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歳時記を旅する 24〔雛の夜〕中*はや母の仕草に似たり雛の夜

佐野  聰

(平成十年作、『春日』)

雛人形の由来は、禊祓いという思想に始まった。
それが、児童の遊びであった「雛遊び」の人形と混同されて、女の子の成長を祝福する、という大人の「贈り物」に変化した。

徳川家光の長女の千代姫は、三歳で尾張徳川家に嫁いでいるが、七歳となる折に、諸老臣から千代姫に雛人形が捧げられたという記録がある。

以後、大奥では女の子が生まれるたびに雛人形が贈られるようになったという。

親の思いを受け継いだ娘は、大きくなったらさらにその子どもたちへ雛人形を贈り、思いが受け継がれていくものになった。

句の女の子、雛人形を贈る親の思いは伝わったかどうかはまだわからない。
けれど、娘の何気ない仕草の癖が、すでに母親から受け継がれていることに気付いた。

(岡田 耕)

 (俳句雑誌『風友』令和四年三月号 「風の軌跡―重次俳句の系譜―」)

写真/岡田耕
(享保雛)

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