見出し画像

水深800メートルのシューベルト|第581話

「おい、助けてやれよ、こいつは言われたまま運んだだけだ」
 アラブ系の男は立ったまま、背中を曲げて弁護士の鋭い目を覗き込むようにしていた。


「誰も引き受けないとは言っていない。気は進まないが、海軍さんは大事な客だからな」
 ラスウェルさんは、睨むような目で相手を見返した。


「助かるよ。頼んだぜ『無罪請負人』。アシェル、彼は優秀だから安心していいぞ」
 ナージフさんは僕の肩にポンと手を置いた。


「あの……、ラスウェルさん……。僕は別に公選の弁護士でもいいんで……。メリンダを助けてやってくれませんか? 僕、海軍に入りますので」
 直感で、この人ならメリンダの罪をうんと軽くできる、そう思った。

     第580話へ戻る 第582話へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?