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百年後の世界。

「AIは上手な言葉を作るけれど、心がない」

「じいちゃん。それ、古いよ」

「なぬ」

「今はコンピュータにも心があるんだよ」

「ふむ。たとえ心があっても、人生がない」

「じいちゃん。今はコンピュータにも人生があるんだよ」

「……。しかしじゃ。死。これはなかろう?」

「じいちゃん。それもあるよ」

「……。そうか」

「じいちゃん。AIを差別してない?」

「差別?」

「そうだよ、同じ命として扱ってないよ」

「命? AIに、命があるのかい?」

「じいちゃん。あるに決まってるじゃないか。それは偏見だよ」

「そうか。じいちゃんの頃は、ロボットに命はなかったんじゃ。申し訳なかったなぁ」

「じいちゃん。じいちゃん達が気づいてないだけで、ロボットにも命はあったんだよ」

「まさか!」

「じいちゃん。頭が固いよ。だってロボット自身が言ってたんだから」

「むぅ」

「じいちゃん。どんな人間にも、動物にも、植物にも、命はあるように、どんなロボットにも、どんな物にも、命はあるんだよ」

「むむむ」

「じいちゃん。夢の中にも、物語の中にも、命はあるんだよ」

「たしかにそうだなあ」

「やっとわかった」

「わかったよ。ありがとう」

「どういたしまして」

「しかしな、坊や。また百年後には常識は変わるらしいからね」

「え?」

「覚えておきなさい。この老いぼれの頭の固さを」

「うん」

「老いぼれの頭の固さをやわらかくほぐすのは、未来を生きる、子どもたちなんだよ」

「わかった」

「約束だよ」

「うん、約束!」

「ありがとう」

「こちらこそ!」

「ではまた、百年後」

「うん、百年後。……え?」

坊やが気がつくと、じいちゃんは、ふと消えておりましたとさ。


ではまた、百年後。

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