見出し画像

高嶺の花 【奥入瀬 24/6/18】

昨日の記事でご紹介したツルアジサイのように、
奥入瀬渓流の森には高い所にしか咲かない花が
いくつか生育しています。

高い所に咲くと言っても、ツルアジサイは
地面からつるを伸ばしているので、
地上で生活していることになるわけですが、
今回ご紹介する花は樹の幹の上にだけ根を張る
着生植物と呼ばれる仲間のひとつ。

苔むした樹幹に着生

フガクスズムシソウというランの一種。

原生的な森林にのみ生育する希少種とされ、
絶滅危惧種に指定されている貴重な植物です。

裸の幹に着生することはなく、
必ず苔むした幹に着生します。

湿潤な谷の中に生育する奥入瀬渓流の森は、
高い位置まで空中湿度が保たれやすいので、
巨木の屋根付近の高さまで苔が生育できます。

着生植物の多くは苔と共存しており、
高い位置にも豊富に苔が生育している
奥入瀬渓流の森は、着生植物達にとって
とても相性の良い森なのです。

フガクスズムシの着生という事象を通して
奥入瀬渓流の森の豊かな環境が見えてくるので、
とても好きなお花のひとつです。

花付きのよい立派な株

苔の着生が豊かな巨木は老齢であることが多く、
雨風や雪の影響で折れてしまったり、
根こそぎ倒れてしまうこともあります。

そんな倒木にフガクスズムシが着生していたなら…

またとない観察の大チャンス!
諸手を挙げて大喜び!

と言いたい所なんですが、
実は素直に喜ぶことができないのです。

フガクスズムシをはじめとする希少種は
盗掘被害が全国的に問題になっており、
奥入瀬渓流も例外ではありません。

この悲しい事実を知らなかった頃の私は
文字通り諸手を挙げて大喜びしていましたが、
非常識極まりない盗掘被害を目の当たりにして、
大変なショックを受けました。

昔日の奥入瀬渓流では、フガクスズムシ以外にも
たくさんの希少な植物が観察できたそうですが、
そのほとんどが消失してしまっています。

皆まで言いませんが、そういうことでしょう…。


高嶺の花には、

遠くからただながめるだけで、手に取って
自分のものにすることができないもののたとえ。

という意味があります。


フガクスズムシソウには、誰の手も届かない所で
高貴に咲いていて欲しいと思うのです。



この記事が参加している募集

#アウトドアをたのしむ

10,497件

#一度は行きたいあの場所

52,829件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?