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世界経済は奇妙な "股割き" 状態。ー 日本は "ゴルディロックス" ?

 金利市場に20年以上従事した「損切丸」だが、こんな事態は見たことがない。CPI(消費者物価指数)が下がらない国と急落する国。言わば奇妙な "股割き" 状態になっている。特にヨーロッパが複雑で、高止まりするイギリス、ドイツに対しスペイン、ギリシャは急落 

 2022.12.12 コロナ後の世界 Ⅳ - 「インフレ」「デフレ」どちらに向かうのか?(続編)|損切丸 (note.com) が予想通り進んでいる状況だが、基礎的条件が2つある:

 ①経済的に中国と結びつきが深いかどうか
 ②原油やガスが十分にある、或いは他の電源があるかどうか

 e.g., ブラジルの水力発電(@60%)、スペインのパイプライン、フランスの原子力発電

 アメリカドイツイギリスなど経済規模の大きい国々がしつこい「インフレ」に苦しむ中、中露ではCPIが急落「デフレ」のような現象に見舞われ、人民元、ルーブルとも直近で急激な「通貨安」が進む。

 不良債権に苦しむ中国戦争中のロシア共々共通するのは「ドル不足」「利下げ」をする余地がある中国と比べ、深刻なのは戦費捻出に苦しむロシア10年国債金利はじわじわと上昇し遂に@11%を突破政策金利@7.5%との乖離が大きくなっている。これは非常に不味い状態だ。

 「円の方がルーブルより安くなっている!」

 なるほど、ある意味間違ってはいない。

 だが1つ重要な事を見落としている。そのヒントは「株式市場」にある。例として日経平均香港ハンセン指数を見比べてみよう:

 一時指数の名目値がハンセン>日経平均になった事があるが、それを考えるとダブルスコアに近い日経平均>ハンセンは凄まじい変化。欧米からの「お金」が絶えたロシアの株式市場に至っては市場の体を為していない

 本来「通貨安」は輸出の交易条件を有利にし、景気にはプラス日本はモロにその恩恵に預かっているが、敵対的な「戦狼外交」を展開する中露はその恩恵を受けられない。いくら「通貨安」になっても安い人・物を海外顧客に売ることができないからだ。戦費が嵩むロシアの金利が上昇するのは危険な兆候で、「お金」の流れだけを見れば「敗戦」という結論になる。

 「米中対立」≓「反グローバリゼーション」≓「インフレ経済」

 はっきり言って対立前のように中国から安い製品をバンバン買えば欧米の激しい「インフレ」は大分緩和される最近アメリカが中国に ”和解” を呼びかけているのはそういう狙いもあるが、そこがそうはならないのが今の難しい所。独裁者が "面子" に拘る限り簡単に元へは戻らない。

 そんな中、なぜ「日経平均」が世界中で大人気なのか?

 これはまさに "ゴルディロックス"(適温相場)効果と筆者は見ている。
( 参照:株価の「ゴルディロックス」。ー マーケットに ”3匹の熊” はいるのか。|損切丸 (note.com) )

 ドル円が@145円をつけて、また何かと日銀による「利上げ」が取り沙汰されているが、仮に日銀が動いたとしてもせいぜい+1~2%アメリカやヨーロッパのように+4~5%という訳にはいかないだろう。というのも、日本は欧米と中国の丁度ど真ん中に位置する特殊な国だから。欧米の「インフレ」の影響を受ける一方、中国の「デフレ」にも引っ張られる

 結果として「インフレ」はマイルド金利もさほど上がらない。まさに ”適温相場”続・世界は「過剰流動性」中毒。ー 「テーパリング」(薬抜き)と「インフレ」という禁断症状の苦しみ。|損切丸 (note.com) にとっては恰好の「利上げ」回避地になっている。加えて「円安」のバーゲンセールとなれば、人気商品にもなろうというもの。

 だが多額の「インフレ税」を払わされる日本人はたまったものではない。結局財務省の借金+海外勢の「投資コスト」を肩代わりさせられることになるだけ。「リスクを取る」というより「負わされるコストを減らす」ためにも現預金偏重は考え直した方が得策だろう。

 アメリカの「インフレ」 > 中国の「デフレ」

 仮に「米中対立」≓「反グローバリゼーション」がなくても、アメリカの約7,700万人、日本の「団塊」800万人等、いわゆる「ベビーブーマー」の大量引退で、今回の人口動態=「人手不足」による「インフレ」は不可避だったはず。「米中対立」はそれを増幅したに過ぎず、その圧力はおそらく中国の不動産債権問題より大きい。よって「中国」側は「デフレ」より「スタグフレーション」に近い状態に陥るというのが筆者の見立てだ。だから中国株は上がらなくなっている。

 2021.12.1 パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸 (note.com) 以降の米国債相場を振り返ってみれば明白だが、「逆イールド」「利下げ」頼みのウォール街の策略は失敗続きこの「インフレ」はかなり粘着質でしつこい

 ちなみに昨日(6/30)の5月PCE価格指数  は食品・エネルギー価格の下落を反映して総合は下落したもののコアはあまり下がっていない。これだとかえって消費、「インフレ」にはプラス。だから株価が上昇している。

 5月米PCE総合価格指数(前年比)+3.8% 予想 +3.8% 前月 +4.3%
 コア指数(除.食品・エネルギー)+4.6% 予想 +4.7% 前月 +4.7%

 日銀も "頬被り" してFRBによる「利下げ」を待つつもりのようだが、おそらく上手くいくまい。8月からは信じられないくらい電気代も上がる(!)し、「円安」も@150円、155円と続けばさすがに国内の怨嗟の声は大きくなるあとは「政治」次第。どの段階で「みんな飛び込んでますよ!」相場に転じるか。動く時はいつも一方方向の恐ろしい「円相場」なだけに目が離せない。 "熱い夏" が待っていそうな気配ではある。


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