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水深800メートルのシューベルト|第591話

 廊下の奥に行くにつれ、時折「ピー!」と鳴るけたたましい音が大きくなった。その音はすぐに消えていが、消えても少し経つと再び鳴る。その繰り返しだった。


 警官が案内してくれた、廊下の一番奥のお婆ちゃんがいるという部屋に着くと、さっき見かけたのと同じ型の救急カート、銀のトレーや薬の載った台車、それらがベッドの脇に乱雑に置かれ、その隙間を埋めるように何人かの半袖シャツ姿の人たちが集まっていた。そのうちの一人は、ベッドの上に膝立ちでお婆ちゃんの上で何かをしていた。それは心臓マッサージだとすぐにわかった。

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