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映画「あんのこと」から考える不登校問題の対策①

映画「あんのこと」を鑑賞しました。
先に感想を伝えます。
女性は生理前の不安定な時期に見たらしんどさが増します。俯瞰してみるために「杏の人生は杏の人生で、わたしの人生ではない」と最初に念じておいた方が無難でしょう。


映画の内容

2020年の日本で実際に起きた事件がモチーフになった作品です。

21歳の主人公・杏は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。
大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。
週刊誌記者の桐野は、「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。ちょうどその頃、新型コロナウイルスが出現。杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまう。行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人から思いがけない頼みごとをされる──。

公式サイトより引用

映画のことを書くとネタバレになってしまうので、実際にあった事件について解説します。

小学校3年性から不登校に

杏のモデルになったのはハナという女性。当時の記事にあった仮名です。
ハナは母子家庭で育ちます。小さい頃はハナ、母、祖母、曽祖母の4人暮らしでした。一家の生計は母親の売春が主な収入源で成り立っていたそう。祖母は万引きの常習犯。そんな家庭で彼女は虐待を受けながら育ちました。
ハナが小学校3年生のころ、祖母の万引きが近所で有名になってしまい、もちろんその影響は学校にも。ハナは学校へ行きづらくなり、そのまま不登校になってしまいました。同じころ、唯一優しくしてくれた曽祖母が他界し、ハナはまともに愛情を注いでくれる環境から見放されてしまったんです。十分な読み書き、計算ができないまま義務教育を受ける環境から排除されてしまいました。
12歳になったころ、普通だと小学校6年生です。ハナは不登校のままでした。そして、母親に売春をさせられます。それからずっと、家計を支えるためハナは売春を続けさせられます。相変わらず母親からの支配は続き、虐待も終わることはなかったようです。
16歳あたりで売春の客から勧められ覚醒剤にどっぷりハマってしまいました。

自分を支配しない人との出会い

21歳になったハナは売春の最中、客が覚醒剤を使用し意識不明になり救急車で運ばれる事態に巻き込まれます。客の尿から覚醒剤が検出され、一緒に居たハナも検査を受けることに。ハナの尿からも検出されたことで逮捕に至りました。
逮捕されたことで、ようやくまともな人にハナの存在が見つかります。
当時の担当刑事だった蜂谷さん。蜂谷さんはハナの固まり切った心をコミュニケーションで少しずつほぐしていき、心を開かせます。
覚醒剤をやめるためには仲間と一緒に覚醒剤を絶つことが有効なんだそう。ハナは蜂谷さんが主催サークルに入って、薬物を断つ挑戦を続けます。
蜂谷さんと交流を続けていく中で、いろんなことを知る機会になったようです。ハナは蜂谷さんから教えてもらうまで、労働を続けることと納税をおこなうことを知りませんでした。読み書きができないので、情報が入ってこなかったんです。それまでの客の中からそんなことを教えてくれる人もいなかったんでしょう。
ハナには目標が生まれました。介護士になって曽祖母に返せなかった恩を返したい‥だったそうです。
ハナは介護施設で働き始めます。利用者さんの名前が読めないので、読み書きの勉強も始めました。
その頃は介護資格をもっていなかったため、お世話したくてもできないことがあったのだそう。それが悔しくて介護資格がとれる学校に通い、2つの資格を取得したそうです。
夜間中学校へも通うことも決まっていました。まるで失われた学習の機会を取り戻すかのように朝晩忙しくしていたようです。

運命はただ残酷なだけ。世界中を孤独にしたコロナ禍

更生を頑張るハナに追い風は吹きませんでした。2020年コロナ禍突入。
決まっていた夜間中学も蜂谷さん主催のサークルも、感染防止の影響を受けてで中止に。コロナ禍をよく覚えている人はピンとくると思いますが、その頃はハナだけでなく世界中の人が孤独と戦っていました。覚醒剤は孤独な人の心を蝕みます。ハナにとって完全に克服できていない覚醒剤に手を伸ばすには条件が整いすぎていました。
母親からの支配はその頃も続いてました。
ハナの職場に勝手に給料の前借りや給料は自分に渡せと言いに来ていたそう。その頃は一緒に住んでいたので、相変わらず暴力を振るってはハナの顔を腫らしていたのだとか。
母親の暴力があまりにも酷いため、警察の準備したマンションに避難しました。そこで何があったのでしょうか。
ハナはそのマンションから飛び降りて亡くなりました。

亡くなる前日に蜂谷さんと最後の電話をしていたそうです。「覚醒剤をやってしまいそう」そう言うハナに、蜂谷さんは今までの苦労が水の泡になってしまうことを伝えたようで、ハナは「わかった」と言って切ったそうです。


実際の事件解説だけでボリュームが増えすぎたので「あんのこと」から考える不登校問題の対策②に続きます。。。

あんのこと
初公開: 2024年6月7日
監督: 入江 悠
配給: キノフィルムズ
制作会社: コギトワークス
撮影: 浦田秀穂
製作: 谷川由希子関友彦座喜味香苗
https://eiga.com/movie/100503/

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