見出し画像

古本で買った源氏鶏太の前の持ち主の行動を考える日常系ミステリ(大噓)

源氏鶏太を読む面白さ、というのは改めてどこかに書いてみたいと思っているが、それとは別に、源氏鶏太を買う面白さ、というものがある。そもそも源氏鶏太に関心を持っている人などほとんどいないらしい昨今、そんな面白さを説いたところでどうしようもないのだが、面白いのだから仕方がない。せめていわゆる「日常の謎」のテイストで紹介して、『氷菓』の折木奉太郎くんに憧れている層の需要を惹起できればと思うが、それにしたってことは源氏鶏太だからいささか心許ない。ただ日常の謎といえばいちおう日常の謎になるであろう、そして現実のわが身が出合ったとある「問題」がちゃんとあって、これから説明していくので、どうか興味のある人は解いてほしい。答えがわからなくて困っているのだ。

(1)そもそも源氏鶏太って誰なんだ問題、そしてとある古本の「謎」の書き込み

ここまで読んで源氏鶏太を知らないのにまだググっていない怠惰な読者のために簡単に説明しておくと、源氏鶏太というのは戦後日本の復興期・高度経済成長期に絶大な人気を博した大衆作家で、サラリーマン小説の元祖みたいな人である。「半沢直樹」の二度目のブームが来ているので、もしかしたら何かの間違いで源氏鶏太のリバイバルブームでもこないかとかねがね思っているのだが、やはり源氏鶏太なのでそんなものはくるはずもなく、愛読者の私はせいぜい「半沢直樹」を見ながら「それ六十年前に源氏鶏太がやってるからな」と悪態をつくばかりである。そもそも大々的に三浦雅士が「逆襲」を宣言した石坂洋次郎だって、逆襲がかなって読者を得ている様子がいっこうに伝わってこないのだからどうしようもない。昭和のラブコメとかいって獅子文六が何年か前にあれだあけ売れたのが不思議なくらいなのである。

お恥ずかしながら――これはもう本当に恥ずかしいことなのだが――私は何を間違ったのか数百冊はあるらしい著作(レーベル違い含む)のコンプリートを目論んで源氏鶏太のコレクションを始めてしまった愚かしい人間で、同好の士とヤフオクで競合することがないのは助かるとしても、それにしても孤独な営みである。源氏鶏太を見かけると旅行中の古書店だろうが仕事の休憩中に見ていたヤフオクだろうがかならず買うのは並大抵の精神ではやってられない。私と入れ違いで源氏鶏太のコレクターを引退したとある人物には「頑張りすぎるとつかれます」的な忠告も受けたりして、その通りなのはよくよく理解している今日このごろではあるが、それにしたってもう全著作の半分くらいは集めてしまったので、いまさらやめられるものではないから困る。おまけにもっと困るのは、源氏鶏太の作品はもはやぜんぜん面白くないのに、源氏鶏太を読んだり、あるいは作品を入手したりする行為そのものは、めっぽう面白いということである。

どういうことかというと、こういうことである。

たとえば今日、古書店に注文していた六冊の源氏鶏太の本が届いた。届いて、開けて検品するわけだが、これがもう面白い。この六冊というのは田舎の古書店の目録で見て買ったのだが、田舎の古書店に源氏鶏太が複数冊ある場合、特に文庫ではなく現在の流通数が少ない新書や単行本であれば、おそらく同じ人物が売却したものである可能性が高い。前の持ち主に敬意を表し、かつ、本の履歴を愛するために、こういうのはかぶりが出たとしても全部買っておく。で、届いた品物を眺めていたら、最終ページの余白にこういう書き込みがあった。

