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建設会社に無関係そうな「デザイン」について聞いてみたら深かった



 「デザイン」


 唐突ですが、この言葉にどのようなイメージを持たれてるでしょうか?
 私個人的には、日常的に使用する言葉の中でもいろいろな意味で使われていて、汎用性が高い言葉のように感じています。


 私はデザインという分野で働いてきたわけではありませんが、大西はデザインの分野で経験を積んで今日に至っていて、「デザイン」とはかけ離れているように見える建設・土木の分野においても、これからは「デザイン」が必要だと考えているようです。


 ……それってどういうこと?🤔🤔


 というわけで、大西建設が本気で考える「デザイン」について大西に聞いてみました!




Q:そもそも。建設・土木会社の仕事とは??どうして建設会社にデザインが必要なの??



 大西:公共工事を例にすると、まず地域の方々から「道路を平らにしてほしい」等の要望が寄せられます。それを受け行政は、建設・土木系のコンサル会社に工事の設計を発注します。その後、地元の建設会社に発注(入札により業者を決定)し、建設会社が実際の工事にあたります。(公共工事ではこれらの工事はすべて税金で行われます。)


 発注を受けた建設会社の仕事は、与えられた絵(図面)の通りに正確につくることです。施工を任せられた会社としてそれは当然のことですが、特筆すべきは、なぜその絵ができたのか、背景や想いまでは知らないことが多い、という点です。
 建設会社に求められるのは「絵の通りに正確につくること」なので、どういう経緯でこの工事が決まったのか?なぜこの絵ができたのか?のような、その絵ができた背景や込められた想いを深く理解する、という作業は基本的にはありません。


 つくったものが、暮らしの中でどのように役に立っているのか。自分たちがつくったものが本当に「ありがとう」と言われるようなものであるのか。誰のためのもので、何のためのものなのか。つくったらどうなるのか。僕は、これらを本質的に理解する必要があるのではないかと思うんです。
 与えられた絵の通りにものをつくるだけではなく、そもそも、その工事に至るまでの人の想いを知ったり、本当に求められているものってなんだろう?と、意識的に考えないといけない。


 以上に述べたことはいわゆる「デザイン」にあたるもので、絵の通りに正確につくることももちろんですが、これからの建設・土木会社には、この「デザイン」ができることが特に必要だと、僕は考えています。

Q:デザインのプロセスとは?



 大西:僕が考えるデザインのプロセスは、下記の⑴から⑶です。

⑴本質を理解する

 ニーズ、イシュー、シーズ、ウォンツ…
 いろいろな思考法やアプローチ方法がありますが、「本質の理解」とは「インサイトの理解」といえると思います。インサイトとは、ニーズにまで至っていない、潜在的にある欲求のことをいい、時には本人ですら気づいていない動機や本音のことです。たとえば相手が「水が欲しい」と思う前の、「喉が渇いたな」という段階はインサイトに該当します。
 このように、要望として浮上する前のインサイトをいかに見つけ理解するかがポイントであり、要望になる前に提案できることが理想です。「喉が渇いたな」という段階で水を差し出す。あるいは地元住民の方から要望が出る前に、「ここの道路って、こうなったらいいですよね?こうしましょうか?」と提案できる。
 さまざまな思考法の中でも、後述する「⑶心を動かす」に繋げるために最も必要なのがこのインサイトの理解だと思っています。ニーズに応えるのとインサイトに応えるのでは、ファンの増え方が違うからです。
 良いデザインとは、インサイトを理解して訴求するからこそ得られるものだと思います。


 また、本質の理解としてもう一つ重要なのは、出てきた課題が本当に本質的な課題なのかどうかを見極めることです。
 たとえば、もっとこうしてほしいと要望が出ている道路を修繕することが、その地域の課題解決に直結するのか?を見極めなければなりません。その地域が目指している姿が「子どもたちが安全に暮らせるまちづくり」であれば、子どもたちが安全に通れるように道路を修繕する、というのは喫緊の課題になり得ます。しかし、「子供たちが安全に暮らせるまちづくり」という上位に存在するビジョンを理解せずに道路の修繕だけをしても、本質的な課題の解決にはならないかもしれません。


 つまり「本質の理解」とは、目指すべき姿(ビジョン)を理解した上で、潜在的にある需要(インサイト)を理解すること、といえると思います。

⑵可視化する

 「可視化する」とは、インサイトを理解した後、文字通り可視化して相手にビジュアルとして見せることを指します。デザインのプロセスはどれも重要ですが、可視化する作業は見せ所です。
 見せたい相手によって、可視化する手法や内容さえ異なります。したがって、本質をよく理解するのと同時に、見せたい相手のことをよく理解することも重要です。

⑶心を動かす

 どんな提案(アウトプット)をするかはとても大切ですが、デザインを考える上で、アウトプットよりも大切なのはアウトカムです。アウトカムとは受け手(お客さま)に起きた変化のことで、「どれだけ心を動かしたか」に寄与する指標のようなものです。客観的、定量的に測定するのは難しいのですが、アウトカムはお客さまがファンになってくれるかどうかの決め手になります。

 
 何か商品を開発するときに、デザイン会社にデザインをお願いしたとします。「うちがデザインしたら、100個売れる商品をデザインします」と言うデザイン会社と、「うちがデザインしたら、100人のファンをつくります」と言うデザイン会社、どちらにお願いしたいですか?
 販売個数というノルマを達成したいのなら、お店の場所を変えたり売り方を変えるなど、マーケティング等の知識があれば、ある程度ロジカルにモノを売ることはできます。目先の利益だけ考えるのならば前者にお願いしたほうが良いでしょうが、僕だったら後者にお願いします。
 確実に100個モノを売ってくれるよりも、確実に100人のファンができるほうが、100人の心を動かしたことになりますし、その先の展開に広がりや未来を感じます。


 ⑴で述べたインサイトにどれだけ訴求し、本質を理解したか。その上でアウトカムまでデザインできるデザイナーこそ、本当の意味で人の心を動かすことができるデザイナーだと思います。

Q:結論、大西建設的「デザイン」とは?



 大西:本質を理解すること、可視化すること、心を動かすこと。これら「デザインのプロセス」において共通していることは、人をどれだけ想えるか?ということに尽きると思います。つまり、デザインとは、人への想いがないと成り立たない。
 
目の前にいる人のことを想わなければインサイトに興味も湧かない。相手のことをよく知ろうとしなければ、相手が受け取りやすい資料として可視化することはできない。つくった商品やサービスを受け取った相手のその先にある変容を想えなければ、100人のファンはつくれない。


 「デザイン」と聞くと、なんとなく堅苦しくて難しい感じもしますし、定義が曖昧な気もするし、とっつきにくいかもしれません。でも実はそんなに難しいことではなくて、「人を想うこと」が「デザイン」そのもののように思います。
 別の言い方をすると、グラフィックであれ映像であれライティングであれ、手法は異なったとしても人を想える人はデザインができる人だと思います。


 僕はこれから事業承継を経て、本格的に第二創業に取り組んでいきます。そのために随時仲間も募集していますが、これから入ってきてくださる方々には、たとえ職種や職能はバラバラであっても全員に、「デザイナーを目指してね」と伝えることで、自然と人を想うようになってほしいと思っています。


 ここまでに述べたことは、デザインの分野に身を置いてきた僕個人の主観ですが、デザインとはそういうものだと思っていて、建設でも土木でも、もっというとどんな業界にでも、必要な要素なのかなと思います。

(語り手:大西  取材&ライティング:安藤)