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映画「あんのこと」から考える不登校問題の対策②

「あんのこと」から考える不登校問題への対策①の続きです。


大人になったらなにもかも「自己責任」なんて、どうかしてる

コロナ禍では様々な支援がありました。ですが、ハナには届かなかったものもあるようです。申請主義の日本のシステム。ハナのように不登校が原因で読み書きや社会のルール、申請プロセスへの理解ギャップがある人にはハードルが高かったのではないでしょうか。

私にはこどもが2人います。今はまだ高校生と未就学児です。この2人が不登校と無縁かなんて誰にもわかりません。不登校になったとき、どうしたらいいのだろう。親としてどう接するのが最良なのかと関心をもつようになりました。
そこで「不登校について考えるセミナー」が開催されることを調べ、今日行ってきたんです。講師は自分のこども3人が全員不登校になったことをきっかけにサラリーマンを辞めて支援活動を始めた方。デンマークの教育環境が今もっとも必要なんだという考えを教えてくれました。デンマークの教育環境がどう優れている話はまた今度。
それと、勘違いしている人が多いようだけど、今自分が生きている環境は実力だけで得たものではない、運要素がとても大きいのだと。先々週受けた仏教講座でも先生は違いますが、全く同じことをおっしゃっていました。

運も実力のうちではなく、実力こそ運のうち。その気づきが悟りのはじまりなんだ

私の頭の中で価値観がガガガーーーーンと変化した音がしました。

「あんのこと」で、生活保護申請する場面があります。生活保護の担当者は「若いし働けるでしょう。」と申請を突っぱねます。
付き添いで来ていた担当刑事は「杏は小3で不登校になって、漢字の読み書きも十分じゃないし、計算もできないんだ。いきなり就労は難しすぎる。」と説明します。
生活保護職員は言い返します。
「義務教育を放棄したのは自己責任でしょう!」

自己責任…?そうなんでしょうか。
人生運要素つよつよ説では、この担当職員も実力だけでなく運が良かったから職にありつけたと言えるのでは。杏と同じ環境に生まれて「自己責任」と思えるのでしょうか。

「あんのこと」で母親は「あんの体は私のものだ。」と発言します。こんな親元の愛無き環境で搾取され続けた杏は、果たして「自己責任」なんでしょうか。
今は18歳になれば成人です。成人すると自分の責任で生きていきます。ですが、義務教育を受けることができなかった杏は資本主義国家システムから「義務教育を放棄したのは自己責任」と責められ、支援を受けさせてもらえませんでした。

私も、自分を含めた大人に対して「自己責任」と思うことは多々ありました。その人の背景を知らなくても大人になれば全てのことが自己責任なんだと。随分雑な考えで、自分にがっかりしたんです。
でも、その考えの背景には資本主義国家というのがあるのだと不登校セミナーの先生がおっしゃっていました。
あぁ…なるほどなぁ。わたしは社会人で民間企業で競合他社と切磋琢磨しながら勝ち抜いていかなければならない生き方をしてきました。
努力できないのは自己責任。キャリアを構築できていないのも自己責任。暇があればスキルアップしなければ。

なんとかやってこれたのは、全部自分の実力?

「いいえ。」


わたしは運がよかったんです。親は真っ当な大人になることを願って、わたしを育ててくれた人たちです。大人までの成長過程から社会人になってからも、実力が伴わないわたしをたくさん助けてくれた人たちがいたおかげなんです。
コロナ禍に再婚しました。当時の勤め先は大打撃を受けていたにもかかわらず社員全員を解雇せず、生活を保証してくれました。(それのせいで今とってもピンチで申し訳なさすぎる)
わたしは孤独にならずに済んだのです。もし、再婚できなかったら。会社に解雇されて無職になっていたら。もしかしたらハナのように先の見えない不安に押しつぶされ自死を選んだ可能性があったのです。
わたしがなんとかやってこられたのは「実力じゃない。運なんだ。」とやっと気づけました。こういうのは小学校の卒業式で親に感謝の気持ちを伝えるときに気づくものなんですが、大人になり自立して忘れていくのかもしれません。

不登校児童の低年齢化から見えてきた未来の社会問題

「あんのこと」を観て、小学生での不登校は基本の考える力を身につけられない恐ろしさを感じました。今日受講したセミナーでは「不登校は悪くない」とこどもに共有するよう教えられ、それは十分理解できる内容でした。
(それもまた今度説明します)
ただ近年の傾向では、近い将来小中高の中で小学校のこどもたちの不登校が一番人数が多くなると予想されているそうです。下記のグラフは2022年度までの不登校児童の推移です。小中高とも人数が増加傾向にあります。少子化なのに不登校児童だけ右肩あがりなんですね。この傾向だけでは不登校の低年齢化は証明できませんが、簡易的な算出では2030年にはそうなると予想されています。

小中29万人、不登校児童生徒数が過去最多に 文科省調べ

考えられる原因は色々あるようですが、早い子だと低学年から不登校が始まるとのこと。
「あんのこと」でもあるように、低学年での不登校は読み書き・簡単な計算ができないまま年を重ねるため様々なリスクが生じます。「大人になれば自己責任」な世の中、生きるために罪を犯してしまう人が増える可能性は十分考えられるでしょう。

こどもが不登校になったときに、不安を跳ね除ける対策とは

こどもの頃から読書の習慣をつけること。 そう、わたしは考えています。あるXユーザーの投稿で「うまくルート分岐できなかったら、自分は東横キッズになっていた」という内容を見つけました。ルート分岐できたのは、こどものうちに転校し環境が変わり友人ができたこと。それと、本を読むことが好きになったこと。と書かれていました。 本はネットよりも情報が精査されています。読書習慣をつけると不登校になったとしても、情報が遮断されることはないでしょう。なんなら独学で様々なことを学び武器にすることだってできます。

小さなころから読書習慣を身につける。


それが今のわたしにできる不登校対策だと考えています。

あんのこと
初公開: 2024年6月7日
監督: 入江 悠
配給: キノフィルムズ
制作会社: コギトワークス
撮影: 浦田秀穂
製作: 谷川由希子関友彦座喜味香苗
https://eiga.com/movie/100503/

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