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歳時記を旅する55〔きりぎりす〕前*離れたる眼と眼さびしききりぎりす

土生 重次
(平成四年作、『素足』)
元禄二年(一六八九)七月二十五日(陽暦九月八日)、芭蕉一行は加賀小松の多太神社に参拝する。
ここで斎藤別当実盛の遺品である甲冑などを拝観し、「むざんやな甲の下のきりぎりす」の句を残した。
兜の持ち主だった斎藤実盛は、源平合戦で平家の武将だった。倶利伽羅峠の合戦で敗れ、加賀の篠原で再び陣を取り戦ったが、木曾義仲軍の前に総崩れとなった。そんな中、実盛は老体(七十三歳)ながら奮闘したが討ち死にした。
句のキリギリス、離れた両眼は八方を見渡せそうである。オスは鳴いてメスを呼ぶのだから、一匹で鳴く姿は哀れ。
(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年十月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)


 






   


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