温が直接伝わってくるけど同クラさんは平気そう……じゃなかった。

 視線を合わせないし、耳まで真っ赤だ。
 僕もたぶんお揃いだ。

 さっそくカラオケに来て受付を済ませる。

「土曜だから混んでるみたい。大人数のパーティールームでも大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

 狭い密室よりは精神に良いだろうし。

 部屋に入ると微かに隣の部屋からの歌声が聞こえてきた。

 同クラさんはリモコンも触らずにキョロキョロしている。
 スマホで曲を予約する様子でもない。

「同クラさんってよくカラオケ来るの?」

「一回も来たことないよ」

「歌うの?」

「歌わない。恥ずかしいから……」

「じゃあ、なんでカラオケ?」

「一回くらいは来てみたかったの」

「そ、そっか……」

 そう言われてしまうと何も言えない。

「それで……聞くに聞けなかったんだけど、なぜ隣にピッタリくっついて座ってるの?」

「広いとなんか落ち着かなくて……。あと、ちょっとでも君の近くにいたいの」

 ふわりと女の子の匂いがするし、密着してるしで、僕の心臓がうるさい。

 同クラさんは被っていたベレー帽外して口元を隠した。

「だめ……かな?」

 それは反則だよ同クラさん。僕は秒殺された。

 今日は悩殺されすぎて病院通いになってしまいそうだ。

 それくらい同クラさんの破壊力はやばい。

 可愛さの暴力に屈した僕に拒否権はなかった。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
⤵︎
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?