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水深800メートルのシューベルト|第586話

 誰かがここに来て、嫌がらせか悪戯をしていったんだ。そう思うと、背後にぞわっとするものが湧き上がり思わず背筋が伸びた。部屋の中に入るのが恐ろしくなってきた。部屋の中も荒らされているかもしれないし、もしかして犯人が待ち伏せしているかもしれない。


 僕は警察に電話をしようかと思ったが、まだ部屋を見ていないのにドアの状態だけで警察が来てくれるとは思えなかった。それにすぐ、あの髭をピンと張ったすまし顔の警官の顔が浮かんで、嫌になった。だったら、ナージフさんに……、そう考えたが、彼に何かができるとも思えないし、それにこれ以上厄介事に巻き込むのは気が進まなかった。

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