見出し画像

『推し、燃ゆ』の考察・感想【”推し”とはなにか】

こんにちは、おかもも(@okamomo_san)です。

第164回・芥川龍之介賞を受賞したベストセラー作、『推し、燃ゆ』を読みました。

あなたにもし「推し」がいるなら、共感できる部分が必ずある。

そんな本です。

しかし、「推し」がいる人が読むとしんどくなる内容でもありました。


本noteでは、『推し、燃ゆ』を読んだ私の考察と感想を書いています。

『推し、燃ゆ』を読んだあと、主人公の気持ちがわかりすぎて気持ちがダークサイドに落ちてしまうかもしれません。

そうなったときのために、私なりの救済法も書きました。

「推し」がいるあなた、ぜひ最後まで読んでみてください。

※以下、ネタバレを含みます。


『推し、燃ゆ』のあらすじ


主人公のあかりは、「まざま座」というグループに所属する上野真幸を推しています。

ある日、あかりの推しである上野真幸がファンを殴ったというネットニュースが流れました。

このニュースは真実なのか。

そして推しはこの件について、どういったリアクションをとるのか。

あかりは戸惑いながらも真幸を解釈し、推しつづけます。

けれどこのニュースがきっかけで真幸のアンチが増え、グループ内の真幸の順位も最下位に。

こののち、「まざま座」は解散。

あかりの推しの上野真幸は、芸能界を引退することになります。

真幸を推すことを”業”というあかりは、体もこころもどんどん不安定になっていきます。


『推し、燃ゆ』の考察


そもそも「推し」とは? (4)

「推し」を辞書で見てみると

他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物。

※大辞泉より引用

と、あります。

「人にすすめたいほど気に入っている人や物。」

この「気に入っている」の部分は、人によって程度が違います。

「気に入っている」の程度が深ければ深いほど、主人公・あかりの気持ちがよくわかります。


ちなみに私にとっての推しは、「その人がいるから(それがあるから)、日常を頑張ろうと思えるもの」です。

つまり推しとは、自分が立てる一本の柱のようなものだと思っています。

「私はこの人を応援してますよ!」と、自分の中で柱を立てる。

そしてその柱を支えに、日常を組み立てていく。

それが、「推し」だと思っています。


「推し」にも、いろんな種類があります。

あかりにとっての「推し」は、私の考えと似ているように思います。

あかりも、「推し」という柱を支えに生きているように見えるので。

あかりにとって「推し」とは、生きるための支えや糧。

または、言葉では表現できない気持ちを「推し」という言葉につめこんでいるのではないでしょうか。


そもそも「推し」とは? (5)

タイトルの「燃ゆ」は、古語です。

「燃ゆ」の意味は

①火が燃える
②火が燃え盛るように心が高ぶる

※学研全文古語辞典より引用

おそらく「推しが炎上したこと」と、「心が高ぶっているあかりの感情」のダブルミーニングでしょう。

「燃える」ではなく「燃ゆ」を使うことで、語感がいいです。


そもそも「推し」とは? (3)

序盤で

病院の受診を勧められ、ふたつほど診断名がついた。

とあります。

「病名」ではなく、「診断名」です。

診断名という表現やあかりの言動から、あかりは発達障害だと予想できます。


たとえばあかりは推しに対してはものすごい力を発揮できますが、バイトや日常生活は苦手です。

ラジオやテレビでの推しの発言を書き留めたファイルを20冊以上作れるのに、部屋の中は乱雑で手のつけようがないと書かれています。

これは、発達障害のASDの特徴のひとつです。


あかりは、おそらく発達障害です。

しかしあかりの「好きなことに対しては一生懸命になれるけど、それ以外のことはおろそかになる」という部分は、誰でも共感できるんじゃないでしょうか。

むしろあかりは特別ではなく、自分と似ていると感じる人も多いはずです。


『推し、燃ゆ』の感想


冒頭でも書いたとおり、「推し」がいる私は共感できる部分が多くありました。


命のともし火は、毎朝、推しにわけてもらう。

※本文より引用

推しの音声が入った目覚まし時計を使っている、あかりの言葉です。

私も毎朝推しの歌を聞いて、会社まで通勤していました。

推しからパワーをもらってその日一日をやり過ごす気持ち、とても共感できます。


推すことはあたしの生きる手立てだった。業だった。

※本文より引用

日常生活がうまくいかないときでも、推しているときだけは「生きてる」と感じられます。


個人的なことですが、私はこの前までブラック企業で働いていました。

そこで働いていたあいだ、推しは間違いなく私にとっての支えで、生きる手立てでした。

推しがいなければ、ブラック企業で何年も働くなんてできなかったです。

ブラック企業を辞めたあとも、推しがキラキラした姿をもっと見たいから、だから死にたくないなと思います。

とくにメンタル状態が悪いときほど「推す」と「生きる」がイコールでつながってしまうの、わかります。


「推し」がいれば、共感できる。

「推し」がいなくても、不格好に生きている主人公の姿に心打たれる。

そんな作品です。


『推し、燃ゆ』を読んだあとは


『推し、燃ゆ』では、主人公の推しは芸能界を引退してしまいます。

推す対象が、いなくなってしまう。

結構しんどいラストです。


しかし、本来「推し」とはすばらしいもの。

それを思い出すために、見ておきたいものがあります。

それは、『世界の果てまでイッテQ』の「イモトワールドツアー安室ちゃんと2ショット写真撮れるか?台湾SP…ついに今夜人生最大サプライズ!?衝撃の結末を完全公開」です。

これを見て、「推し、すばらしい!推し、好き!」の純粋な気持ちを取り戻しましょう。

以前はHuluで視聴できたんですが、今は見れなくなっていました…
2020年4〜5月に期間限定で再公開されたので、今後も再公開の可能性あるかもです。
くわしくは、Hulu公式サイトを確認してください。


イッテQを見て「推し、すばらしい!」ってなったあとは、暴走する気持ちをおさえるためにこれ↓を読んでください。


「推しはサプリメント」

これ、しっかり心に刻んでおきましょうね。

自分のことよりも、推しのことを優先しちゃダメです。

(自戒の意味をこめて書いてます。)


くれぐれもご自愛専一にて、これからも楽しく推し活していきましょう。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?