マジョリカタイル ー京の銭湯からインドまで—
みんぱく(国立民族学博物館)へいってきた。特別展「交感する神と人 ヒンドゥー神像の世界」を見たくて。
ヒンズー教は、教祖がいないこと、土着の宗教であること、多神教であること、穢れ・祓えのような概念があることが、日本の神道に近い点も多いなあと思いながら(カーストは別として)見終えたのだけれど、意外な発見も。
それは、インドで飾られていたヒンズー教にまつわるモチーフを描いたタイルの多くが、なんと日本製のマジョリカタイルであったこと。昭和初期にインドに多数輸出されていた、という事実だった。実際のタイルや金型も展示されていた。
マジョリカタイルはご覧のように、凹凸のレリーフを施した美しい装飾タイル。スペインやイタリアの施釉陶器の流れをくみ、1800年代半ばにイギリスで焼かれたヴィクトリアンタイルのひとつだ。金型を使い、手で彩色していくので精緻でデコラティブ。
それが日本へ伝わり、大正・昭和期に焼かれるようになったのが「和製マジョリカタイル」。主な生産地は、淡路島や愛知県。余談だが、骨董でおなじみのカラフルな淡路島の「珉平焼(みんぺいやき)」の技術が、後にマジョリカタイルへ発展したそうな(その珉平焼も、京焼の施釉技術がもとになっているのだが、この話はまたいつか)。この和製マジョリカタイル、各地に残る大正レトロな建築でそのカラフルで愛らしい世界をとくと堪能することができる。
京都では、銭湯を中心に、大正レトロ建築でよく使われているタイルなので(船岡温泉、元銭湯を改装したさらさ西陣などが有名ですね)、京都に住んでいるととても身近に感じるもの。それがなんと海を渡っていたなんて! その背景は以下のライター 加藤郁美さんの寄稿に詳しい。2020年に多治見で開催された「金型の精緻・精巧美の世界—世界へ羽ばたいた和製マジョリカタイル」展に寄稿されたもののようだ。https://www.jappi.jp/letter/pdf/202010_02.pdf?ccv20201007
この記事によれば、日本がヒンドゥー教の神々をモチーフとしたタイルを製造するようになったのは、インドがイギリスの植民地であった状況と関わっている。昭和初期、インドが反英を強め、独立運動の機運が高まる中、イギリス製品をボイコットし、日本製のタイルを輸入するようになったのだとか。一時は5割ほどのシェアを占めていたこと、ヒンズーのタイルが日本製だと分かったのが2014年頃の最近というのも胸熱だ。
余談だが、展覧会で見たヒンズー教の神像に着せるハレの日の衣装のパターンが秀逸。こんなふうに使わない時はペタンと畳んで収納できる。これ自体も素敵。ぜひとも欲しいし、なにかに応用してみたいなと思ったり。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?