『奥様多忙』(昭和三二年三月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●70 21 3/19 (70)
『坊っちゃん社員』(昭和三三年六月、ロマンブックス、定価一五〇円)
→451017 ●●90 (90)
『青い果実』(昭和三三年一一月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●60 (60)
『見事な娘』(昭和三四年二月、ロマンブックス、定価一七〇円)
→451017 ●●90 5/11 (90)
『青空娘』(昭和四一年一〇月、ロマンブックス、定価二一〇円)
→451111 ●●140 (140)
『火の誘惑』(昭和四四年五月、東方社、定価三〇〇円)
→451017 ●●150 (150)

各項目の一行目が書誌情報、二行目の矢印が書き込みである。発行日が若い順にとりあえず並べてみた。ロマンブックスというのは講談社が出していた新書の小説レーベルで、東方社はユーモア小説をたくさん出していた版元。なお書誌情報の和暦と月は重刷の数字で、初版の年月日は煩雑になるので省いた。書き込みのうち六桁の数字は日付印である。カッコ内の数字は古書店が書いた価格と思しく、持ち主の書き入れとは筆跡が異なる。「●●」としたのは判読不能字で、これについては書き込みの様子がわかりやすいように特徴的な『奥様多忙』と『見事な娘』を写メって載せておこう。

源氏鶏太①

源氏鶏太②

上で「●●」と置いてみたのは、日付印と手書きの数字の間に二文字なにやら書き込まれている箇所であり、あいにくこれが甘く崩されていて判読できない。「一字」とも読めるが、意味が通らない。手書きの数字が古書店の価格と一致しているので、横棒はハイフンで、その横は「定価」の「定」だろうか。それにしたって古本なのだから定価というのはおかしい。

(2)とりあえず第一の持ち主を想像するの巻

些末なことなのはわかっているのだが、どうもこういうのが気になって、つらつらと考えてしまう。こういうのを詰めてゆくことで、前の持ち主がどんなふうにこの本を買い、読んだのかを想像することができ、ひいては読者論の観点から源氏鶏太をとらえなおすことができるのである。「●●」の箇所はちょっとどうしようもないから、ほかにもこの書き込みから考えうることがらや疑問点をつらつらと羅列しておこう。自明と思われることもとりあえず挙げていく。

まず繰り返しになるが、この六冊は同じ古本屋で売られていたらしい。値段の書き込みの位置や筆跡、筆記具が同一と思しいからである。ロマンブックスの五冊は、それぞれ重刷だが、重刷の時期が昭和三二年三月から昭和四一年一〇月とおよそ十年の幅がある。この五冊が同じ持ち主によって売られたのかどうかというのは有力な根拠がないが、同じ古本屋で同じレーベルの同じ著者が並んでいたからには、まあ、同一人物と考えてよいのではないか。このころ源氏鶏太の本は無数にあったから、わざわざロマンブックスでそろえていないとほかの判型やレーベルが混じるような気がするのだ。第三次文庫ブームはまだ起こっておらず、源氏鶏太の没後しばらくまで鶏太作品を新刊で維持することとなった講談社文庫や集英社文庫はまだ出ていないが、新潮文庫や角川文庫はもうあるし、それに各社がそれぞれに新書や単行本で源氏鶏太を出していた時分である。

となると、一つだけ版元が違う『火の誘惑』の持ち主がほかの五冊と同じ持ち主に売られたかはちょっとなんともいえない。牽強付会にいえば、文庫や単行本ではなく新書なので、同じかも、みたいな感じではある。ロマンブックスでは一番新しい『青空娘』が昭和四一年で、東方社の『火の誘惑』が昭和四四年だから、間が三年空いている。ロマンブックスの両端がおよそ十年あったのと合わせて考えるに、このころの源氏鶏太なんてジャンジャカ刷っていたから、一度に買ったにしては数字が開きすぎていて(ホントはこういうのは、間を埋める時期に重刷された別の本を持ってこないといえないんですけどね)、だから愛読者がバラバラの時期に買い集めていったものなのではないだろうか。そもそも同じ人物が売ったという確たる証拠はないんですが、コレクターの勘です。

