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姫(50代父)と じいや(30代娘)のマラソン旅 ~鹿児島編~

『○○マラソン当たっちゃった★』

姫からのLINE、これがいつもの長い旅の始まりである。
姫こと父 (50代男性) のこのお言葉、即ち
『そちらでプランを組み、全ての予約をし、尚且つ一緒に行って案内してね』
と言う事だ。姫からの命、じいやに拒否権は無い。基本的には無い。

じいやこと私 (30代女性) はLINEを見た瞬間、返事をするよりも何よりも、とにかく素早くホテルを探すのである。だって、マラソン大会があるってことは残り少ないホテルが凄い勢いで埋まるから。

大体マラソンの抽選発表があった直後に探したって、スタート地点にアクセスが良く価格帯が手頃なホテルは軒並み埋まっているのである。大半の人がマラソンにエントリーした時点で良いホテルを押さえているからだ。誰だってそーする。おれもそーする。

残った枠を、姫と同じように抽選結果を見てから、と思っている人が一気に予約し始める。基本的にこの人たちとの戦いになるのだ。キャンセル枠を狙い、やたらと値を上げてくる某ホテルを切り捨てて、隙を縫うように探す。探す。とにかく探す。姫の希望に応えるために。そして途中で1人静かにキレる。

「だから!エントリーする前に言え!」

さあ、珍道中の始まりだ。

―旅の記録に出てくる人たち―
(よしきちの父・愛媛県民。特急と新快速の区別が付かない。無茶ぶりをしてはじいやをぶん回して悩ませる姿は姫そのもの)

じいや
(よしきち・現在関西人。(話が)早い・(各自負担で旅費が)安い・(行先のチョイスが)上手いと三拍子揃っているので度々姫と旅行する羽目に合う)

(よしきちの母・元関西人。一緒に行く?と誘っても、姫を連れ出して私に自由を!と主張し、毎回犬と留守番する)


2014年秋。
姫からLINEメッセージが飛んできた。

「鹿児島の菜の花マラソンに行こう」

あ、これは鹿児島に行くから手配しろってことだ。それ以外ない。
行こう、じゃない。行くぞ、なのだ。
姫は遠出のマラソンに参加する度にじいやを誘ってくる。
計画して、手配して、同行。勿論大人なので各自自費だ。マラソン中の応援だって何か所にも出没して写真を撮りまくる。
完全に一般的なツアコンよりも重労働だ。いやむしろブラックだ。帝愛グループかここは。
しかし私はじいやなので仕方が無い。
(ここまでの思考、僅か数秒)

早速スタート地点、観光地両方にアクセスおよび都合が良いホテルを探す。
彼はお姫ちゃまなのでドミトリーはもってのほか。民宿はNO、カプセルホテルもNO、安いビジホもNO。高すぎるのもNO。
NO…………とんだファンキーモンキーベイビーだ。
値段はそこそこで~。でも綺麗で~。できたら大浴場があるホテル★を所望なされる。
こちとらコミュ障だからドミトリーこそダメなものの、水回りさえ綺麗ならどこでもいいタイプなのに。

なんとか折り合いをつけてホテルを押さえ、ついでに姫用に飛行機を予約する。私は新幹線の方が便利なので新幹線移動だ。ビバ九州新幹線開通。

それが終わると観光地のリサーチ。姫の希望を聞きつつ計画を練る。
今回ご所望があったのは
・桜島行きたい
・西郷隆盛関連の場所
・白熊食べたい
あとは任せるとのことだ。

今回は前日エントリーが必要ないのがありがたい(都市部のマラソンだと前日までに受付しにいく必要があり、それで結構時間を取られる)。
これならば予定が立てやすい。

任せると言うなら任せて貰おう。いつものことだ。


・1日目 鹿児島市街巡り、鹿児島ラーメンくろいわ本店、天文館むじゃきの白熊

1/10
3日間、お家で1人を満喫できるため、とても機嫌の良い母から姫が出発したと連絡。
「あとは頑張って★」
ああ頑張るとも。ひとまず新幹線に乗るために駅へ向かう。

こちらも新幹線に乗って移動中、姫からもうすぐ飛行機に乗ると連絡あり。
「諸々の予定もあるし、鹿児島空港まで迎えには流石にいきませんぞ。
この時間に出発するこのバスに乗って、市街地までくるように」
的確な指示を出し、先に待つ。勿論ホテルの場所も確認済だ。

