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句集紹介 星野昌彦『とびとび抄』 

『とびとび抄』 星野昌彦(景象 主宰)
二〇二二年 春夏秋冬叢書

 著者はこれまで昭和四十四年の第一句集「藁の国」から令和三年の「凡」まで、二十三冊の句集を出版している。合計句数は一万一千十六句に及ぶという。本書は、この中から〈とびとび〉に五百句を抄出している。
 
 大焚火して雪嶺のゆらめける        「藁の国」
 雁わたる塩壺に匙深く埋め        「四季存問」
 元旦や象は乾きしまま汚れ         「言語論」
 玄関に靴やら下駄やら三河万歳       「玄冬考」
 秋風や吸ふ時も鳴るハーモニカ      「花神の時」
 昼の月逝きし人から忘れられ        「虚空領」
 こがねむし死ぬ真似をして死んでゐる 「東海道即悠々」
 万緑や一息に抜く烏賊の腸         「帰去来」
 紙兜折る平成の新聞紙            「桃夭」

著者は愛知県豊橋市生まれ。俳歴によると昭和三十年に内藤吐天主宰「早蕨」同人になっている。句歴もまた六十七年に及ぶ。「私は、背後にあって、見えないはずの彼岸に向かって、今日もボートを漕ぎつづけている」のだという。

☆作者の句集『凡』の紹介記事です。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年十月号「句集紹介」)

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