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エピローグ第16話:チェーホフ『狩場の悲劇』で語られない秘密(前篇) 『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖


僕が推理するに…

彼女は「ある人物」の子を宿していた…

夫のある身でありながら…

え…?

オリガの父が狂ってしまったのは、それが原因に違いない…

そして前任者の予審判事の死も、きっと…

・・・・・

意味がわからない人は前回を未読の人ね。

まずはコチラからどうぞ。

ど、ど、どゆこと!?

オリガのオカンは、いったい「誰の子」を宿したの!?

伯爵だよ。

ええええ~~~~!?

じゃあなぜ伯爵はオリガや森番のこと知らなかったのさ!?

現伯爵ではない。先代の伯爵だよ。

つまり現伯爵の父にあたる人物だね。

そしてその先代伯爵と森番の妻の間に生まれたのが、オリガなんだ。

ハァ!?

つまり現伯爵とオリガは「異母兄妹」ということになる。

もちろん二人は気付いてないけどね…

マ、マ、マジで!?

『犬神家の一族』かよ…

そ、そんな…

この話は『スリー・ビルボード』とは全く関係ないんだけど、ちょっと話をしてもいいかな?

『狩場の悲劇』という物語を理解するうえで、非常に重要なポイントだと思うから…

どうぞどうぞ!

めっちゃ気になるから!

シカシ…

ナゼ ソノヨウナ スイリヲ…?

簡単なこと。

オリガはこんなことを語った…

「あたしの母は雷に打たれて死にましたの……新聞にも書かれたほどですのよ……母は野中を歩きながら、泣いていたんですって……この世の暮しがとても辛かったんです……だから神さまが憐れみをかけて、天上の電気で母を殺してくださったんですわ。(中略)雷や戦争で生命を落した人や、難産で死んだ人は、天国に行けるんですのよ……こんなこと、どの本にも書いてありませんけど、本当ですわ。母は天国にいるんです。あたし、そのうち自分も雷に打たれて、天国に行けるような、そんな気がしますの……あなたは教養がおありになるんでしょう?」

「ええ……」

「でしたら、笑ったりなさいませんわね……あたし、こんな風にして死にたくてなりませんの。(中略)カーメンナヤ・マギーラ[石の墓という意味の岩山]のいちばん天辺に立って、世間の人たちみんなに見えるように、この身を稲妻に打たせるんです……おそろしい雷がきて、それでおしまい……」

中央公論社版(訳:原卓也)より

石の墓がある岩山の天辺で、世間の人たちみんなに見られながら死にたいって…

イエス・キリストやんけ…

『磔刑図』アンドレア・マンテーニャ

オリガに「イエス」が投影されている以上、その母親には「マリア」が投影されていると考えるのが普通だろう。

となると…

オリガと父親は「血が繋がっていない」ことになる…

ああ!

前に「伯爵はイエスが投影されたキャラだ」と話したよね。

使徒ペテロ役である予審判事セルゲイ・ペトローウィチへの手紙で、伯爵はイエスになりきっていた。

この小説『狩場の悲劇』で「イエス役」が二人いるのは、二人が「異母兄妹」だからなんだよ。

でも「イエス」はひとりで十分…

その通り。

だから二人いる「イエス役」のうちのひとりは殺されてしまうんだ…

そして「あとがき」のラストシーンで予審判事セルゲイ・ペトローウィチは…

<続きはコチラ!>


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