見出し画像

初めて飼った犬との8年間

友人から犬を譲り受け、生後3カ月の頃に我が家にやってきた。
名前はそら。
事前に家族で話し合って、名前の候補を二つまで絞り、犬の顔を見て、決定した。
それから、「そら」と呼ぶようになった。

そらは我が家に来るまで、トイレトレーニングをやってなかったので、トイレシートを敷いても、全くそこで用を足さない。
「どうやったら、トイレシートで用をたしてくれるんだろう」
そらが寝るための小さなゲージはあったが、家の中を自由に歩き回れるようにしていた。
ある日、悲劇が起きた。
私が寝る時に2階に一緒についてくるので、寝室のドアの外にそらが寝られるベットを作ってあげた。
そらはドアを開けるたびにそのベットにいたので、一晩中そこで寝ていたんだなぁと思い込んでいた。
しかし、1階に降りると悲劇のはじまり…
こたつ布団が濡れていた…
「あれ?」
絨毯も濡れていた…
「もしかしてここでおしっこをしたのか…」
12月の寒い時にお風呂場で、こたつ布団と絨毯を洗って干した。
次の日また同じことが起きた。
同じ場所ではなかったが、こたつ布団と絨毯がまた濡れていた…
またお風呂場で洗って干した。
この繰り返しが1週間続き、疲れ切った。
そして、すぐにそらが他の部屋に行けないように夫に柵を作ってもらった。

そらを8畳のフローリングの部屋で過ごすようにした。
それでも、トイレシートの上で用を足せない…
なので、失敗したとき、顔をしかめて怒ってみた。
「ここはダメ」
それで、トイレシートのところに連れて行って、
「ここでしてね」と指でトントンとトイレシートを指さして言ってみた。
しかし、その数時間後、そらはまた床で用を足した…
「伝わってないなぁ」
次は用を足そうとした瞬間
「そこはダメ」と言って、トイレシートに連れて行った。
結局何がよかったか分からなかったが、根気よくやっているうちに、
トイレシートで用を足せるようにまでなった。
しかし一つ問題があった。
そらはトイレシートの上ではできるようになったが、少しでも濡れていると、次は床でしてしまう…
これだけはどうやっても無理だった。

ワクチンが終わり、散歩で外に行くことが増えた。
天気のいい日には庭で走り回れるように、外にも扉を作った。
体も大きくなり、お昼は外で、夜は家の中で寝るという生活をしていた。
そうしているうちに、芝生で用を足すので、私のストレスが少なくなった。

ある日夫が
「ウッドデッキには屋根もあるし、そこに小屋を作れば、そらは外でもいけるんじゃない?」と。
私は犬を飼ったことがなかったので、家の中で飼うものだと思い込んでいて、
「寝る時くらい家でいいんじゃない」
外はかわいそうだと思っていた。

その後事件が起きた。
家族で出かけてた日の出来事。
ひとりでお留守番していたそらは黒いゴムを挟んでいた場所を爪で削って壁に穴を開け、柵を壊した。そして、家中をうろうろして、2階の布団の上でおしっこを何枚もにして、絨毯に便をしていた…
それを見た瞬間、がっかりというか…
「もうしょうがないね」
そらを庭に出した。

そして、そらのウッドデッキでの生活が始まった。

最初は気が引ける部分もあったが、そらは家の中で生活するよりも、格段と元気になった。庭を走り回り、トイレも芝生でしていた。
そらが快適に過ごしているので、安心した。

夫が木を買ってきて、そらのために犬小屋をDIYして作った。中は暑くも寒くもならないように、断熱剤を入れて、一生懸命、工夫して作っていた。
丸一日かかってようやく完成。
しかし、そらは中に入ろうとしない。
宅配で届いた段ボールが大きくて、そらが入れそうだったので、「中に入っていいよ」と声かけしたら、すぐに入って気にいったらしく、犬小屋があるのに、段ボールで寝ている。
唯一小屋に入るときがあった。
それは体を洗うときだ。
水があまり好きじゃないのか、体を洗おうとシャンプーなどを用意しだすと、逃げ回って小屋の中に隠れる。
だからといって洗わないわけにはいかないので、「おいで」と何度も言うと、しぶしぶ中から出てくる。
洗っている最中は終始表情が固く、目が怒っている。
洗い終わって、体を拭いてやっと完成!
と思いきや、すぐに人工芝に走っていき、寝転び、すぐに体を汚す。
「やれやれ」
「洗った意味がないじゃん…」
こんな繰返し…