響良牙まではいかないが、びっくりするほど方向音痴のじいや。姫をスムーズにエスコートするために先回り。これは必須である。

合流したら荷物を置くためにとりあえずホテルへ。今回のマラソン会場からは遠いが鹿児島市街に泊まった方が色々都合が良いので鹿児島中央駅近のホテルを用意した。綺麗で大浴場付き。これには姫も大満足。

荷物を最低限だけ持ったらさあ出発だ。
姫の良いところは時間を守ることと、じいやが先導すると大人しく付いてくるところ。あとはなんだかんだ趣味が近いところだ。
だからなんとか珍道中は成り立っている。

鹿児島中央駅に戻る。結構大きな駅だ。
丁度三連休だったため、なにやら楽しそうなイベントも行われている。が、時間がそんなにあるわけではないので観光へ。

鹿児島市街地には『まち巡りバス』なる路線バスが走っていて、一周60分。20分置きに走っており一日乗車券が500円と非常に観光地を回りやすい。
今回はこちらを活用させて頂きつつ3日間観光する予定だ。

ひとまず、リクエストの西郷銅像前からスタート。

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薩摩義士碑、西郷洞窟前を徒歩で移動し西郷どんに思いを馳せ

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バスで移動。西郷隆盛終焉の地で手を合わせ、城山のてっぺんへ。

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城山公園展望台から市街を眺める。桜島めっちゃ主張してきとる。

その後街へ戻る。それぞれ昼ご飯は早かったし、明日はマラソンなのでそれに備えて早めの晩御飯について考えつつ。
姫は鹿児島ラーメンをご所望されたので『愛しのローカルごはん旅 もう一杯』に出てきたお店を紹介。姫とじいやは揃ってたかぎなおこさんのファンな為、隙あらば「なおこが行ったところに行こう」と足を運ぶ習性がある。

姫の「じゃあここが良い!」の一言で決定。『くろいわラーメン本店』を目指すことに。
17時過ぎと早い時間だったのでスムーズに入店。
大根の漬物が出てくるのでそれを齧りつつ待つ。きた。鹿児島ラーメン。

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どう見ても美味いやつがきてしまった。
鹿児島ラーメンの見た目は一見こってり。食べてみると意外とあっさり。好みのラーメンに出会った麺食いの二人、一気に完食。美味過ぎた。姫はスープも完食。

ラーメンでいい具合にお腹が膨れたところで姫が所望しておられた白熊を食べに『天文館むじゃき』へ。

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ふわっふわの氷にあまーいミルクと蜜。さらに白熊の名の通り、フルーツで描かれた白熊。これまた好みの味で「この大きさはきついかも」と思っていたものの、勢いよく食べる二人。

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しかし一月。寒い。店内だけど上着を着たまま食す。
美味い。美味過ぎる。ラーメンも白熊も好み過ぎる。これはまた食べに来たい。なんてきゃっきゃ言ってたら、ここで姫から衝撃発言。

あ、そうだ。明日のマラソン、今回はやめとくわ
 
……なんて?

色々考えたけど~。現地まで行くのしんどいし良いかなって

でたよ。姫の気分屋さんが。

参加費は支払い済みだから良いとして(開催側からしたら良くない)
こっちは残り2日分、計画の練り直しである。
「じゃあ、明日はマラソンには行かないのね?」
「うん。その方がゆっくり観光出来るでしょ」
「そう…だね…」
「白熊美味~い」

ゆっくりもなにも、計画立ててる時に言ってほしかった。
いつもこうだ!いつもこうなんだよー!JOJO―!!

しかし、よくあること。じいやはめげずに姫の為に計画の練り直しをしたのであった。

・2日目 仙厳園、両棒餅、桜島フェリーうどん、桜島バスツアー、マラソン?

1/11
マラソンが急遽無しになったので、予定を大幅に変更。
昨晩ホテルで練り直しましたとも。一人でこつこつと!

「予定変更したけど、今日はどこに行くの?」
ぶっ飛ばすぞ。

昨日に引き続き、まち巡りバスに乗り『仙厳園』へ。

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当初の予定には無かったものの、ここもなおこが訪れた場所なので姫もお気に召す…かと思いきや、あまりピンときていないようだ。おそらくあまり覚えてないのだろう。
しかしこんな時に文句は言わないのが姫の数少ない美点の一つである。
ピンときていないがじいやに付いてくる。

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広い庭園をうろちょろ。広い。めっちゃ広い。

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名産の薩摩切子は綺麗だけど我々のような民では手が出ないと話したりしつつ見学。

