ネトフリ攻殻機動隊7話「はじめての銀行強盗」が最高のSF喜劇すぎて、感動のあまり筆が走っている話。

ぐぐぐです。

タイトル通り、今年に数回あるかないかの感動を味わってます。夕飯食わずに今3巡目を見てます。

いい映画見た後のあの感慨ですね…首筋から四肢へとすっと鳥肌が走る感じ。あれが今体に満ち満ちています。ランニングハイとでもいうような見終わったーというハイ状態。興奮が冷めやらぬってやつですね。なので、この興奮の中にいるうちに書いとこうかなと。


攻殻機動隊は有名ですね。その新作としてネットフリックスで配信されました。攻殻機動隊と新作についてはこの第7話については全く関係ないのでここでは触れません。

関係ない、というのは、この第7話は一話完結の箸休め回なんですね。なので多分攻殻機動隊を知らない人でも楽しめます!(ここ強調)TVアニメの時も、タチコマの街ブラ回とか、映画「タクシードライバー」的な話とか話の本筋と関係ないのですが、それでも俊逸な一話完結エピソードを提供してくれます。最高です。

そんな箸休め回の7話に興奮したのは、Aいわゆる風刺としての俊逸さ、B喜劇としての面白さ、C一話完結作品として完成度の高さ、があるからです。ABC列挙しといてなんですが、その詳細については触れられません!この話の面白さの根幹にかかわるので…。言っておいて申し訳ありません。でもその面白さを守りたいと思うほど好きになれるエピソードです。

でも、見る人によっては内容の構成としてはありきたりといえばありきたりなんでしょうし、元になった話があるのかもしれませんが、しっかりと社会を風刺しつつもしっかり笑える喜劇になってますね!

この話、舞台化してほしいなぁ…三谷幸喜さんとかやってくれないかなあ。

内容に触れないように内容に触れつつ、おすすめするとしたらこういう人におすすめします!!!

①日本社会の将来についての話のネタを探しているそこのビジネスマンっ(そうあなたっ!

②貧困問題・高齢者問題について学生に授業をしなければいけないが、どうせみんな授業寝るからいいムービーないかなぁ、と探しているそこの非常勤講師(そうあなたっ、

③バトーが好きな人(そう、僕っ!

いやぁ…いいですよ…ほんとに笑いました。


ふう。いやあ~、正直、この記事は7話が面白い!といいたかっただけで、視聴させるように論拠を挙げて読者の方を徹底的に説得するという気はそんなにないんですよね…勢いで筆が走ってるだけなので。なんでもう仕事は終わりましたね(笑)シャンプーハットのネタみたいですね(笑)最初の話でもう仕事終わっててあとは適当にしゃべっているだけっていうやつ。(笑)

適当に数分しゃべってくれと言ってくる人は僕にはいませんが(シャンプーハットのネタです分からない人すみません)、このままだと僕のテンションの収まりがつかないので、ぐだぐだと上述のABCについて語ります。いやあ、ここ面白かったよねーというだけです。岡田斗司夫みたくけらけら笑いながらだべるだけです。

以下ネタバレ含みます。





A.風刺としての俊逸さ

・「いつから銀行は老人ホームになったんだ?」

電子マネー、決済の一般化により、銀行に行かなくても口座管理ができるように。しかしその勝手が分からない老人たちは銀行に押しかける。電脳化もしていないため、セキュリティにひっかかり、大事な個人パスワードを警備員、頭取に入力してもらう始末。これは10年以内に起こりそうですね。病院が高齢者の社交場となって久しいですが、銀行にまで拡充していく(というかもういっているのでは…)のでしょうね。

