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コーエン兄弟・徹底解剖

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2018年5月の記事一覧

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖30(最終回)「BARTON FIN”Q”」

やっほ~!やっと最終回だ! 「やっと」は可哀想やろ。 せめて「とうとう」とか「ついに」にしとけ。 前回を未読の人は、まずコチラからどうぞ… 第29話「The Life of the Mind」 『ウエストワールド』を引き合いに出しての解説は面白かったよ。 ドイツ語のアナグラムもな。 オッサン、何気に教養や洞察力があるのに、こんなアホなもん書いとるから損しとるんとちゃうか? 僕って「照れ屋さん」だから、まじめなこと書こうとしても、ついついこうなっちゃうんだよ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖29「The Life of the Mind」

さて、前回は「USOダンスパーティー」の解説だったね。あれは面白かった。 未読の方はコチラ! 第28回「Apocalypse USO」 さあ、いよいよ「炎の中年男チャーリー」の登場やな! それ違うでしょ(笑) こっち。 大乱闘となった「USOダンスパーティー」を脱出したバートンは、ホテルの自室へ戻るために6階の廊下を歩いていた。 すると誰もいないはずの部屋のドアが開いていて、中から男の声が聞こえてくる。 バートンのシナリオ『THE BURLYMAN』を朗読

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖28「ジョークの黙示録~Apocalypse USO」

さて、ロス市警の刑事の尋問が終わり、バートンは部屋に戻った。 前回を未読の方はコチラ! 第27回「カール・ムント」 しかし『バートン・フィンク』が、あの名作『羊たちの沈黙』をあそこまで意識して作られとったとはな。 だよね。僕も発見した時は驚いたよ。 さて、バートンは「オードリーの首」が入った箱をタイプライターの隣に置き、少し考える。 そして執筆を始めた。 なんで急に書けるようになったんだ? ロビーでの刑事二人との会話で「福音書」を書く準備が全て揃ったんだ。

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖27「カール・ムント、またの名をチャーリー・メドウズ」

さて、今回はロス市警の刑事二人とバートンの会話から解説していこう。 前回を未読の方はコチラ! 第26回『アナグラム』 しかし二人の刑事の名前がアナグラムになっとるっちゅうのは驚いたな。 よう気付くわホンマ。FBIの特殊犯罪専門捜査官も真っ青やで。 『羊たちの沈黙』じゃないんだから(笑) いや、『羊たちの沈黙』なんだよね。 ハァ!? 『バートン・フィンク』は『羊たちの沈黙』を、かなり意識して作られているんだよ。 せやけど、この2つは同じ年の公開やんけ。

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖26「アナグラム」

さて、今回は「ロス市警の刑事」のシーンからだね。 前回を未読の方はコチラ! 第25回「あんたらマンハッタンに何しはったん?」 あのシーンは、めっちゃ不吉な予感をさせるシーンやったな。 この日の朝リプニックが発した「ユダヤ人への侮辱発言」と、直前に露見した「LAでの出来事=聖書の内容」という衝撃的事実が、バートンの精神不安に拍車をかけたんだ。 だから新しい「妄想キャラ」として、あの「二人のロス市警刑事」が登場したというわけだね。 やっぱり刑事もバートンの妄想キャ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖25「あんたらマンハッタンに何しはったん?」

さて、いよいよ映画も大詰めだ。 今回の解説は「ギデオンズ聖書」と「ロス市警の刑事」の登場シーンだね。 前回を未読の方はコチラ! 第24回「BOX ~箱~」 前回紹介したチャーリーとバートンの会話シーンは、この映画についての「暴露大会」だった。 コーエン兄弟は「タネ明かし」になるジョークをこれでもかと連発させた。バートン・フィンクを演じるジョン・タトゥーロが噴き出しちゃうくらいに。 それでも気付かん人に向けた「究極のタネ明かし」が… 机の引き出しから出て来た「

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖24「箱」

さて、リプニック邸訪問の次のシーンを解説しようか。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第23回「Lower East Side」 ユダヤ人のリプニックが「我々の先祖は、ひとりの幼な子から教えられた」と言ったので、バートンの頭の中で妄想がさらに膨らみだした。 この「幼な子」という表現は『マタイによる福音書』第11章25節に対応しているんだね。 11:25 そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖23「Lower East Sideってどこ?」

