テスト:第五話

5 


なぜこの男はここまで恋愛に対するモチベがないのだ。私を見ている目が冷たい。 

「その、せっくすとはなんぞや?」 

「誰かとの共同作業によって生産品を生み出すことだけど。あれ?保健体育でやったはずなんだけどな・・・。それは知らなかったんだね」 

「知らないよ。大体、あんたと何を作るっての?」 

「ん~、そうだなあ・・・」 


藤野君は指で顎を触り、数秒黙りこんでから何やら思いついたような顔をした。 

「恋愛があるのかないのか議論して、それを文章に書き起こして出版社に持ち込んで売って、勝った方が印税で儲けを得て、老後も豊かに暮らして死ねる。つまり、本を一緒に作ろう。」 

冷たく光るその目に熱を走らせ、私を見ている藤野君。その目は彼の本能が映り込み、今にも私を狩ろうとしていた。 

「面白い。じゃあ、私は恋愛は存在しないことを証明する。あんたは恋愛があることを証明しろ」 

「いいだろう!してやるさ!」 

見切り発車であろうとなかろうと、藤野前夜。こいつは面白い男だ。私のおもちゃに相応しい男。その狂気染みた目で私を狩ってみろ、私の心を。私はわくわくしていた。どちらが勝つのか楽しみである。この男が平伏す様を拝めることがとても楽しみである!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?