株価の「ゴルディロックス」。ー マーケットに ”3匹の熊” はいるのか。
*「ゴルディロックス」という名前の少女が ”三種のお粥” を味見した所、熱すぎるのも冷たすぎるのも嫌で "ちょうどよい" 温度のものを選ぶ。
*「ゴルディロックス」(Goldilocks)とは「金髪」という意味で、gold「金」+lock「髪」からできた名前。
最近よくマーケット、特に株価に用いられるこの「ゴルディロックス」:
「経済学」おける ”ゴルディロックス原理” =低インフレ率と市場親和的な金融政策が続き、経済の緩やかな持続的成長が可能になること。
別名「適温相場」とも言うが、まさに今の株式相場にピッタリ来る。登場する少女が「投資家」で3匹の熊はさしずめ「インフレ熊」「デフレ熊」「適温熊」といったとことろか。スープの温度を示すのが「金利」ということになるだろう。
米国債10年の金利が@0.90%以上では「熱過ぎた」のでフーフー冷まして「丁度良い」@0.80%台に冷ましたところおいしくお粥=「株価上昇」を頂けた。今のベッドが大きさも堅さも丁度良いので、ここでできるだけ長くぐっすり眠りたい、というのが今の株式市場の声だ。幸いお粥をフーフーしてくれる人達(キャリー狙いの債券トレーダー)が多くいるので、結構 ”長くおいしく頂ける” のではないか。
NYダウ@35,000ドルか日経平均@30,000円か水準の決め打ちは難しいが、おそらく「株価はバブル」「暴落前夜」のような事を言っている人や記事がぱったり途絶えるまで続くだろう。これらの記事のヒット率が高いと言うことは、株を買えなくて悔しい思いをしている人が多いことの証。つまり** "多勢" の「願望」を代表している。
** ”無勢” の「株から収益を得ている人」の中で今「利食い」を本当に良く我慢している人達がいる。「利食い」を引っ張るのは「損切り」より遙かに難しい。更にこの上昇過程で「買い増ししている人」は ”スーパー”。その収益は雪だるま式に増えているはずだ。実際 ”売り買い” をやってみると判るが、利が乗っていれば普通すぐ「利食い」たくなるもの。(余程無神経な人以外)更に「買い増し」するのは ”かなりの勇気” が要る。
"多勢" が株買いポジションを抱えると「願望」は相場が上がる方に傾く。当然メディアも「買い一色」になり、「ゴルディロックス」は「お祭り」に変わる。誰も相場の上昇を疑わない ”ハイ” な状態に突入し、お粥の温度など誰も気にしなくなる。
だが実際は熱すぎるお粥を食べれば口の中は火傷をするし「インフレ熊」が帰ってくれば襲われるかもしれない。しかし「適温状態」が長く続くと、感覚が麻痺するものらしい。「上がって欲しい願望」が全てに優先する。
しかし永遠に上がり続ける相場というものはない。株価の上昇もいずれ止まる。そういう時に訪れるのが「奇妙な静寂」。いろいろな相場をやってきた経験で言うと「暴落前夜」のマーケットはシーンとすることが多い。筆者も理屈ではなく、この「違和感」で命からがら逃げたことが何度かある。
「株が高すぎる」「おかしい」と言う声が未だ多く聞かれる現状は「暴落」には程遠い感じだ。株を買えていない人が多いことの証でもあり「ゴルディロックス相場」の過程と推察できる。無論今の株価が割高だとの指摘に反対するわけではない。むしろ理論的には正しいのだが、「相場」は理論通りいかないものであり、それが怖いと同時に面白いところでもある。
ただ1つ確かなのは「熱すぎるお粥」を食べれば火傷をする。そういう意味で「温度」=「金利」は必ずチェックしておきたい。酔っ払った翌日に傷だらけ、なんて経験が有る方もいるだろうが「酔っていれば怪我はしない」なんてことはない(そういう飲み方をする人はいる笑)。
もう一つ参考までに言うと、日頃「株価が下がる」とばかり主張しているエコノミストや著名人の名前を控えておくといい。おそらく彼らは本当に株が下がると信じているわけではなく、「株が下がって欲しい」という "多勢" の願望を感じて発信している。つまりこれら「株ベア派」が「株ブル派」に転じるときが一番危ない。 "多勢" が既に株買いに転じているからだ。
「奇妙な静寂」以外にも「違和感」が訪れる時もある。例えば何か聞き慣れない ”物音” 。「インフレ熊」が帰ってきたのかもしれない。「金利」などと合わせて確認は怠らないようにしたい。「まあいいか」と見過ごすと後で時限爆弾のように爆発することがある。「備えよ常に」の精神である。
「利食い」は本当に疲れる。変なところで降りてしまい買い直したところが「天井」なんてこともある。売り買いの確率はつまるところ50:50なのに手元に残る儲けは皆同じ、なんてことはない。勝っている人はそれなりに勉強しているし我慢もしているはず。「儲ける」のは大変事なのである。
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