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両棒餅(ぢゃんぼもち)』なるお餅も頂く。

勿論これもなおこが食べていたからだ。リスペクト。サイン会とかいきたい。
しょうゆ味とみそ味の温かいお餅とお茶を頂き一息。
ほっとする味でしばし休息。

このあと甘い匂いに誘われた二人は安納芋の焼き芋を一本買うことに。スイーツ並みの甘さに姫は「普通の芋の方が好きだな~イマイチかな~」と言いつつきっちり半分食べた。黙って食え。

さて移動してフェリーに乗るぞ。


お昼ご飯に狙っていたのは『桜島フェリーうどん』これも(以下同文

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やぶ金桜島フェリー店の天ぷらうどん。天ぷらはかき揚げのことらしい。
立ち食いで素朴な味わいに舌鼓。

15分程で桜島に到着。じいやが調べておりました『サクラジマアイランドビュー』なる循環バスに乗ってゆるりと島を見学する目論見だ。バスの時間までちょいとうろうろ。記念碑と姫の後ろ姿。

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バスに乗り、揺られながら桜島観光。なかなか楽しい。

降りてじっくり見ることが出来た『赤水展望広場

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叫びの肖像を前に「剛だ!剛!」と盛り上がった。
一般観光客が入ることができる最高地点がこちらです、と案内された『湯之平展望所

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自然、すごい。迫力、ある。力こそパワー。

語彙力が完全に死んだ二人はテンション高く見学&撮影。
桜島国際火山砂防センターでシアターを見てお勉強。そして。
「で、気になってたんやけど、その荷物なに?」
そう、昨日に比べ姫の手荷物が多いのが気になっていたじいや。

今日着るつもりだったマラソンの服

なにを言ってるんだこいつは。

「桜島で走れるかも~、って思ったけど、やっぱやめとくわ」
出たよ。姫の願望はあるけど誰かに後押しして欲しいパターン。

「いや、走ってきなよ」
「え~?でも俺一人で走ってたら暇でしょ?」
ギャルゲーかよ。選択肢間違えたら好感度下がるやつじゃねえか。

「…足湯入ってカップの白熊食ってるから良いよ」
「でも、時間がないでしょ?」
めんどくさいタイプのヒロインかよ。
→「(誰かが)マラソン行かなかったから余裕あるよ」

「でもな~やっぱり…」
「いいから走ってこい」
荷物見てるから!と着替えさせ、売店で白熊を買い、送り出すじいや。

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「やれやれ……」とラノベの主人公よろしく呟き、溶岩なぎさ遊歩道で一人足湯に浸かる。ぬくい。あとカップでも白熊美味い。一人でぼーっとする。周りは親子連れが何組か居るが、のどかなものだ。さて、姫はいつ帰ってくるのだろう。

しばらくしたら気が済んだのかめっちゃ笑顔で戻ってきた姫。
「いや~いい経験になった!」
だからさっさと行けと云うたのに。
「冷えるから着替えてくるね★」
こっちは長湯で茹ったよ。

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その後島を散策し『道の駅「桜島」火の島めぐみ館』にてお土産のお菓子や手作りの椿油を買ったり、小みかんを食べたり、月詠神社を参拝したりして桜島を後に。

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夜はさつま揚げが食べたいと仰るので居酒屋的なお店に。
でも姫はお酒が弱いため焼酎ではなくビールで乾杯しこの日を締め括った。

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・3日目 砂むし会館砂楽、鹿児島ラーメン豚とろ、カフェ彼女の家の黄熊

1/12
本日は朝早くから指宿に向かう。姫との旅は基本朝早く夕方撤収だ。
っていうか指宿は昨日マラソンで行くはずだった場所だ。マラソンの後、姫を何処かで風呂に浸けてそのままうろつくつもりだったのだ。しかしそう言っても仕方ない。私の好きにさせて貰う。
快速なのはなに揺られてガタゴト。一時間ちょいくらいで指宿駅に到着。

目的地までは徒歩20分程。夏以外は歩けたら歩くタイプなので歩いて向かう。夏はダメだ。暑いから。無理だ。
途中で宣伝している『温たまらん丼』なるものを食べたいと軽く言ってみたものの

「俺は別に良いかな~」

姫の言葉を直訳すると「食べたくない。他のものが良い」ということなので「じゃあいいや」とあっさり諦め。
姫の「別にいいけど」は基本良くないのだ。気難しい彼女かよ。今度来たら是非食べたい。

今日は砂蒸し風呂がしたい、という私の主張の為にここまでやってきた。
砂むし会館砂楽
まずはフロントで受付をし、浴衣を受け取ってそれぞれ着替えに。
全力で楽しむために化粧は落としていく。
満潮だったため室内での砂むし。