・従業員は勤続年数30年の義足警備員と頭取の2人だけ。

これは実際に大手銀行でもリストラが話題になりましたし、まぁそれの行きつく先なんでしょうね。受け付けはすべてロボット。セキュリティは警備員の他にいませんでしたが、あれはなんでなんですかね。ロボット犬とかいてもいいと思いましたが。作中で銀行強盗も25年ぶりと報じられていましたから(タチコマが僕らが生まれる前の昔の犯罪だと言ってたのを聞いて、タチコマの年齢を始めて意識しました(笑))、銀行にわざわざ言って現金を強奪することはよっぽど2045年には非合理的な方法なのでしょう。バトーも現金は紐づけられて管理されているから、すぐに盗まれたものと判明するために使えないことを老人たちに伝えていましたからね(今でもそうなんでしょうが、2045年にはその照会作業がもっと迅速に行えるのでしょう)。確か、2nd seasonのときも、国民の預金の円以下の銭をこっそり盗んできて核を買う資金をテロリストがつくってましたが、そうした電子犯罪の方がよっぽどこの世界の中では簡単なんでしょうかね?

(よくわかってないんですが、なんでバトーは現ナマでお給料もらっているんですかね?NSAとか送金している履歴が残ったらまずい仕事先から仕事を受注しているから?でも現金もすぐ照会されてしまうなら、意味がない気がするのですが…NSAとかががんばって足のつかないお金を集めてきたんですかね?地道にこつこついろんなところからかき集めてきたんでしょうか?Mr.Smithにせかされながら部下がそんな仕事してると思うとなんとも愛おしく感じます。(笑))

あと、障碍者雇用で国からお金がもらえるのは今と同じですね。金づるとして30年間金属で来た警備員の存在は、どこまでもお金中心主義のいやあな銀行だ、と視聴者に印象付けます。セキュリティの行列もそうですが、ユーザーのマジョリティである高齢者に対応する気がないですからね。ざ・殿様商売て感じ。

で、この義足って義体化がすすんだ世界で、ポジティブな存在ではないんですね。身体障碍が義体化が普及した世界でも残り続けている…?これは正直情報不足で分かりませんでした。

・老人犯罪

年金2000万円問題とかありましたからね。というかそんなニュースを見つつこの作品を作っていたんじゃないでしょうか。高齢者の貧困の行きつく先は、高齢者による「はじめての銀行強盗」。勤続30年の警備員がバトーも驚くほどスムーズに警報システムを落とし、札束までたどり着きますが、老いゆえテクノロジーの進歩(盗んだおさつ使えない)に追いつけず、失敗する。じゃあ金に変えよう!と、能天気な提案をするおじいちゃんも最高にキュートでしたね…。(笑)

副題はpie in the skyでこれは「絵に描いた餅」と訳されることが多いですが、バトーがこの老人犯罪を見ての感想であるともいえますよね。えっ?そんな考えで銀行強盗したの?てな感じで。でも

さらにはかえでちゃん(あのおばさん)ですね。土壇場でわいも金が欲しいんじゃあーと、人質から犯人へと役変わりするかえでちゃん。こんなギャンブルしたら死んだ主人に叱られると言いながら、慣れない手つきで市場操作に参加するかえでちゃん。最高ですね。

・老人の自殺願望

お金もなし、主人もなし、楽しいことがなさそうだし迷惑かけて死ぬなら、スイスで安楽死するわ!というかえでちゃん。長寿が良しとされる世の中ですが、アガンベンのゾーエーとビオスよろしく、生きることそのものへの全肯定はアウシュビッツの発想と同じというわけで。老衰を待たずに死にたいという発想も必然的にあっておかしくないんでしょうね。というか、知らないだけでたくさんあるのかもですね。自殺願望は若者に限ったことではないという示唆ありがたや。

・「世界同時デフォルト?お金のことは主人にまかせっきりだったから...」

仮定の財政は亭主さまが握るという日本の家父長制、年金2000万問題で露呈した日本人の金融リテラシーの低さは2045年まで続いているんですね。これも年金2000万問題のニュース見ながらつくったんでしょうかね。パンチきいてます。


B喜劇としての面白さ

・強盗がどんどん増えていき、ついには人質も強盗に

かえでちゃんが、銃を持った時は噴き出して笑っちゃいました。えええ!おばちゃんも!?「なんとかしてちょうだい!」といういかにも頼りない強盗姿はわらっちゃいました。。

