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「その優しさ、ハラスメントですよ!」ーー「ホワイトハラスメント」とは

近年、ハラスメントに対する社会の目が一層厳しくなっています。

職場でも多くの管理職がハラスメントにならないように気を配りながら部下と接していることでしょう。

ただ、その優しさが逆にハラスメントと見なされることがあるのです。



新しいハラスメント、"ホワハラ"とは?


ホワイトハラスメント(略してホワハラ)とは、上司が部下に対して過剰に配慮することで、結果的に部下の成長機会を奪う行為を指します*1。過度な優しさが部下に精神的な負担となるということです。

この言葉が広まったのは、2024年4月から放送された、川口春奈さん主演のドラマ「9ボーダー」がきっかけです。劇中では「残業しなくていい」「私がやっておく」といった言葉が、「指導してくれない、ホワハラだ」と部下に受け止められ、「ホワハラだ」と反発するシーンが注目されて社会に広まりました*1。

さて、このホワハラを聞いて「何でもかんでもハラスメントと騒ぐのはおかしいのでは?」と感じる人もいるでしょう。近年、ちょっとした言葉や態度でもハラスメントと受け取られる時代です。特に最近は「ハラスメントと反発されることこそがハラスメント・ハラスメントだ」と反発する声さえあります。

こうした風潮に対して、管理職の中には「部下から訴えられるくらいなら何もしない方が良い」と感じるのは無理もありません。ただ、こうした半ば放任的な関わりでさえも、ハラスメントだと言われ始めてきたのです。

ここまで過剰になると、もはやため息も出てしまいます。ただ、ここは少し冷静になってみて、「ホワイトハラスメントがハラスメントなのかどうか」を見直してみることも大事ではないでしょうか。

ホワイトハラスメントは本当に"ハラスメント"なのか?


そもそも職場におけるハラスメント(特にパワーハラスメント)とは、次の3つの要素を満たしたものを指します*2。

①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの

こうした定義を踏まえ、パワーハラスメントには次の6つの代表的な類型があるとされています。

① 身体的な攻撃
 蹴ったり、殴ったり、体に危害を加えるパワハラ

② 精神的な攻撃
 脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など精神的な攻撃を加えるパワハラ

③ 人間関係からの切り離し
 隔離や仲間外れ、無視など個人を疎外するパワハラ

④ 過大な要求
 業務上明らかに不要なことや遂行不可能な業務を押し付けるパワハラ

⑤ 過小な要求
 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないパワハラ

⑥ 個の侵害
 私的なことに過度に立ち入るパワハラ

今回のホワハラは、この中で「過小な要求」型に分類される可能性があります。すなわち、部下に適切な責任や仕事を与えず、能力以下の業務を割り当てることで部下のモチベーションを下げる行為に該当するということです。

一体、どうするのが正解なのか?


こうした時代になって「難しい世の中になってしまったものだ」と嘆く方もいらっしゃるでしょう。ただ、この流れは不可逆であり、適切に世の中の流れを掴んで合わせていくことが求められます。

では、ホワハラと言われないために、今回のケースではどうするのが良いのでしょうか。

ハラスメントが起きてしまう原因のひとつは、双方向のコミュニケーション不足です。言うは易く行うは難しですが、上司と部下の間でしっかり意思疎通を行い、お互いの意見や希望を理解することが重要です。

これは上司だけに求めるものではありません。部下もまた、自らの意思をはっきりと伝え、上司には成長を支援するための適切な指導を求めるべきだと考えます。

ホワハラは、上司がリスクを感じて思わず取ってしまった行動のひとつです。ただ、結果的にこうした行動が部下に不利益をもたらす可能性があるのは残念なことです。健全な職場環境をつくるためには、まずハラスメントに対する理解が必要になってくるでしょう。


(参考情報)

*1 読売新聞「ホワイトハラスメントとは?川口春奈主演ドラマで注目、専門家が解説」https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20240514-OYT8T50020/(2024年5月29日アクセス)

*2 厚生労働省「ハラスメントの定義」https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about(2024年5月29日アクセス)

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