化学って何だろう? その2
ちょっと難しい話。
化学の相手とするのは身の回りにある物質である。
これらは人間が直接触れたり、見たり、においを嗅いだりできる。
光ったり、色が変わったり、熱を発したりもする。
人間が直感的に認識し理解できる物質ともいえる。
化学では周期律表の元素にまず注目し、周期律表に出てくる元素の性質と反応性を理解する。
さらには、それらの元素の化学結合によって生成される化合物の性質と反応性を理解する。
元素と化合物の総称として物質といったりする。
ここで物質に関して化学と物理学ではニュアンスが異なる。
化学で注目する物質は先に触れたとおり周期律表の元素およびそれらの化学結合により生成される化合物である。
周期律表に登場する元素は多彩である。
それらの組合せからなる化合物はさらに多彩である。
原理原則だけでは到底説明がつかず、物質ごとに知識を積み上げることが必要となる。
実験による結果が重要となり、予想に反する結果も多い。
実験とは自然への主体的・能動的な働きかけに対する自然の声(応答)を聞くことでもある。
多彩性や多様性と否が応でも正面から向き合うことが必要となる。
多彩性や多様性に正面から向き合い、そうしたものを理解し制御できるようになるところに化学の独創性や新規性が発揮される。
化学は「Diversity の科学」といえる。
一方で、物理学ではより根源的な原子核や宇宙を構成する素粒子を物質として注目し、より合理的に理解したり説明が出来る基本的な原則や法則を見出そうとする。
新たな材料の発明に繋げるとしても、基本的な原則や法則から出発するのではなかろうか。
こんな感じで、物理学と化学とでは同じように物質を相手としながらも、考え方が異なる。
化学をベースに生命現象を理解しようとする分子生物学という分野がある。この分野では、生命現象を理解できる基本的な原則を見出し応用しようとする。
内容は異なるが、基本的な原則や法則を追うところは物理学との類似性がある。
シミュレーションの方法が物理学や分子生物学では有用な場合が多いが、化学ではシミュレーションの方法に改善の余地が大きいといった特徴もある。
自然科学の中で大きな位置づけの化学、物理学、生物学では考え方やアプローチが異なることが感じ取れる。
人類がその歴史の中で自然現象を理解し、テクノロジーとして生活に活かす方法として、対象により最適な考え方やアプローチを見出した結果であると考えることができる。
実際には、現在の基礎研究の現場でも企業での研究開発の現場でも、対象とする物質や現象に最適となるように、各々の考え方やアプローチを組み合わせて展開している。
ノーベル賞の定義が、物理学、化学、生物学(生理学・医学)のそれぞれの特徴を端的に説明しているように思えるので、次に引用して記す。
「改良(improvement)」が化学の独創性や新規性に重要であると理解できる。
多彩性・多様性へ向き合って取組むことが化学においては、やはり重要と思われる。
The Nobel Prize in Physics(ノーベル物理学賞)
物理学の分野で最も重要な発見、発明をした人
“The said interest shall be divided into five equal parts, which shall be apportioned as follows: /- – -/ one part to the person who shall have made the most important discovery or invention within the field of physics …” (Excerpt from the will of Alfred Nobel)
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/
THE NOBEL PRIZE IN CHEMISTRY(ノーベル化学賞)
化学の分野で最も重要な発見、改良を成し遂げた人
“The said interest shall be divided into five equal parts, which shall be apportioned as follows: /- – -/ one part to the person who shall have made the most important chemical discovery or improvement…” (Excerpt from the will of Alfred Nobel.)
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/
The Nobel Prize in Physiology or Medicine(生理学・医学賞)
生理学、医学の分野で最も重要な発見を行った人
“The said interest shall be divided into five equal parts, which shall be apportioned as follows: /- – -/ one part to the person who shall have made the most important discovery within the domain of physiology or medicine …” (Excerpt from the will of Alfred Nobel)
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/