・老人たちの唯一の人質がバトー

「こいつは…爆弾なんだ…」とシリアスに言って首にぶら下げたお弁当箱を警官たちに見せつけるムキムキのサイボーグをみたら笑っちゃいますよね。老人たちも人質たるバトーに頼りきりです。「犯人は3...4人(かえでちゃんですね(笑))人質は俺含めて5人だ!」そのあと、人質の姿勢を取っていたのはバトーが景観との交渉に失敗して突入されてしまった用のカモフラージュなんでしょうかね?そのシーンはありませんでしたが、強盗が人質の指示に従ってるという逆転現象を示す1つのシーンになってましたね。

・お金がないから死ねない

お金が欲しいのは主人との思い出の地スイスへの旅行のため…ではなく、安楽死したいから。「でも…これじゃ死ねない…」「死ぬのにいくらかかる?」「300万円ドルよ」「えぇ」「そんなにかぁ!」のやりとりは最高でしたね。(笑)主人が残してくれたお金も死ぬのには届かない。そこに目の前に起きた銀行強盗。ええいままよと銃を手に取るおばあちゃん。最高でしたね。

あと、おじいちゃんたちの犯行動機の中に亡くなった嫁の墓を建ててあげたいから、というのありましたね。将来ある孫にランドセルを買ってあげたい、は容易に想像がつく不憫エピソードですが、お墓という今は亡き死者のために命を張って強盗をするおじいちゃんもなかなか悲哀に満ちてますよね。「万引き家族」で樹木希林が亡くなった瞬間に埋葬にお金がかかるからと言って家の庭に穴を掘ってそこに遺体を埋めたリリーフランキーを思い出しました。樹木希林と少し前まであんなに仲良く接していたのに、死んだら急に掌返しで冷たくなるリリーフランキー。冷徹にならなければいけないほど、埋葬とかお墓ってお金がかかるんでしょうね。まだ関わりがないから実感がないだけかもしれないです。

・みんなにとって「はじめての銀行強盗」

タイトルが「はじめての銀行強盗」なわけですが、日本において25年間も起こらなかった銀行強盗です。みんなはじめての銀行強盗を目にするわけです。実行犯のおじいちゃんおばあちゃんにとっても銀行強盗をするのは生まれてはじめてでしょうし、それを取り囲む警官も目の当たりにするのははじめてでしょう。実際誤報であると疑ってましたし。25年前には生まれてなかったタチコマ達にとっても、ひょっとしたらバトーにとっても初めてだったのかもしれません。そのぎこちなさが、「お弁当爆弾」を首にぶら下げたバトーと警官のやりとりにつながるのでしょうね。


C一話完結作品としての完成度の高さ

・掘り下げやディティールがすごい!

25分の中という短い間での掘り下げやディティールがすごいと思いました。掘り下げが深いほど「はじめての銀行強盗」のおかしさがでてくるというもの。すごいなあと思ったものを箇条書きで列挙すると、

〇かえでちゃんの仕事一筋で死んだ旦那の職業がロシア文学教授であること。

ロシア文学からあふれ出る辛さ、報われなさみたいなものが旦那さんの死と安楽死したいかえでちゃんに深みと説得力を持たせてますよね。そしてかえでちゃんのスカーフからあふれるロシア感。スイスへと見せかけてホノルルへ飛ぶ際にはそのスカーフはつけていませんでした。夫、過去との決別の表れ…。そして心なしか髪が黒い…。白髪染めしたんでしょうね。そのことからも生きて楽しもうという気力がわいてきたことが分かります。