で、昭和四四年五月から翌年秋までには手放されている、ということになる。それは、二人目の持ち主の日付印からわかる。これは和暦の数字と思しく、だから二人目の持ち主は昭和四五年の一〇月七日と一一月一一日にこれらを求めた、ということだ。一人目の持ち主に何があったのだろうか。『火の誘惑』がおそろしくつまらなくて冷めてしまったのだろうか。四五年に突然作風がオカルト路線に変わったという噂(事実)を仄聞してキモくなってしまったのであろうか。会社で冷や飯を食わされて源氏鶏太なんて読んじゃいられなくなったのだろうか。引っ越しにあたってしょーもない本は置いてゆくことにしたのだろうか。いまとなってはわからないことである。

古書の値付けも興味深い。昭和四四年か四五年の値付けということになるが、どれも基本的には定価の半額となっていて、これはほぼ新刊である『火の誘惑』でも変わらない。しかしそれよりも古い『青空娘』だけが定価の約七掛けで割高。レーベルでみてもほかのロマンブックスは半額である。最新の『火の誘惑』の状態がとくに悪いということでもなさそうだし(現品を見ても折れ目や日焼けなどはない)、いったいなんなのだろうか。この六冊の中では唯一、著者近影が入っているというのが特徴だが、著者近影が古書価に関係するという話は聞いたことがない。

(3)第二の持ち主の行動を整理するうち、最初の推理のくだらない誤謬に気づく編

ここまではまあいい。たいしたことではない(源氏鶏太でたいしたことある話は、そもそもあまりないのだけれど)。問題は、二人目の持ち主の書き込みである。さっきは本の発行年月順に並べてみたが、今度は二人目の持ち主の日付印順に並べてみる。

『坊っちゃん社員』(昭和三三年六月、ロマンブックス、定価一五〇円)
→451017 ●●90 (90)
『見事な娘』(昭和三四年二月、ロマンブックス、定価一七〇円)
→451017 ●●90 5/11 (90)
『火の誘惑』(昭和四四年五月、東方社、定価三〇〇円)
→451017 ●●150 (150)
『奥様多忙』(昭和三二年三月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●70 21 3/19 (70)
『青い果実』(昭和三三年一一月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●60 (60)
『青空娘』(昭和四一年一〇月、ロマンブックス、定価二一〇円)
→451111 ●●140 (140)

さっきから日付印が購入日であることを自明に語っているが、まあこれは間違いないだろう。二人目の持ち主は、一度古本屋で源氏鶏太をまとめて三冊買ったあと、およそ一か月後に同じ店でまた三冊買い足している。まだ源氏鶏太が面白かったころの話である。で、並べなおしてみて気がついたが、一番新しくてかつ唯一版元のちがう『火の誘惑』は、一回目の購入分に入っている。いちばん新しいものをとりあえず読むというのはよくあることだ(厳密には東方社から出たのが前年なだけで、初出はさかのぼって昭和二二年)。となると、ほかの『坊ちゃん社員』と『見事な娘』はなぜ買ったのだろう? そして一か月後にこの二人目の持ち主は、なぜまた源氏鶏太を読もうと思い、『奥様多忙』『青い果実』『青空娘』を買おうと思ったのだろう?

ここまで考えて、私はある可能性を見落としていたことに気がついた。じつはこれまでの文章には自分でも気づかない伏線が張ってあったのである。それは「源氏鶏太を見かけると旅行中の古書店だろうが仕事の休憩中に見ていたヤフオクだろうがかならず買う」と「かぶりが出たとしても全部買っておく」という箇所で、なんとなれば、私は源氏鶏太の本を古書店で見かけたら全部買うが、普通の人は源氏鶏太の本を見かけても全部は買わないのである。なにせ当時は源氏鶏太様様の時代で、これまた自分で先に書いたことだが、源氏鶏太の本はそれはもうたくさん出ていたのである。とすれば、一人目の持ち主のプロファイリングは誤謬を犯している。一人目の持ち主は十数年の間に六冊しか源氏鶏太を買っていなかったのではなく、もっとたくさん買っていて、それを一度に手放したのである。そして二人目の持ち主は、そのなかから三冊を選んで購入し、面白かったので、また三冊を買い足したのだ。

