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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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水深800メートルのシューベルト|第1話

       第一部        (1)  ドンッ!   ロバートに胸ぐらを掴まれ、居住…

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水深800メートルのシューベルト|第892話

「今日は、虫の居所が悪いんだってさ」  そう言うと、彼は肩をすくめた。 「おいおい、今日…

吉村うにうに
5時間前
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水深800メートルのシューベルト|第891話

「私、アシェル君の上官を務めております」  彼はまじめな顔つきで、叔母さんに敬礼をしてみ…

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水深800メートルのシューベルト|第890話

 曖昧に笑っていると、叔母さんは、僕の袖を引き、車を停めて降りて来たセペタに訊かれないよ…

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水深800メートルのシューベルト|第889話

「おかえりなさい。ごめんなさいね、あなたの愛しい奥さんが迎えに来なくて。誘ったんだけど」…

4

水深800メートルのシューベルト|第888話

アパートメントに続く舗装を入れた道は狭く曲がりくねっていて遠回りだと言って、彼はいつも公…

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水深800メートルのシューベルト|第887話

   セペタの薄い黄色の古いオープンカーであるキャディラックは、いつもエンジンの音がプスプスと止まりそうな音を出しているので、しょっちゅうアクセルを踏んでいないといけないらしく、その度に上下左右に揺れて、乗っていると胃の底から食べたものを戻しそうになる。艦内の方が心安らぐくらいだ。僕はタクシーに乗って帰ってもいいのだが、彼は僕の妻に興味があるらしく――結婚していてもう二人も子どもがいることを口にして以来――是非アシェルと生活することを選んだ変わり者の女からいきさつを訊いてみた

水深800メートルのシューベルト|第886話

     (45)  水に落とされることもなく、大きな失敗をすることもなく、上陸許可を受…

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水深800メートルのシューベルト|第885話

 ハッチから頭を引っ込める最後の瞬間、新鮮な空気を目一杯肺に入れた。塩分混じりの湿気を含…

5

水深800メートルのシューベルト|第884話

自分の適性検査の結果は知らないが、自分が艦長の立場だったら、すぐに過換気を起こし、ドジば…

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水深800メートルのシューベルト|第883話

(ゲイルさんは)苦々しい顔をしていたが、本気で叱っているような表情ではなかった。僕を原子…

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水深800メートルのシューベルト|第882話

 気がつくと、ハッチ周辺に固まっていた水兵たちはあらかた艦内に戻り、ゲイルさんは、僕以外…

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水深800メートルのシューベルト|第881話

「す、すみません」  僕は怖くなって咄嗟に謝り、電池を外そうとしたが、彼はピアノを取り上…

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水深800メートルのシューベルト|第880話

「そうか……あいつか。艦内でコンサートを開いた男は」 「演習で良かったぜ」 「軍医は、あいつの頭に何か注射した方がいいのでは?」  ここかしこで嘲りの声がはっきり聞こえてくると、居たたまれなくなった。  潜水艦では、私物の持ち込みは制限される。僕は小さい時から安定剤のように寄り添ってくれたピアノを――鍵盤が固く、黄色みがかっていたが――艦内でも持ち込みたかった。音を出さないという注意を受けたうえで、許可されたが、以前電池を外し忘れて、魚雷発射管で休憩中にうっかり音を出してし