114.三題噺「河原、超越、ライフライン」

 僕は後輩ちゃんに河原に呼び出された。

 メッセージには「今こそ決着のとき」って書かれてたけど、なんの用事だろう。

「先輩、決闘をしましょう」

「え? というか、どうして制服なの? 学校は明日からなのに」

「あっ……これは、正装、だからですよ?」

 後輩ちゃんは吃った。

「もしかして、今日学校だと間違えてた?」

「そ、そんなことないですよ? 登校しちゃって誰もいないなぁ、なんでだろうなぁ、とか思ってないですよ?」

 後輩ちゃん、声震えてるし、それ全部言っちゃってるようなものだよ。

「……連絡したのは、先輩に会いたかったからです。決闘は、なんて誘ったらいいか分からなくなっちゃって……」

 それを聞いて、僕は河原に腰を下ろした。

 後輩ちゃんもスカートを撫でおさえながら一定の距離を保ったまま隣に座った。

「いいんですか? 忙しくないんですか?」

「他でもない後輩ちゃんの誘いなんだから、断れないよ」

「そんなこと言われたら期待しちゃうよ」

「なにを?」

「……なんでもない。百戦錬磨の超越者になれたら、先輩に伝えられるのになぁ」

「後輩ちゃん、強くなりたいの?」

「はい。強くなりたいです」

「喧嘩とか、しないようにね」

「なんのことだと思ってるんですか?」

「え? 物理的にじゃないの?」

「先輩は時々ばかですよね。私が言ってるのは恋愛の度胸のことですよ」

 僕は後輩ちゃんに呆れられてしまった。

 時々、周囲にいる女の子の気持ちが分からない。
 僕の知らないうちに成長して変わってしまったんだろうか。
 嬉しくもありつつちょっと寂しいな。

「僕の役目は終わった。とうとうみんなから卒業する時が来たかな」

 冗談混じりでそんなことを言ったら、後輩ちゃんにほっぺたをつねられた。痛い。

「先輩は私のライフラインなんです。必要不可欠な存在なんです。だから離れちゃヤダ」

「ひゃい」

「あ、頷きましたね? 一生私の傍にいて貰いますからね」

 それから日が暮れるまで後輩ちゃんと話をした。

 僕と後輩ちゃんは立ち上がり、長いこと座っていたから同じタイミングで体を伸ばした。

「何かをするんじゃなくて、こんなに誰かと長話するのは初めてだったかもしれない」

「じゃあ、今日はふたりの記念日ですねっ」

「何記念日?」

「先輩と私の仲良し記念日?」

「もう十分仲良しでしょ」

「えへへ。確かにそうですね」

 ご機嫌の後輩ちゃんと一緒に帰った。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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