なぜこの推理を思いついたかというと、二回目の購入分である三冊の主人公がみな女性だからである。源氏鶏太というとサラリーマンが主人公というイメージがこびりついており、じっさいそういうのが過半数なのだが、一方では女性誌や芸能誌にも絶えず連載を持っており、女性が主人公の作品があるのである。鶏太作品における女性主人公の割合というのは計算したことがないが、意外と多くて、五分五分はいいすぎにしても三、四割くらいはあるのではないだろうか。

だからといって、二回目の購入分三冊がみな女性主人公だったのはたまたまではなかろう。ものごとには必ず理由がある。それは一回目の購入分のうち、女性主人公モノが面白かったから(逆にいえば、男性主人公モノがつまらなかったから)、と考えるのが自然だろう。六冊の主人公の設定は次の通り。

『坊っちゃん社員』→サラリーマン
『見事な娘』→未婚女性
『火の誘惑』→未婚女性
『奥様多忙』→既婚女性
『青い果実』→未婚女性
『青空娘』→未婚女性

源氏鶏太といえばサラーリマン小説なのに、こういう買い方をしているからには、おそらく二人目の持ち主は女性(むろん、男性だって読むが、源氏鶏太は連載誌によって主人公の設定を読者層に合わせていたし、時代的には読者の棲み分けはかなり強くあっただろうと思う。ただし、あくまで、おそらく、という程度である)ではないかと思われる。最初にとりあえず適当に気になったものを購入し、家に帰って読んだら、女性主人公モノが面白かったので、読み終えたあと同じ系統のものをまた買った―これが真相なのではないだろうか。そして、なればこそ、この古本屋にはほかにも源氏鶏太の本がまだあったはずだ、と思うのである。『坊っちゃん社員』が混じっているからであり、そう仮定すれば、六冊の発行日に微妙なブランクがあることを説明できるからである。

(4)最後に残ってしまった「謎」の段(解答編のなき出題編)

ここまで読んだ読者諸賢はとっくにお気づきのことと思うが、まだ触れていない謎が一つ残っている。それは『見事な娘』と『奥様多忙』にのみ書き込まれている「5/11」「21 3/19」という数字の意味だ。先の写真を見ていただければわかるとおり、『奥様多忙』の「21」は「3/19」の上に位置する。

『坊っちゃん社員』(昭和三三年六月、ロマンブックス、定価一五〇円)
→451017 ●●90 (90)
『見事な娘』(昭和三四年二月、ロマンブックス、定価一七〇円)
→451017 ●●90 5/11 (90)
『火の誘惑』(昭和四四年五月、東方社、定価三〇〇円)
→451017 ●●150 (150)
『奥様多忙』(昭和三二年三月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●70 21 3/19 (70)
『青い果実』(昭和三三年一一月、ロマンブックス、定価一二〇円)
→451111 ●●60 (60)
『青空娘』(昭和四一年一〇月、ロマンブックス、定価二一〇円)
→451111 ●●140 (140)

これがわからなくて、困りに困っている。わかったって何かの得になるという性質のものではもちろんないが、気になって仕方がない。もしかしたら源氏鶏太を読むという行為の深淵に触れるヒントかもしれないし。

