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歳時記を旅する26〔竹皮を脱ぐ〕後*たかんなの太さ勝りて親に添ふ

磯村 光生
(平成三年以前作、『花扇』)

中国三国時代の呉の政治家である孟宗の孝行談。
高齢になって病に伏せた母が、冬に好物の筍を食べたいと願った。
孟宗は竹林に向かったものの、筍は見当たるはずもなく、竹に寄り添って、天に向かい祈り涙し慨嘆していたところ、雪がとけ、辺り一面、筍が生えてきた。
孟宗はそれを持ち帰り、筍の汁物を母に食べさせたところ、病が癒え、天寿を全うすることができたのだという。(「二十四孝」『御伽草子(下)』岩波文庫)
 句は、親竹を慕う筍が、すでに親よりも太くなっているという。
頭を出した筍は、すべてが若竹に生長するわけではない。
早く親離れして、生長を祈るばかりである。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年五月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)


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