シェア
オオキユーヒ
2022年7月31日 14:37
空は完成されたという語源を持つコンソメのように琥珀色の夕焼けだ。「あれ? 先生だ」 スーパーへの買い出し帰りなのか、先生は両手に重そうなエコバッグ持っている。「こんばんは。先生、ひとつ持ちますよ」「ああ、君か。別にこのくらい……。って、いいって言ってるだろう?」「普段、お世話になってるので」 僕はひとつ奪うような形で持った。「君たちは、ほんと優しい男だな」「なんか
2022年7月30日 17:26
僕とマカロンくんは、夏休みだけれど生徒会の活動で地域のゴミ拾いをしていた。 普段綺麗だと思っている景色も、視点を変えるだけで意外とゴミが落ちている。「なあ、最近どうだ?」 またひとつ落ちているゴミを拾うと、隣にいるマカロンくんが声をかけてきた。「どうだ、って……何が?」「そりゃ、聞かなくてもわかるだろ」 僕とマカロンくんは幼馴染だから、空気感で僕の恋愛事情についての質問だ
2022年7月29日 14:36
特にやることもない僕は、暇を持て余すという方法で夏休みを満喫していた。 隙あればスマホを触っていて、Wi-Fiの恩恵をこれでもかと享受しているほどだ。 宿題は毎日コツコツとやっているから問題ない。むしろペースが早過ぎて終わりそうだ。「はぁ、先輩に会いたい……」 ぽつりと、僕の口から本音がこぼれた時、スマホの通知が鳴った。「っ!?」 画面に表示されているのは、まさに先輩の名
2022年7月28日 13:10
夏休みだけど、僕は制服を着て登校していた。 補講を受ける人以外は登校していないけれど、いつも通り僕の隣には同クラさんが座っている。「もはや、僕の隣が同クラさんの定位置だね」 思いつきを口にすると、同クラさんは「えっ……!?」と驚いた。「……それって、プロポーズ?」「どうしてそうなるの?」「あっ……。ご、ごめんっ。気にしないで」 同クラさんは手をぶんぶん降って否定した。
2022年7月27日 15:55
生徒会長の俺は、ドキドキしながら待ち人を待っていた。「お待たせ」 大人の女性が俺の前で立ち止まり、声をかけてくる。 それは先生だった。「全然待ってないっす」 私服姿に心臓が跳ね、普段とは違う化粧に大人の魅力が詰まっていてクラッとした。 後ろ髪を纏めていて、普段は見えないうなじが見えている。「私服姿も素敵だな」「せ、先生も綺麗です……」 ドギマギしながらも会話を
2022年7月26日 14:07
私は夏休みを満喫して平日の昼間からリビングのソファでダラダラと過ごしていた。「時間が過ぎるのも早いもので、明日は夏休み明けの登校日、なんてことないかな……」「あるはずないでしょう」 私の独り言にお姉ちゃんが反応した。 今日はお姉ちゃんも仕事が休みだ。「都合よく時間飛ばせたら苦労しないわよ」「だって後輩くんに全然会えないんだもん! もっと遊びたい! 毎日会いたいぃ〜!」「
2022年7月25日 14:09
朝、ベーコントーストを食べ終えた僕に電話がかかってきた。 朝早いのに誰だろう、と画面を見ると名前が目に入った。「同クラさん……?」 電話に出て、真っ先に同クラさんから追求されるとは、この時の僕は知らなかった……。「私、知っているんだよ」 真っ先に僕を責める言葉が聞こえた。「……え。なんのこと?」 当然、僕に心当たりはない。「私、知っているんだから……」 何かし
2022年7月24日 13:33
僕は後輩ちゃんと時代劇を見に来ていた。「おもしろかったですね〜」 終わってから時間が経っているけど、後輩ちゃんはずっとご満悦だ。 余韻に浸って感想を僕に伝えてくれる。 でも、わざとじゃないんだろうけど、隙あれば腕を組んで胸を押し当ててくるのだけはやめてほしい。やわっこい脂肪の感触とか、いい匂いが鼻腔をくすぐって変な気分になりそうだ。 後輩ちゃんは近づかれるのが苦手なのに、今日
2022年7月23日 13:05
夜、教師である私はワンコインのカップ酒をレンジで温め、熱燗にしてほろ酔いになる。 既に4カップ目に手を伸ばしていた。「世間は土用の丑の日だというのに、私が食らうのはビーフジャーキー、か……」 物悲しくなった私は、スマホを手にした。 ふと、履歴の一番上にある人に連絡してみることにした。 衝動的な行動だ。 夜も更けているし、おそらく寝ているだろう。 呼び出し音が数回。息を吸
2022年7月22日 12:16
テストも終わって明日から夏休みだ。 終業式だけの午前終わりの今日、僕は一度家に帰って夕飯を食べた後、電車に乗って無人駅まで足を運んでいた。 先輩が夏を先取りしたいと言って、呼び出されたからだ。 少し歩くと海がある。 先週海開きしたばかりで、そもそも夜なのもあって人は全くいなかった。「やっほー後輩くん」 先輩の声が背後から聞こえた。 高校生が夜遊びなんて……と、文句の一
2022年7月21日 21:13
期末試験を終えた私と同クラちゃんと後輩ちゃんの3人は、同クラちゃんの招集によってファミレスに集まっていた。 議題は試験のことでも学校のことでもない。 鈍感で難聴スキルを持つ共通の思い人のことだ。 後輩くんから女の子として見てもらい、意識してもらうにはどうしたらいいか話し合っていた。「そもそも、この集まりは不毛じゃないですか? 私たちが仲良くして牽制しあってるうちに他人に取られるなん
2022年7月20日 15:19
チャイムが鳴って、期末試験2日目が終了した。明日を乗り切れば夏休みだ。 隣の席を見ると、同クラさんが机に突っ伏してどんよりした空気を纏っていて、明らかに落ち込んでいた。 艶やかな黒髪が机に流れるように垂れていて、余計に陰鬱さを強調している。「ど、どうしたの……?」 声をかけるべきか悩んだけど、気になったから聞いてみた。 同クラさんはもっさりした緩慢な動きで顔をあげた。目は、う
2022年7月19日 10:44
今日から3日間、期末試験だ。 私は教師として解答用紙を回収した。 生徒たちは午前で終わると喜んでいる。羨ましい……。「先生」「ああ、君か」 廊下に出ると、生徒会長が声をかけてきた。 マカロン君という可愛い渾名をつけられても文句ひとつ言わないいい子だ。 冷静に振る舞う私の内心は、実は焦っていた。 昨夜チャットが来ていたのだ。 すぐに返した方がいいのか、それとも時
2022年7月18日 14:51
「え、なんで!?」 私の前にはボクシングのリングがあった。 ライトアップされて後輩くんが出てきた。「っっっっっ!!!!」 その姿を見て、私は手で両目を塞いだ。 好きな人が男気溢れる筋肉を惜しげもなく晒してるなんて、衝撃的すぎる。好き。 直視してしまったら私は物語の世界のように鼻血を吹き出して気絶してしまうだろう。 でもっ、見たい!!! 私は指の隙間から後輩くんをちらっ