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040 連載小説01 災害ボランティア⑩ 仮仮置き場へ

030 連載小説01 災害ボランティア① 序|ohshio_t (note.com)
031 連載小説01 災害ボランティア② 災難の伏線、出発の遅れ|ohshio_t (note.com)
032 連載小説01 災害ボランティア③ 勘違い、前泊も七尾市文化ホールではなかった|ohshio_t (note.com)
033 連載小説01 災害ボランティア④ 隘路に踏み込む|ohshio_t (note.com)
034 連載小説01 災害ボランティア⑤ テント村、七尾城山野球場に到着|ohshio_t (note.com)
035 連載小説01 災害ボランティア⑥ テント村で眠りにつく|ohshio_t (note.com)
036 連載小説01 災害ボランティア⑦ テントから撤収|ohshio_t (note.com)
038 連載小説01 災害ボランティア⑧ 七尾市文化ホールに到着|ohshio_t (note.com)
039 連載小説01 災害ボランティア⑨ 七尾市文化ホールでのオリエンテーション、そして仮仮置き場

 三月一日に続き、Tは七尾市文化ホールから二回目、車に乗せてもらって出発した。しかし前回の最初の現場は七尾市の社協の人がTに気を利かせてくれて乗せてもらったもので、歩いても行けない距離ではなかった。
 しかし今回Tが作業する仮仮置き場は、渋滞がなくても車で行って20分ほどかかるという。とはいっても文化ホール近辺の民家が作業場所だったとはいえ、地図上の何処を訪問したのかTが分かるわけではない。しかも今回の仮仮置き場は、前回Tが七尾市の社協の人の車に同乗させてもらって行き、被災ごみの搬出を少し手伝った場所とは違うという。ならば尚更Tが案内できるわけはなかった。Tはただ運転手とナビゲーターを信じ、窓外を眺めるだけだった。
 到着した建物は係員が出迎えてくれたが、どうも場所が違うようだった。Tは自分が役立てるわけはないと思って車で待機していたが、他の何人かは社外に出て、周囲を見渡す。するとTと同乗していた幾人かは、高台になっている駐車場からそれらしい場所を見つけたみたいだった。ナビゲーターはインカムで文化ホールの本部に呼びかけて確認し、運転手に指示を出した。
 そこは文化ホールからの距離を考えれば目と鼻の先、来た道を下ってすぐの広々とした場所だった。そこにボランティアとは違う色のジャケット、ゼッケンを付けた人たちが待機していて、まさにここがTの今回のボランティアの作業場所、仮仮置き場と分かった。
 しかし仮仮置き場の作業は本来、被災ごみの搬入がなければ作業できない。だからTはまず、プラスチックと石の分別をするよう指示された。内容と意義をTは理解し、作業的にもそれ用の手袋でやれば危ないことはないのだが、何とも地味な作業とはTは思った。しかし忽(ゆるが)せには出来ない。プラスチックの破片を見つけ次第、より分ける作業を繰り返し、没頭しようと努めた。
 そうこうするうちに第一弾が来たらしい。搬出作業を少し手伝ったが社協の人に呼びかけられ、Tは違う作業をすることになった。これも地味と言えば地味な作業、トンカチによる破壊行為である。主にガラスや鏡、瀬戸物を、扉を外して横倒しにした箪笥の中で叩き割る作業を頼まれた。
 そうしないと業者に持って行ったもらえないと言うが、Tは合点がいった。瀬戸物はたいてい立体だから、砕かないと空間が出来、袋に多く詰めないはずと思いつくことが出来たのである。ガラスや鏡は平面だから上手くすれば綺麗に入れられるが、角で怪我する恐れがある。ならば最初から砕いて小さな破片にした方が、次の詰め込みで苦労せずに済むと思いつくことが出来た。
 しかもTに渡されたトンカチは金槌の部分が相当重い。体力的には苦労しない作業とTは見当付けることが出来た。(大塩高志)

042 連載小説01 災害ボランティア⑪(終) 思い出を砕く

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