深読み バック・トゥ・ザ・フューチャーvol.4(ポール・サイモンの HEARTS AND BONES ㊵「Rene and Georgette Magritte with their dog after the war」XⅦ~『深読み ライフ・オブ・パイ&読みたいことを、書けばいい。』第171話)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
もう何が何だか…
『パワー・オブ・ラブ』って何なのよ…
読んで字の如し。「愛の力」じゃ。
ふぉーっふぉっふぉ。
それでは、BTTFの主題歌『The Power of Love(パワー・オブ・ラヴ)』の2番に行くとしようか。
まだまだ興味深い歌詞が続くよ。
ミュージックビデオの3分38秒からだね…
こんな出だしです。
First time you feel it, it might make you sad
Next time you feel it it might make you mad
最初に君は感じるだろう
それは悲しくなることだと
その次に君は感じるだろう
自分はオカシクなったのかと
もうわかっちゃった。
天使ガブリエルの「2つの発言」に対するマリアの反応のことね。
その通り。
いきなり目の前に現れた天使から「おめでとうございます。あなたは身籠りました」と言われて、マリアは動揺して悲しくなった…
なぜなら、その時マリアはバージンで婚約中の身…
初夜の前に他の誰かの子供を身籠ったことなど知られたら、夫ヨセフに離縁されて、石打ちの刑になってしまうからだ…
そして次に「それは神の子です」と言われて、さらなる衝撃を受けた…
そこで「なるほど。了解」と納得する方がオカシイですからね…
ヒューイ・ルイスの歌詞の通りだと思います。
そして歌詞は、こう続く。
よく注意して歌詞を考えてごらん…
But you'll be glad baby when you've found
That's the power makes the world go'round
注意して? 何の変哲もない感じだけど…
とりあえず女の子のことを初めて「ベイビー」って呼んだわね(笑)
あっ!違いますよ!
え?
「baby」が置かれてる場所です…
違う読み方が出来るじゃないですか…
んまあ!やられたわ…
そのまんまの歌詞じゃん…
But you'll be glad baby when you've found
That's the power makes the world go'round
だけどあなたは赤子を喜ばしく思うでしょう
その方こそが世界を動かす力だとわかった時に
そうなんだよね。
ちゃんと歌詞を読めば、すぐにわかることだったんだよ。
そしてサビが繰り返され、歌はCメロに進む…
They say that all in love is fair
Yeah, but you don't care
奴らは言う
愛のためなら何でもありだな、と
Yeah、だけど気にすることはない
ここでの「they」とは、「神の子」を認めない人たちのことだわ…
それをマリアに「気にするな」と男は言っている…
その通り。
ちなみに「Yeah」とか「Yah」は「神(ヤハウェ)」を指す。
もし「Yeah」の後に「sure」がついていれば、それはイエスの本当の名前「Yehoshua(イェホーシュア)」のことだ。
ジム・キャリーの映画『YES MAN(邦題:イエスマン ”YES”は人生のパスワード)』のネタですね…
中東系の人向けの…
そしてCメロは、こう続く。
But you know what to do
When it gets hold of you
And with a little help from above
You feel the power of love
Can you feel it ?
冷静になれば、何をすべきかわかるはず
上から手助けしてあげよう
あなたは「愛の力」を知る
どう?感じるかい?
問題の「上から手助け」ね…
これは「男が上になる正常位」のことではなくて…
本当に「上」からの「手」助け…
その通り。
Ah…
ヒューイ・ルイスは、エロいことを歌っているようで、全然そうじゃなかった…
本当に「愛の力」について歌っていたんですね…
桑田佳祐の歌と同じだよ。
エロいことを歌ってるふりして、本当は全然違うことを歌っている。
猥褻と言われた『クリといつまでも』の「クリ」も「クリストス」のことだから。
そうだったんですね…
ミルクボーイのオトンばりに誤解してました…
これで『The Power of Love』の深読みは終了。
映画のオープニング・シーンとこの歌の意味がわかれば、『BACK TO THE FUTURE』は「ほとんど」わかったも同然。
ほとんど?
まだ何か残ってるの?
そう。最後に重大な謎が1つ残っている。
これだよ。
このシーンは、もう深読みしたでしょ?
ルネ・マグリットとフラ・アンジェリコの『受胎告知』が元ネタになっていたって。
それは、『EARTH ANGEL(アース・エンジェル)』の演奏シーンで描かれることについてだ。
このシーンで重要なのは『EARTH ANGEL』が流れている間の出来事でしょ?
将来マーティの両親になるロレインとジョージがカップル成立になって、キスしてハッピーエンド。
まだ続きがある。それで「ミッション・コンプリート」ではない。
『Johnny B. Goode(ジョニー・B・グッド)』のこと?
そうだ。
あれはオマケというか観客サービスみたいなもんでしょ?
物語の本筋とは、何も関係ないわ。
バンドリーダーのマーヴィンが、従兄弟のチャック・ベリーに電話越しで「未来の曲」を聴かせてしまい、ちょっと歴史を変えちゃっただけですよね。
そうよ。チャック・ベリーが歴史にちょっと早く登場しちゃうだけのこと。
違う。
あの時すでに、チャック・ベリーは「チャック・ベリー」だった。
え?
