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コロナ下の「銀座」。

 もう1年ぐらいぶりだろうか。3月以降、ろくに電車も乗らなかった「損切丸」だが、久々に「銀座」に行ってみようと思い立った。「コロナ疲れ」ではないが、さすがに運動不足でお腹も出てきてしまい(笑)、少し行動範囲を広げた方が良いと感じ始めている。

 正直な感想思ったより人が出ている。昨年の今頃といえば、確か中国の「国慶節」で何台も観光バスが乗り付け、観光客でごった返していたはずだが、正直あまり記憶に残ってない。それに比べれば人出が急減しているのは間違いないが、今年4~5月頃のガラガラ感よりは随分回復している。平日だったので店舗の客の入りはお世辞にもいいとはいえないものの、ランチ時の飲食店には奥様達を中心にまずまず客が入っていた。

 ” 8月決算:高島屋▼102億円、そごう・西武▼36億円、松屋▼22億円 ”

 ”来年2月までの1年間の業績予想:高島屋の最終損益▼365億円、J.フロントリテイリング▼186億円とともに大幅な赤字になる見通し。”

 百貨店業界は厳しい経営環境が続く。売上は軒並み前年比で半分以下だし、赤字経営がしばらく続くだろう。地価が大幅に下落した「銀座」では、やはり中国を中心とした「インバウンド消費」消滅の影響が甚大で、中国客専用の売り場まで新設していたデパートのダメージは深刻だ。実際お昼を食べに行った食堂街では2件あった中華料理店が両方とも閉店していた。

 もっとも「銀座」にそこまでの暗さは感じなかった。筆者が見た「銀座」で最も「真っ暗」な雰囲気だったのは、山一証券が破綻した金融危機の時。金曜日の夜だというのに人影もまばらで、心なしかネオンの点灯も控えめだった記憶がある。本当に「この世の終わり」的な雰囲気だった。

 経済指標だけ見れば「リーマンショック」を上回る「経済危機」ということになるが、どうも ”生活実感” ではそこまでの "悲壮感" がない。株価が戻していることもあるし、給付金等の対策がある程度効いているのだろう。特に9月末時点で ”預金残高が過去最高を更新” している日本では「大変だ」感が低い。やはり「お金」が足りているかどうかは重要な要素だ。

 「金融危機」と「パンデミック危機」の違いは何だろう?

 働いている人で「銀行口座」を持たない人は殆どいない。だから「銀行が危ない」ということになると自分の「お金」も危機に晒されるので、表向き出ている経済指標以上に心理的な影響が広範囲に及ぶ「景気は気から」と言うが、*「お金」の工面がつかなくなるかもしれない、という不安心理が世の中の雰囲気を悪くする

 「リーマンショック」も重大な「金融危機」だったが、欧米の銀行に比べて日本の金融機関は比較的健全だったため、日本はそこまで落ち込まなかった。やはり1990年代後半以降の「銀行・証券危機」がどん底

 「パンデミック危機」の場合、突如 ”人の接触・移動” を断たれるため、特定の業種=飲食、観光、交通業等に大きなダメージが出る。経済活動が急縮小し激しい売上、雇用の減少に見舞われるため、「経済指標」の数値は桁違いに悪化することになる。

 だが ”経済の血液” とも言われる「お金」はそこまで危機に晒されない。店舗の飲食は宅配サービスが代替するし、「テレワーク」にシフトすることにより、関連のITサービス企業は ”恩恵” さえある。言い換えれば社会活動の変化により「付加価値の移動」が行われることになる。やや語弊はあるが、ダメージは特定の業種に偏り、不安心理が広く全体に波及しにくい「預金大国・日本」ならなおさらである。

 これは「不動産価値」についても言えること。賃貸市場を見ると、最近は「駅近」よりも「スーパー」「コンビニ」等が近くにあるのかをチェックする顧客が増えているという。これは「外食」から「内食」に「付加価値シフト」していることを示している。

 「スペース」についても然り。「テレワーク」をするための ”広さ” が必要になるため、今までより広めの部屋を探すことになる。更に部屋の中で過ごす時間が増えるため、防音や遮熱性能も大事。昨年の一時期流行りそうになった1部屋10㎡以下の「駅近・極小アパート」は集客に苦戦している。

 そうすると「家賃」が上がってしまうため、少し中心部から離れた場所に移動していくことになる。東京で言えば**「山手線内」から「環7・環8エリア」へ、更には東京近郊圏へと移っていく。そうすれば同じ「家賃」でより広く条件の良い物件に住める

 **実際「損切丸」が住んでいる地区は「環7・環8エリア」で、スーパーやコンビニが充実している。これだけの「危機」なので「家賃」が下がるかと思いきや、下がるどころか上がっている物件さえ有る「山手線内」「高額家賃物件」に住んでいた人達がより ”生活力” の高い地域へシフトしているのかもしれない。

 「職・住接近」から「食・住接近」へのシフト、といったところだろうか

 インバウンド消費減退の直撃を食らった「銀座」「浅草」の地価が下がるのは、ある意味自然なこと。だがもともと利用価値の高い場所なので、ある程度値が下がれば必ず代替需要が出てくる。大袈裟に言えば「コロナ危機」をきっかけに「日本社会のリフォーム」が進んでいるとも言える。

 これは株や為替などのマーケットもそうだが、大幅な「付加価値シフト」が起きており、捉えようによっては大きな「投資」「ビジネス」チャンスを生んでいるどの業種、地域・国が良いのか、この数年の見極めが大事。出来れば「コロナ後」の変化も見通しておきたいところだ。

 GAFAがそうであったように、3年後には思いもしないような企業、業種が世界経済をリードしているかも。”ヒント” は意外と ”生活の現場” に潜んでいそうなので、よくよく観察していきたい。

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