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水深800メートルのシューベルト|第585話

 お婆ちゃんはもう仕事に行ったはず。でも、どのみち明日の朝には謝って事情を説明しなくちゃいけない。そうだ、あの『チーム』から抜けよう。メイソンが出てきたらしこたま殴られるだろうし、ブライアントやバーナードは口もきいてくれなくなるだろうが、これ以上チームに関わると、いつか本当に刑務所に行かないといけなくなるだろう。


僕は、決意を胸に、家へと続く暗い階段を昇った。階段を踏む度に足裏にべこっとへこんだ感触が伝わってきて、嫌な気持ちになった。


ドアの前に立つと、いつもと様子が違うことに気づいた。ドアレバーに手をやると、レバーが曲がって折れかかっているのがわかった。レバーは触るとグラグラしていて、よく見ると、古い電灯に照らし出された鉄のドア全体が、何かでできた傷や靴跡で一杯だった。

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