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屋根の下のコーナーに案内されて寝転ぶと砂を掛けて貰える……のだが
スコップが近いし砂を掛ける音が響くし土でどんどん重くなるしで
『今、埋められてます」感がすさまじい。
何故かこの状態の写真撮影をしてくれた。ちくしょう。化粧落とすんじゃなかった。眉毛が無い。

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ずっしり重たい砂に埋められ顔だけが出た状態。身動きが取れないので隣の様子は解らない。芯から温まる感じがして気持ちがいい。が、じわーっと汗が噴き出てきて目が痛い。

10分ちょい蒸されてオラッ!と勢いよく起き上がると砂まみれだ。
シャワーを浴びて砂を落とし、中の温泉に浸かってすっきり。
化粧直しするから待ってて!と命じておいたのでその間姫はリラックスゾーンでジュースなんぞ飲んで待機。
合流してしばしまったり。


昼ごはんどうする問題について、姫の「鹿児島ラーメンもう一回食べたい」の一言で指宿グルメは何も食べずに鹿児島市街に戻ることに。食べたかった。
しかし光の速さでルート検索。地方に行くときは電車一本、バス一本逃すと結構な時間のロスなのでこれが大事である。
丁度乗り継ぎが良いバスがあったので乗り、そのまま往路と同じく快速なのはなに。帰路の途中、昨日行った桜島が煙を出していることに気が付きテンションを上げる姫とじいや。写真を撮る。

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昨日じゃなくて良かった(灰的な意味で)と言い合い市街へ。

ラーメン屋『豚とろ』に入り、お腹もすいていたので豚とろラーメンに加えガッツリとチャーマヨめしなんて頼む。姫は辛子高菜とメンマのラー油めし。共にカロリーの海でバタフライ。
鹿児島のラーメン屋と言ったらこれですわ、と一昨日知ったばかりのくせに通ぶって漬物を齧って待つ。
慌てるんじゃあない。しかしとにかく腹が減っていた。砂むしの効果は抜群だ。

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やっぱりこってこての見た目に反して食べやすい。しかし小さめと言えど丼を付けると結構お腹いっぱいになる。空腹の時に調子に乗って注文し過ぎるのは良くない癖だ。反省してそのことを前向きに利用しなくてはな……。一方姫はペロリと食べきっていた。マラソンを初めてから本当に良く食べる。そして痩せている。マラソンおそるべし。

完食して店を後に。
母にお土産なんぞ見て、そろそろ飛行機の時間が迫ってきたので空港行のバス乗り場へ姫を送る。大きい荷物は朝ホテルから送ってあるので帰りは楽ちん。見送った後は母に姫を送り出したと連絡を入れる。
これにて任務は完了である。

その後。まだ私には時間があった。新幹線まで三時間近くある。
折角ここまで来たのだ。姫が帰った後散策するつもりで遅めのチケットを取っていたのだ。
預けた荷物はそのままに、散策だ。自由だ。

初日に駅で見かけたイベントをぐるっと見てからまち巡りバスにまたしても乗ってバスの中から名所を眺める。基本乗り物が好きなので非常に楽しい。
桜島からは未だ元気に煙が出て居る。

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その後、途中下車してうろうろ歩く。冬とは言え歩いていると暑い。
途中で見た照国神社の色合いの可愛らしさについつい写真を撮り参拝。


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気が済むまで歩いたら白熊……と見せかけて『カフェ 彼女の家』にて黄熊を食すことに。

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これも美味い。マンゴーとバナナがごろごろ入ってて最高。
っていうか一番小さいハンディサイズでこの盛り。贅沢品だ。

この三日カロリーを取りまくってるけどその分ひたすら歩き回っているのでトータルで見たら完全に痩せてるはず。そう信じたい。

この後は駅まで徒歩で戻り、荷物を回収し、新幹線で帰路についたのであった。

鹿児島市街は巡回バスの使い勝手が良く、ご飯も美味しかった。しかし指宿はもう少し見て回りたかった。
マラソンのはずの姫に合わせてプランを組んだ為に行けなかった霧島、ちょっと足を伸ばした枕崎にも行きたいし姫が苦手な鳥刺しや黒豚のしゃぶしゃぶも食べたい。

なにより、満を持して夏の白熊を食べたいのでまた是非鹿児島に行きたいものだ。

そして完全に余談だがこれを書いている間、見つからない写真があり姫に「鹿児島行った時の西郷どん関連の写真残ってる?」と連絡したところ、最終的に「今度は夏の白熊食べたい」と返信がきた。

結局似た者同士なのでまた旅に出る予感しかしない。

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