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水深800メートルのシューベルト|第587話

 鍵が閉まったままだということがわかると、僕は安心して曲がったドアレバーを押し、部屋に入った。キッチンのテーブルには僕のために切り分けてあったらしいピザ、コップ、皿が整然と並んでいた。食器棚や家具を見渡したが、どの棚も空けられていないし、服も帽子も壁につるされたままだった。きっと犯人は部屋の前で暴れたものの、お婆ちゃんが出かけた後だったのだろう。スマホを見ても、お婆ちゃんからの連絡はなかったので、お婆ちゃんと犯人がぶつからなかったのだろうと、安心した。


それにしても、犯人は誰だろう? もしかして、メイソンの逮捕に怒ったメンバーが?しかし、チームの中でもバーナードやブライアントはそんなことをやるとは思えなかった。それ以外のメンバー? それともメイソンが釈放されて? だったら、僕を直接呼び出すか、学校で待ち伏せするはずだ。今まで、僕が住んでいる界隈の狭い路地を運転するのを彼は嫌がっていた。

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