あの「魅惑の深海パーティー」が行われたのは、1955年11月12日…
チャック・ベリーは、すでにメジャー・レーベルからデビューしており、革新的なギター奏法とパフォーマンスで人気を博していた…
5月にリリースされた『Maybellene』はビルボードR&Bチャートで1位も獲得し、白人優位の総合チャートでも5位に食い込み、人種を超えた若者たちの間で大ブームになっていたんだよ…
つまり…
マーティが披露した、あのチャック・ベリーのスタイルは…
すでにアメリカ中に知れ渡っていたと?
そういうこと。
チャックのいとこマーヴィンが「新しい音楽だ!」と興奮して電話する描写は、歴史的には正しくない。
すでにロックンロール・スター「チャック・ベリー」は確立されていたから。
そうなんだ…
ちなみに『Johnny B. Goode』が発売されるのは1958年なんだけど、それが早まったとしても特に問題は無い。
なぜならチャック・ベリーは『Johnny B. Goode』を発表する前に、ほとんど同じような曲を、いくつも発表しているから…
たとえば、ビートルズのカバーで有名な『Roll Over Beethoven(ロール・オーバー・ベートーヴェン)』や…
こちらも様々なアーティストにカバーされた名曲『Sweet Little Sixteen(スイート・リトル・シックスティーン)』など…
ん?
どうしたの?
『Sweet Little Sixteen』の歌詞です…
歌詞?
こっちの方が相応しくないですか?
あのシーンでマーティが最後に「おまけ」として演奏する曲として…
どういうこと?
だって、こんな歌詞なんですよ…
“Oh Mommy, Mommy
Please may I go
It’s such a sight to see
Somebody steal the show
Oh Daddy, Daddy
I beg of you
Whisper to Mommy
It’s alright with you"
ああ、ママ、ママ
僕を行かせて
どうしても行かなきゃいけない
あれは僕のショーなんだ
ああ、パパ、パパ
一生のお願い
ママの耳元で囁いてあげて
パパと一緒だから大丈夫だって
うっそ?マジで?
ラブラブになった両親を残して未来に帰るマーティにピッタリじゃん…
でしょ?
ふぉーっふぉっふぉ。
月夜さん、何がオカシイんですか?
目が洞穴のお主にしては、よう気付いた。
え?
月夜さんの言う通りだ。
この『Sweet Little Sixteen』の歌詞は、あの場面におけるマーティの状況や心境をドンピシャで表現している。
それなら、なぜ『Sweet Little Sixteen』を歌わなかったのでしょう?
背が低くてキュートな高校生マーティは、まさに「スウィート・リトル・シックスティーン」じゃないですか…
確かに。まるで16歳の頃のポール・サイモンみたい。
ちなみにドクはアート・ガーファンクルにクリソツじゃ。
おおっ!
うふふ。つながったわね(笑)
まあ、たまたまじゃろう。
そ、そうよね…
ポールも、アートとドクの毛も、たまたま…
こんなのはしょせん裏筋で、ここで扱うべき本筋ではないわ。
そうでした…
いま深読みすべきは、これ…
なぜ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の「魅惑の深海パーティー」で最後にマーティが歌ったのは…
歌詞がドンピシャの『Sweet Little Sixteen』ではなく…
『Johnny B. Goode』だったのか…
それには深い事情がある。
魅惑の深海どころじゃない、もっともっと深い理由が…
どういうことでしょう?
もしあの場面でマーティが『Sweet Little Sixteen』を歌ってしまったら…
タイムパラドックスどころか、自己矛盾に陥ってしまうからだ…
自己矛盾?
なにそれ?
歌詞の他の部分では主語が「she」になっているから?
そんなことは関係ない。
というか、そもそも「she」は男だ。
は?
この歌における「Sweet」で「Little」な「Sixteen」とは、女性ではなく男性のこと…
登場人物で本当に女性なのは「Mommy」だけだ。
な、何を言ってるの?
教官…
さすがにちょっと今回ばかりは…
どう考えても『Sweet Little Sixteen』は「ミーハーな女の子の歌」としか思えません…
膨大なブロマイドのコレクションが自慢で、アイドル歌手のコンサートに行くことを親にねだっている、どこにでもいる16歳の女の子の歌です…
そんな歌だったっけ?
ちゃんと歌詞を聴いてごらん。
チャック・ベリーは、そんなこと一言も歌っていないから…
そんな馬鹿な…
確かにそう歌っていたはず…
ふぉーっふぉっふぉ。
やはりまだまだ洞穴じゃ、お主は(笑)
ねえねえ岡江クン…
『Johnny B. Goode』の前に『Sweet Little Sixteen』のことを詳しく教えてよ…
「she」と歌われる「Sweet」で「Little」な「Sixteen」が「男」だなんて…
いったいこれはどういうことなの?
わかった。それでは解説しようか。
つづく
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