そらの犬小屋はウッドデッキに置いていて、毎日夜寝る前に、ウッドデッキと部屋の間のシャッターを人間の膝くらいの高さまで閉める。ある日、シャッターのレールの上に頭を置いて寝ていて、シャッターを下まで下げるわけではないので、そのままゆっくり閉めたら、音で逃げるだろうと思っていた私の予想外の動きをした。
そらはピクっともしない…
音が聞こえてないはずはない。
「私のことをどんだけ信用してるんだ」
私の膝くらいの高さまで下げたシャッターの下で何事もなかったように、すやすや寝ている。

そらは朝シャッターを開けると、中に飛び込んでくる。
基本的に散歩は私と夫をで行くのだけれど、私が行けなかった次の日はシャッターをあけても、飛び込んでこないどころか、私の方すら向いてくれない。カンカンとわざと音を鳴らしても、違う方向を向いている。
「散歩にいかなかったことに対して怒っている?」
このパターンは一度だけでなく、何度もある。
しかも、究極なのは私がドアの前にいるのに、家の中にいる夫をひたすら探して、私が前にいるから見えないと言わんばかりに、体を動かして、夫を待っている。
「散歩に行けなかった日はほぼ私に興味なし扱い」

そらはいくつかの日本語は理解しているように感じる。
「おいで」「ごはん」「散歩」
「よし」「待て」「ダメ」「伏せ」「お手」「おかわり」「おすわり」は完全に分かっていた。
毎回えさを食べさせる前にお手、おかわり、伏せ、ゴロン、立っち、舌をべぇーというセットをやらせているのだけれど、えさの種類によっても態度を変えてきた。器の中がドッグフードだと分かれば、お手、おかわりが雑で、適当に手をあげてきて、めんどくさそうにしてやろうとしない。
しかし、お肉とかパンとかヨーグルトだと、お座りのときから、しっぽを揺らして、早く食べたいとばかりに、進んで基本セットをやってくる。
ほんとよく分かっている。

夫が出張で、5 日くらい帰ってこない日があった。私がえさを用意して、散歩も連れて行った。1日目はひと通りのお世話が終わっても、ウッドデッキに座って夫の帰りを待っていた。
2日目になっても、1日目と同じように私がお世話をしても、夫の帰りを待っていた。
3日目になると、夫のことを諦めたのか、私のところに来て、ベタベタするようになった。
4日目、5日目も私にベタベタして、私の行動を常に見て、ついてくるようになっていた。
5日目の夜、ついに夫が家に帰ってきた。
そらは「キャッキャッ」と声を出し、ぐるぐる回って喜んだ。
その次の瞬間、私を全く見なくなった。
「この5日間の私とのことは忘れたのかいな」
思わず心の中で叫んだのだった…

そらがウッドデッキで、お腹を出して寝ている時に、私がドアを開けた。
そらは寝転がったままで、頭だけあげて
「なんか用ですか?」
という表情で私を見て、のぞいただけだと分かると、また頭をおろし、
またお腹を出して寝だした。
「おっさんみたいな態度だな…」
数分後、夫がドアを開けた。
すると、そらは体を起こして、夫のそばにやってきて、座った。
ここまでそらの態度が違うのか…

雨が降ってる日は気分が乗らないのか、段ボールの中から、動かない。誰かがうちの家の前の道を歩くと、必ず吠えるのだけれど、雨の日は自主的に休み模様。そらはほんと気まぐれ。

こんなやりとりをしているそらももうすぐ8歳になる。眉毛が白毛になってきている。
生活しているとあまり変化を感じないけれど、着実に年をとってきているんだなぁと。
そらがいる生活が当たり前になってる。
朝起きて、シャッターを開けると、ウッドデッキに必ずいるという日常。
そらに挨拶して、1日のスタートを切る。
そらが私のために何かをしてくれるわけではないけれど、いるだけでどこか安心。

いつまでもこの生活が続いてくれるといいな。


この記事が参加している募集

#我が家のペット自慢

15,715件

#ペットとの暮らし

18,596件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?