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高嶺の花 【奥入瀬 24/6/18】
昨日の記事でご紹介したツルアジサイのように、
奥入瀬渓流の森には高い所にしか咲かない花が
いくつか生育しています。
高い所に咲くと言っても、ツルアジサイは
地面からつるを伸ばしているので、
地上で生活していることになるわけですが、
今回ご紹介する花は樹の幹の上にだけ根を張る
着生植物と呼ばれる仲間のひとつ。
![](https://assets.st-note.com/img/1718705934079-YjzWlnsHEB.jpg?width=800)
フガクスズムシソウというランの一種。
原生的な森林にのみ生育する希少種とされ、
絶滅危惧種に指定されている貴重な植物です。
裸の幹に着生することはなく、
必ず苔むした幹に着生します。
湿潤な谷の中に生育する奥入瀬渓流の森は、
高い位置まで空中湿度が保たれやすいので、
巨木の屋根付近の高さまで苔が生育できます。
着生植物の多くは苔と共存しており、
高い位置にも豊富に苔が生育している
奥入瀬渓流の森は、着生植物達にとって
とても相性の良い森なのです。
フガクスズムシの着生という事象を通して
奥入瀬渓流の森の豊かな環境が見えてくるので、
とても好きなお花のひとつです。
![](https://assets.st-note.com/img/1718709190306-QkqMZVFzJ0.jpg?width=800)
苔の着生が豊かな巨木は老齢であることが多く、
雨風や雪の影響で折れてしまったり、
根こそぎ倒れてしまうこともあります。
そんな倒木にフガクスズムシが着生していたなら…
またとない観察の大チャンス!
諸手を挙げて大喜び!
と言いたい所なんですが、
実は素直に喜ぶことができないのです。
フガクスズムシをはじめとする希少種は
盗掘被害が全国的に問題になっており、
奥入瀬渓流も例外ではありません。
この悲しい事実を知らなかった頃の私は
文字通り諸手を挙げて大喜びしていましたが、
非常識極まりない盗掘被害を目の当たりにして、
大変なショックを受けました。
昔日の奥入瀬渓流では、フガクスズムシ以外にも
たくさんの希少な植物が観察できたそうですが、
そのほとんどが消失してしまっています。
皆まで言いませんが、そういうことでしょう…。
高嶺の花には、
遠くからただながめるだけで、手に取って
自分のものにすることができないもののたとえ。
という意味があります。
フガクスズムシソウには、誰の手も届かない所で
高貴に咲いていて欲しいと思うのです。
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