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水深800メートルのシューベルト|第579話

 ラスウェル名乗る、青くて皺ひとつないスーツを着た男は、弁護士だと紹介されていた。彼は、僕に、手短に起きた出来事を正直に語る様に告げた。


 僕の話を聞いている間、彼はスーツの袖のボタンを触ったり、ネクタイの結び目を手で確認したりしていた。僕の話など、ピカピカのスーツより価値が無いのだと、悲しい気持ちでいると、彼は手のひらを向けて、話を止めた。


「大体わかった。海軍の紹介でここに来たけれど、正直、こんなガキのギャングごっこをしている奴の弁護なぞ、気が進まないね」

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