括線で数字を分けているからにはおそらくは日付か、または何かの分数である。まずは読了日かもしれないと思った。しかしそれだと全部に書いてあるのが普通である。積読したあと未読のまま手放したのかもしれないが、一か月後に同じ作者を買い足していること、そしてそれぞれの購入回分に一冊だけ書き入れていることを見ると、三冊買っては一冊読むというのを繰り返したことになり、これはちょっとおかしい。それにもうひとつ、『奥様多忙』の「21」が説明できない。「21」というのを仮に和暦と考えると、源氏鶏太のデビューは昭和二二年だから一切絡んでこない。とすれば日付ではなく何かの分数と考えるのが妥当なのだが、いったいなんなのか……。一度に購入した本のうちの何冊目か、という符号かもしれないが、それにしたってこの二冊にあってほかの四冊にない理由がわからないし、「21」も説明できない。なんにせよ「全部にあるわけではない」ということと「21」の存在がネックになって、どういう推理をしても壁にあたってしまう。

そもそもこの鉛筆書きの文字を二番目の持ち主が書き入れたという前提が間違っているのだろうか? ただこの筆跡は判読不能字の「●●」とそれに続く購入価格の筆跡と似ているように思う。筆記具が違うので、購入後しばらくたった別日になんらかの理由によって書き入れられているはずだ。二番目の持ち主が購入した古書店の店員の書き入れの可能性もあるが、筆跡が異なるうえ、このような数字を書き入れる事例をほかの古書で見たことがない。

この六冊が第二の持ち主から、私が利用した某県の古書店に売られて私が入手するまでにまた別の人物が所有していた可能性もない。なぜならば値札のはがし跡や値段の書き入れの消し跡が発見できないからだ。帯の形で値段がついていた可能性はあるが、そんなたいそうなことをするような稀覯本ではない。したがって第三の持ち主は私である。私が利用した古書店が何らかの書き入れをした可能性はあるが、先にいったように古書店の書き入れとしては見たことがない種類である。入荷日だとしたら平成21年の「21」の可能性もあるが、二度にわけて入荷したことになり、それはおかしい。

考えても考えても、書き入れの意味がわからないのである。こうなったら読んでくれる人がいるかもわからないがネットに投げて探偵の登場を待つしかない。どうかよろしくお願いします。わかった人はコメント欄かTwitter(@ojiro_morishima)のDMまでお願いします。

(5)第三の持ち主のしまらないカーテンコール

それにしても、こういうことに頭を使うことになんの意味があるかというと、それはもちろんこういうのを考えるのがちょっと面白いということもあるのだけれど、それ以上に、源氏鶏太をどんな人がどんなふうに読んだのかを探ることに意味があるからだ。源氏鶏太はいまでは忘れられた作家で、実際、もうアウトな昭和の価値観でゴリゴリに書かれているから、読んでいるのもしんどい。けれどもここまで心ひかれてしまうのは、当時これを面白がる読者がたくさんいて、彼らが何を面白がっているのかを考えること、あるいはいまの私たちが読んでなんで面白くないのかを考えることは、源氏鶏太が生きた戦後から昭和末期までの時代がいったいどのようなものだったのかを手探りで、自分の頭で考えてゆくことにほかならないからだ。

第二の持ち主は、いまどこで何をしているだろうか。昭和四〇年代後半に源氏鶏太の女性主人公モノを面白がって、一回買ったあともすぐにまた古本屋に走ったその人物は、いま存命ならば若くとも七〇代で、あるいはもっと上だろう。いまになって古本屋に売ったということは、普段は本を売る習慣がなく、ものもちのいいひとだった可能性が高い。そういう人が老後に若いころの本を売るのは、昨今の断捨離ばやりか、あるいは終活とか遺品整理なのではないか、と考えるのは無防備であれ決して見当はずれではないだろう。むろんこれは安易な推測である。いまいえるのは、昭和四五年に古本で源氏鶏太の女性主人公モノを買って、五〇年後に売った人がいるということだけだ。源氏鶏太は、そんな人たちに読まれたということだ。古本の書き入れから前の持ち主の行動を推理することは、こういうわけで、源氏鶏太とは誰か、を考えるいとなみにほかならないのである。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

524,761件

#習慣にしていること

130,458件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?