さて、今回は「8時台」の解説だね。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第22回「7時台」 さあ、何が書いてあるんや! 『ローマ人への手紙』第8章には! まあ、そんなに焦りなさんな。 第8章は39節まであるんだけど、その全部が使われるわけではない。 「15~29節」が重要なんだね。 なんで特定できんねん? あ、そっか! ガイズラーのメモだ! その通り。 あの時刻と番地は「ネタに使われる範囲」を表していたんだね。 コーエン兄弟が「ここテストに出ます

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖22「7時台」

さて、今回は「7時59分」の解説からだね。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第21回「蚊」 もう無駄話ナシでガンガン進めようや。 OK。僕もそろそろ次の作品に移りたいと思ってたところだ。 noteで中断してるシリーズも、こっちに引っ越しして再開させなきゃいけないしね。 カズオ・イシグロ… クリストファー・ノーラン… ルネ・クレマン… 他にもまだあったような気がするな… しかしこれじゃあ、体がいくつあっても足りないね(笑) ようやるわホンマ。1円に

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖21「蚊」

さて、いよいよ「事件発生」だ。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第20回「洗面所と排水パイプ」 「洗面所=ゴルゴタの丘」っちゅうのには驚いたな。 あんな細かい仕掛けが施されていたなんて、発見した僕も正直ビックリしたね。 さて、話を進めようか。 翌朝バートンは蚊の飛ぶ音で目覚めた。 ベッドの上を飛び回っていた蚊は、バートンの隣に寝ているオードリーの背中にとまる。 LAに来てからというもの、ずっとバートンを悩ませてきた「犯人」が、その姿をようやく見せた…

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖20「洗面所と排水パイプ」

さて、多くの人が誤解している「洗面所と排水管」の秘密を解説するよ。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第19回「天使の誘惑」 大天使ガブリエルことオードリーには参ったな。まさかあの「手」に重要な意味があったとは… 何度も言うように、天才芸術家は無意味なことはしない。この当時のコーエン兄弟は本当にキレッキレだよね。 さて、問題の「洗面所の排水管」だ。 多くの人はコレを「女性の生殖器官」と結びつけている。 でもまあ仕方ないかな。 実際コーエン兄弟も「そうとれ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖19「天使の誘惑」

さて、今回はバートンの部屋621号室で巻き起こる大事件を解説するよ。 この映画の中で、最もコミカルで、最もスリリングなシーンだね。 そんなコミカルやったか、あの場面? 出来事はシリアスだけど、喋ってることは完全にコントなんだ。 だからバートンを演じてるジョン・タトゥーロも、わざと臭い芝居をしている。大根役者がやってるみたいに棒読みしたり、大袈裟な感情表現してみせたりね。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第18回「8時15分、MORAGA 829番地」 ま

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖18「8時15分、MORAGA 829番地」

さて今回は、プロデューサーのガイズラーが「ideas」と言いながら差し出したメモ「朝の8時15分、MORAGAの829番地」の秘密から行こうか。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第17回「死と復活」 「アイデア」って言いながら出しただけに、やっぱり脚本を書くアイデアなんやろな。 もちろん。 ところで「MORAGA」って何? ビバリーヒルズと並ぶロサンゼルスの超高級住宅地ベル・エアーにある地域の名前だよ。 ベル・エアー?聞いたことないな。 日本ではビバリ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖17「死と復活」

さて、作者であるコーエン兄弟自身による「ネタバレ」で話は進めやすくなったね。 前回でこの映画が、使徒パウロによる『ローマ人への手紙』をベースに、主人公バートン・フィンクが『マタイによる福音書』を書く物語だということが明らかにされた。 前回を未読の方はコチラ! 第16回「ネタバレ御免!」 しかしホテルの部屋番号が『ローマ人への手紙』の章節に対応しとるっちゅうのはオモロイよな。 作家としての魂を売ってしまったバートンの部屋「621号室」が、 6:21 その時あなた