「”D”TRAIN」VISIONS OF JOHANNA(ジョアンナのヴィジョン)② ~『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
前回はコチラ
2019年9月19日
スナックふかよみ
そして、1番の最後のフレーズ…
And these visions of Johanna that conquer my mind
これらジョアンナのヴィジョンが僕の思考を支配する
あれ?
さっき「her lover」で使徒ヨハネは出て来ちゃったわよね…
はい…
そうしますと《ジョアンナ》とは…
いったい誰のことなのでしょうか?
歌詞をよく考えれば、わかるでしょ?
え?
ボブ・ディランは「these visions of Johanna」と言ってるの。
つまり…
1番で歌われたことの全てが、ジョハンナのヴィジョンということね…
語り手である《僕》の目に映る全てのコトは、ジョハンナのヴィジョン…
決して姿を見せることのないジョハンナが、予め構想していたもの…
そ、それじゃあ《VISIONS OF JOHANNA》とは…
《神の計画》という意味なのですか?
そういうこと。
《JOHANNA》から左右対称な部分《ANNA》を取ると《JOH》になる…
《JOH》とは《神ヤハウェ》という意味だ…
え? そうなんですか?
《ジョアンナ(JOHANNA)》の《ジョー(JOH)》は、《ジャー(JAH・JAR)》や《ヤー(YAH・YAR)》と同じです…
ヨハネという人名は、ヘブライ語の《ヨーハーナーン(Yohanan)》が大本なのですが、これは「Yahweh は恵み深い」を短縮したもの…
《ジョー(JOH)》は《ハレルヤー(HALLELUJAH)》の《ヤー(JAH)》と同じく「神の名」なのです…
じゃあ、あなたの名前《ジョー》も《神》って意味なの?
そうなりますね…
元々はヨハネの英語形《JOHN》ですから…
ちなみに、あたしの名前《柴門文代》はどういう意味かわかるかしら?
深読みして頂戴。
えーと…
《Simon》はヘブライ語で「耳を傾けよ」でしたよね…
そして《Yoh》は《神》だから…
つまり「神の言葉に耳を傾けよ」という意味ですか?
うふふ。その通り(笑)
文代△!
・・・・・
どうしたの、深読み名探偵さん?
次は2番でしょ?
あ、はい…
2番はこんなふうに始まる…
In the empty lot where the ladies play
blindman's bluff with the key chain
空き地では…
1番とは場面が切り替わるのね。
淑女たちがキーチェーンで目隠し鬼をする…
何のことかしら?
てかキーチェーンって何? ジャッキーチェーン?
key chain とは、キーホルダーのこと。
複数の鍵を束ねておくための道具だね。
キーホルダーで目隠し鬼するの?
意味わかんない。
2番の冒頭フレーズは、この人のことを言ってるんだよ。
イエスから渡された天国の門の鍵と、天国への入口である教会の鍵をもつ使徒ペトロ。
『教皇ペテロ』
ピーテル・パウル・ルーベンス
確かに複数の鍵だわ…
キーホルダーが必要ね…
でも目隠し鬼は?
ああ、わかった!
blindman's bluff(目隠し鬼・盲人ごっこ)とは…
ペトロがイエスに「ついていきます」と言ったくせに、逮捕後は「あんな人は知らない」と見て見ぬふりしたことですよ…
『ヨハネによる福音書』
13:37 ペテロはイエスに言った、「主よ、なぜ、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、命も捨てます」
13:38 イエスは答えられた、「わたしのために命を捨てると言うのか。よくよくあなたに言っておく。鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三度知らないと言うであろう」
ボブ・ディラン、キレッキレね…
まだまだこんなもんじゃない。
次もフレーズは、もっと興味深いよ…
And the all-night girls they whisper of
escapades out on the "D" train
オールナイト・ガールズたちは…
常軌を逸した"D"TRAINについて囁く…
はて? 何のことでしょう?
ヒントをあげよう。
《オールナイト・ガールズ》は3人組だ。
そして《"D"TRAIN》とは…
わかったわ!《"D"TRAIN》はDTのことでしょ!?
そして《オールナイト・ガールズ》はオールナイターズ、つまりオナッターズのこと!
マニー、ナニー、ハニーの3人組!
みうらじゅんじゃないんだから…
あっ!
もしや3人組の《オールナイト・ガールズ》とは…
最後の晩餐の後にイエスから「ずっと起きていなさい」と言われていた3人組のことでは…
その通り。
オリーブ山のゲッセマネの園でイエスが祈っている間、眠らないように言われていた、ペトロ、ヤコブ、ヨハネの3人のことだ。
『マルコによる福音書』
14:33 そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを一緒に連れて行かれたが、恐れおののき、また悩みはじめて、彼らに言われた、
14:34「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、目をさましていなさい」
14:37 それから、きてごらんになると、弟子たちが眠っていたので、ペテロに言われた、「シモンよ、眠っているのか、ひと時も目をさましていることができなかったのか。
14:38 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」
『ゲツセマネの祈り』
ジョルジョ・ヴァザーリ
なるほど…
確かにオールナイト・ガールズだわ…
サイドの二人は、ちょっとオッサンっぽいけど…
《”D” TRAIN》は《D列車》という意味ですよね?
『A列車で行こう』みたいに、B列車とかC列車とかD列車があるのかなあ…
だけど、それじゃあ歌詞の辻褄が合わないよね?
