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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年6月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第592話

 ドアをできるだけ静かに開けたのに、そこにいた全員が僕に気づいて振り返り、時が止まったよ…

吉村うにうに
10か月前
3

水深800メートルのシューベルト|第591話

 廊下の奥に行くにつれ、時折「ピー!」と鳴るけたたましい音が大きくなった。その音はすぐに…

吉村うにうに
10か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第590話

  (33)  闇にライトアップされたひび割れたコンクリート造りの病院が見えてきた。僕が…

吉村うにうに
10か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第589話

「あなたの養母であるオリビア・ハリスさんのことで……」  電話の向こうの声は急に弱々しい…

吉村うにうに
10か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第588話

 冷蔵庫から、セブンアップのボトルを取り出して、コップに注いだ。カラカラに乾いた喉を液体…

吉村うにうに
10か月前
3

水深800メートルのシューベルト|第587話

 鍵が閉まったままだということがわかると、僕は安心して曲がったドアレバーを押し、部屋に入…

吉村うにうに
10か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第586話

 誰かがここに来て、嫌がらせか悪戯をしていったんだ。そう思うと、背後にぞわっとするものが湧き上がり思わず背筋が伸びた。部屋の中に入るのが恐ろしくなってきた。部屋の中も荒らされているかもしれないし、もしかして犯人が待ち伏せしているかもしれない。  僕は警察に電話をしようかと思ったが、まだ部屋を見ていないのにドアの状態だけで警察が来てくれるとは思えなかった。それにすぐ、あの髭をピンと張ったすまし顔の警官の顔が浮かんで、嫌になった。だったら、ナージフさんに……、そう考えたが、彼に

水深800メートルのシューベルト|第585話

 お婆ちゃんはもう仕事に行ったはず。でも、どのみち明日の朝には謝って事情を説明しなくちゃ…

吉村うにうに
11か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第584話

そして紙に何か図形を書き込みながら、ぶつくさと呟いていた。しばらくすると、彼は目を上げて…

吉村うにうに
11か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第583話

「小さい時に会っているんです。彼女、前にアパートに行った時、顔に傷がありました。昔、彼女…

吉村うにうに
11か月前
3

水深800メートルのシューベルト|第582話

「はあ? 何を言っているんだ? お前、俺の親切を無駄にする気か?」  ナージフさんは怒っ…

吉村うにうに
11か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第581話

「おい、助けてやれよ、こいつは言われたまま運んだだけだ」  アラブ系の男は立ったまま、背…

吉村うにうに
11か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第580話

 僕が下を向いたままでいると、ナージフさんが庇ってくれた。 「この子は、親に捨てられたん…

吉村うにうに
11か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第579話

 ラスウェル名乗る、青くて皺ひとつないスーツを着た男は、弁護士だと紹介されていた。彼は、僕に、手短に起きた出来事を正直に語る様に告げた。  僕の話を聞いている間、彼はスーツの袖のボタンを触ったり、ネクタイの結び目を手で確認したりしていた。僕の話など、ピカピカのスーツより価値が無いのだと、悲しい気持ちでいると、彼は手のひらを向けて、話を止めた。 「大体わかった。海軍の紹介でここに来たけれど、正直、こんなガキのギャングごっこをしている奴の弁護なぞ、気が進まないね」