〇銀行に配属されているロボットが、アンドロイド型ではなく、野暮ったいペッパー君みたいな様相であること。

可愛い人間的なアンドロイドがもし銀行にいたら、こんな殺伐とした空気感にならなかったでしょう。

〇警備員の脅し武器がクラシックなショットガンであること。そして持ち方があきらかに撃てる持ち方でないこと。

シックな黒のマシンガンではなく、攻殻機動隊ではあまりみない木製パーツが使われたクラシックなショットガンが脅し武器として使われています。5話でもイシカワがショットガン使ってましたけど、レトロ感全くないシックな黒のショットガンでした。なのであえての銃のチョイスなんじゃないかなと思います。そのことからも銀行強盗が時代錯誤であることが伝わってきます。銃の知識なくて間違ているかも…。またこれもとんちんかんなこと言っているかもしれませんが、個人的には西部劇の銀行強盗を思い出しました。レッドデットリテンプションのやりすぎかもしれませんが、やっぱり銀行強盗と言えばクラシックなショットガンのイメージがあるんですよね。「ダークナイト」の最初の銀行のシーンでもクラシックなショットガン出てたし。

また持ち方もぎこちないので、バトーならすぐに制圧できることが見てて分かります。バトーのやさしさを感じ取れますね。


・描かず想像させるすばらしさ

短い時間の中でストーリーのすべてを語り切れるわけではありません。必然的にできてしまうその空白を視聴者に想像させて保管させることで、より詳細に作品の理解を深めることにつながるのでしょう。

例えば、銀行強盗成功後のおでん屋でかたるおじいちゃんたち、そこで初めて明らかになるおばあちゃんの名前「かえでちゃん」。そこから、強盗後にちゃんづけになるほど親密な交流があったことが伺えます。その一方で、かえでちゃんを思い出し押し黙るおじいちゃんたちの様子から、かえでちゃんはスイスに行き安楽死すると未だに思っており、ホノルルに向かうことに決めたことを知らない様子がうかがえます。これは、次にかえでちゃんが実はホノルルに向かいました、という話の前振りになっているのですが、そこからかえでちゃんとおじいちゃんたちの距離感みたいなものも伝わってきます。

また、お弁当を爆弾だ、と言い張ったバトーが銀行内に戻ると、次のシーンでは強盗の老人たちは縛られた人質のふりをしながら身の上話をしていました。しかし、戻ってきたバトーから「もう縛られているふりは終わりだ」と言われ、節々が痛いなあという様子を見せつつ老人たちはそのふりをやめます。このことから、バトーが人質の演技をするよう指示を出し、身の上話をする間も律義に縛られた演技をしていたことから、強盗達は丁寧にその指示を守ったこと、そしてそれだけの信頼をバトーに寄せていること(寄せるしかないこと)が伺えます。

この前のシーンにかえでちゃんが「あなたは何か知っているんでしょ。なんとかしてちょうだい。」と言っていることから、①逮捕されないために、強盗が別にいるようにカモフラージュする必要があること、②そのために警察の前に嘘情報を流す必要があること、③その際に突入されてもばれないように、人質のふりをする必要があること、を伝えるシーンがありません。しかし、その周辺のシーンでここあたりのやりとりがぼんやりとつかめるようになっています。このようにいちいち現状の説明をせず、淡々と話しを進めることで、よりキャラクターのやりとりが自然に感じられる効果もあると思います。というか攻殻機動隊はそんなばっかで、よく置いてけぼりになることも多いのですが…

ですが、語ってしまうことで、メッセージが限定されて語りたいことを語れてない、チープさを感じてしまうことも多々あるので(「シンゴジラ」でしばしば出てくるこの国には希望がある的な発言、「ゲド戦記」の説教臭さ)、多くを語らず、と言った態度は僕は好ましく思えます。


以上、だらだらと書き綴ってきました。ここまで目を通してくださっている方は…まぁいないでしょうが、感動で手が止まらねえぜっという僕のエゴで書いているので、そこのところはご容赦ください。読みにくさがありましたら大変申し訳ございません。ですが、これほど興奮しました!、ということを文章にしてこの広大なネットの片隅にそっと置いて置ければ、僕はもう満足です。

もう4時になるし、明日の仕事があるので寝ます…おやすみなさい…