見出し画像

031 連載小説01 災害ボランティア② 災難の伏線、出発の遅れ

030 連載小説01 災害ボランティア① 序|ohshio_t (note.com)

 O・T、Oは希少な苗字だがTは割とありふれた下の名前なので、これからはTで記すことにする、の今回の災害ボランティアの参加、伏線として日にちを間違えた前回の能登町ボランティアに関する情報が必要となる。
 この時Tは一泊二日のボランティアに参加するためにその前日の木曜日に能登、金沢駅に泊まる計画を立てたが、軍資金を下ろしたのは金沢に行く当日、三月十四日だった。それはいいのだがその時、銀行のキャッシュカードを取り忘れたらしいのである。
 Tがカードを仕舞うのは財布かバインダーだが、両方ともないのを確認した。この時は日にち間違いをわかって早々に帰宅の途に就いたので八王子の家に戻ったのが十五日の金曜日、午後の二時二十九分だった。だから土曜日と日曜日を金欠にならずに過ごすことが出来、十八日の月曜日にカードの再発行申請をしようと思ったのである。
 しかし月曜日。職場の近くの高尾の支店は閉鎖されたと、張り紙でTは知ることになる。残る手段は二駅先の八王子駅近くの支店に行くことだが、時間はかかったが午後三時前に着くことが出来、Tはカードの再発行手続きが出来た。残った問題は当座の生活費。だから翌日にTは再度銀行に行き、通帳でお金を下ろしてテント村付きのボランティアの日までその金額で過ごしたのである。
 残された問題は銀行のカードがいつ配達されて来るかである。直接本人受け取りが必要なので、自宅でなく郵便局まで受け取りに行かなければならない事態もTは想定していた。受け取る郵便局は分かっているので火曜日まで配達してくれれば都合がよかった。しかし自宅で受け取れず、通知が二十七日の水曜日だと銀行受け取りが能登に行く当日、二十八日の木曜日になり、窮屈な能登行きになるとTには想像できた。しかも今回は欲張り、一気に七尾駅まで行って前泊する予定を立てていた。
 結局Tは再発行カードを自宅受け取りはできなかった。不在通知が入ったのは水曜日であり、Tは七尾行きの当日に銀行カードを受け取り、そのカードで七尾行きの軍資金を下ろさなければならないという、T自身が危惧した通りの事態になった。
 高尾駅から新宿駅まで京王線、新宿駅から東京駅まで中央線、東京駅から金沢駅まで新幹線かがやき、金沢駅から七尾駅まで七尾線。乗り継ぎに失敗しているTにとって、今回は乗り継ぎに関しては上出来に思えた。
 しかし銀行のカードの件で振り出しの高尾駅発の時間が遅くなったのがたたり、Tが金沢駅に着いたのが18:52。19:31発の七尾行きまで時間があったので、七尾線のホームで夕食の弁当を摂ることができたが。しかし七尾駅に着いたのが20:57で、七尾線の車中でTは己の計画の甘さを認識しだしたのである。
 しかし七尾駅に着いた以上、Tは当初の自分の計画を実行するしかないと覚悟した。しかし外は真っ暗。だから自分の足は危険と判断し、タクシーの利用を思い立つ。そしてTは前泊できると思い込んだ、七尾市文化ホールを行先として告げたのである。(大塩高志)

032 連載小説01 災害ボランティア③ 勘違い、前泊も七尾市文化ホールではなかった|ohshio_t (note.com)
033 連載小説01 災害ボランティア④ 隘路に踏み込む|ohshio_t (note.com)
034 連載小説01 災害ボランティア⑤ テント村、七尾城山野球場に到着|ohshio_t (note.com)
035 連載小説01 災害ボランティア⑥ テント村で眠りにつく|ohshio_t (note.com)
036 連載小説01 災害ボランティア⑦ テントから撤収|ohshio_t (note.com)
038 連載小説01 災害ボランティア⑧ 七尾市文化ホールに到着|ohshio_t (note.com)
039 連載小説01 災害ボランティア⑨ 七尾市文化ホールでのオリエンテーション、そして仮仮置き場
040 連載小説01 災害ボランティア⑩ 仮仮置き場へ
042 連載小説01 災害ボランティア⑪(終) 思い出を砕く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?