オールナイト・ガールズ、つまりペトロ・ヤコブ・ヨハネの3人が、《常軌を逸した”D” TRAIN》のことを囁くわけだ…
だけど、あの時代に鉄道なんて無かったでしょ?
意味が分からない。
実を言うと、《”D” TRAIN》の答えは、次のフレーズできちんと明かされているんだ。
We can hear the night watchman click his flashlight
夜警が照明をカチカチ鳴らす音が聴こえる
この《照明を持った夜警》が《”D”TRAIN》なんだよね…
ということは…
イエスを逮捕するためにやって来た官憲たち、ということですか?
その通り。
《train》という言葉は、そもそも《列になったもの》という意味だ。
列になった官憲(train)は、パチパチと音がする松明を片手に、イエスたちのところへやって来た…
《D》に先導されてね…
じゃあ《D》はユダのことなの?
そう。
《TRAIN》を引き連れてきた《D》は、裏切り者の使徒ユダのこと。
そんなのオカシイ!
ユダは英語で《Judas》だから《"J" TRAIN》でしょ!
ユダの裏切りといえば《D》なんだよ。
なぜなら…
じゃん。
いわゆるひとつの1101ですね、はい。
んもう! 邪魔しないでよジャイアンツ!
1101とか、わけわかめ!
うふふ。
《1101》とは《D》のこと…
呪われた数字《D》のことよね(笑)
ぽえーん。
どういう意味でしょうか?
全ての数を0と1だけで表す二進法の《1101》は…
全ての数を0~9の数字とアルファベットで表す十六進法や二十進法の《D》と同じ数…
《1101》も《D》も、十進法の《13》のことなんだ…
マジで…?
《13》といえば… 裏切りの不吉な数字…
まさにユダのこと…
『イスカリオテのユダ』
ジェームズ・ティソ
なんてこった…
《”D” TRAIN》に、そんな意味が隠されていたとは…
そういえば『D-TRAIN』って映画あったわよね?
ありましたね…
私の両親の故郷ピッツバーグが舞台になった映画…
邦題は『バッド・ブロマンス』でした…
《ブロマンス》って何ですか?
アンタそんなことも知らないの?
《bromance》は《brother間のromance》って意味!
あ、なるほど...
実はこの映画、ボブ・ディランの『VISIONS OF JOHANNA』が元ネタになっているんです…
だからジャック・ブラック演じる男が《”D” TRAIN》という渾名なんですよね…
え?そうなの?
それじゃあ、ジャック・ブラックは《ユダ》ってこと?
はい。
だから彼はピッツバーグ高校のOB会幹事グループの中で人望がなかったんです…
幹事を最後は辞めてしまうのも、12使徒から外されたユダそのものですね…
ちなみに彼の苗字は《Landsman》というのですが、これはユダの最期を表しています…
『使徒言行録(使徒行伝)』によると、ユダは裏切りの報酬で土地を買い、そこに落ちて死んでしまいました…
『使徒言行録』1:18
彼は不義の報酬で、ある地所を手に入れたが、そこへまっさかさまに落ちて、腹がまん中から引き裂け、はらわたがみな流れ出てしまった。
じゃ、じゃあ…
ジャック・ブラック演じる《”D”TRAIN》が、ジェームズ・マースデン演じるローレスと《一線》を超えてしまうのは…
ローレスのフルネームは《Oliver Lawless》というものでした…
《Oliver》は《オリーブの人》という意味ですし…
《Lawless》は『VISIONS OF JOHANNA』の《Louise》をもじったもの…
つまり、イエス・キリストが投影されたキャラクター…
マジで?
そして、あの2人が《一線を超えてしまう》ことが意味するものとは…
裏切りの口づけ…
『ユダの接吻』
ジョット・ディ・ボンドーネ
そういうことです…
この『D-TRAIN(バッド・ブロマンス)』という映画は、ボブ・ディランの『VISIONS OF JOHANNA』をドラマ化したものと言っていいでしょう…
にわかには信じられないわ…
『D-TRAIN(バッド・ブロマンス)』の脚本・監督を務めた Jarrad Paul(ジャレッド・ポール)は、聖書ネタが大好きなんだよ。
ジム・キャリーの『YES MAN』の脚本も書いてるくらいだ…
確か邦題は『イエスマン “YES”は人生のパスワード』だったわよね…
この映画、今思えば…
小説版『LIFE OF PI(邦題:パイの物語)』と同じように、《YES》という言葉がイエス・キリストのダジャレとして使われているっぽい気がします…
その通り。
だから色んな国の人と《YES》について会話するシーンがあるわけだね。
英語ではイエスのことを《イエス》ではなくて《ジーザス》と発音するから、外国人が必要だったんだ。
それで、中東系の女性に向かって、わざとらしく間延びさせて「Yeah~, sure~」と言っていたんですね…
ヘブライ語でイエスは「イェシュア(Yehoshuʿa)」だから…
何なのよコレ!
もう、わけわかめ!
うふふ。それじゃあ話を戻しましょうか。
2番の歌詞の本当に凄いところは、後半から…
この歌最大のトリックが隠されているのよね…
そうでしょ? 深読み名探偵さん。
ええ。
この歌最大のトリック?
なにそれ? 早く教えてよ岡江クン!
では話そうか。
『VISIONS OF JOHANNA』という歌に隠されている、最大のトリックを…
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?