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「3:33の法則」ーー 悪いうわさが広まりやすいのは何故?

「3:33の法則」をご存じでしょうか?

商品やサービスに満足した人はその経験を3人に話し、不満に感じた人は33人にその話を広めてしまうーーつまり、"良いうわさよりも悪いうわさの方が広まりやすい"という考え方です。

なぜ、こうしたことが起きるのでしょうか? 「悪口のコミュニケーション」という研究から紐解いてみましょう。




悪いうわさはどうして広まりやすいのか?そのメカニズムを探る


悪いうわさが広まりやすい要因のひとつとして、人間のコミュニケーションの構造があると考えられます。Eder & Enke(1991)による研究を参考にしながら、この構造を見てみましょう。

まず、悪いうわさは公然と広まる場面は、決して多くないでしょう。むしろ、陰で広がっていくことが一般的だと思われます。

その理由は、悪いうわさを広めた本人は、「あの人は悪い噂を広める人だ」というレッテルを貼られてしまうからです。ですので、悪いうわさは最初は慎重に、そして少しずつ、その対象者の名前が口にされることが多いのではないでしょうか。たとえば、「〇〇さん、最近どうかしら?」といった感じです。

その上で、悪いうわさとして広がるかどうかは、聞き手の反応によって決まると考えられます。当然ながら、「〇〇さん、最近活躍しているよね」など、良い反応が返ってくる場合、悪いうわさには発展しないでしょう。

しかし、「〇〇さんって、実は・・・」といった形でその人に対する評価に悪いニュアンスが含まれていた場合、その後の反応によって悪いうわさとして広まっていく可能性があります。


悪いうわさへと発展する分かれ目。その4つのパターンとは?


もしその人に対する評価に悪いニュアンスが含まれていたならば、その後の周囲の反応にはいくつかのパターンがありそうです。ここでは、Eder & Enke(1991)が示す「聞き手の反応」のパターンを参考にしながら、悪いうわさへと進展するメカニズムを探っていきましょう。

まずは「説明」という反応です。悪いうわさの一端を聞いた後、周囲の聞き手の中で誰かが、そのうわさを説明しようとする反応です。たとえば、「私もその話、聞いた。〇〇さん、先日ミスしてお客様を怒らせたらしいね」といった具体的な補足が加えられることがあります。また、「結局、〇〇さんってさ・・・」といった形で話が要約されることも考えられます。

次に挙げられるのは「支持」という反応です。「私もその話、共感するわ」など、その悪いうわさに同感を示したり、後押ししたりする反応が該当します。

その悪いうわさに対して「拡張」する反応もあるでしょう。「その話に関連するんだけど、こんな話もあって・・・」といった形で、うわさを更に広げる反応が現れることがあります。

最後に「誇張された感情」です。「〇〇さんのその話を聞いて、私、もう二度と話したくないって思ったんだよね」といったように、自身の感情を少し大げさに表現する反応です。

このように、聞き手の反応によって悪いうわさは急速に広がっていくのです。

興味深いのは、こうした反応を示す際、聞き手が心からそう思って反応するケースもあれば、単にその場の雰囲気をこわしたくないために、そうした反応をとらざるを得ないケースもあるということです。これは我々のコミュニケーションのメカニズムとして、自動的にそう反応するものとしてインストールされているためです。例えば、挨拶をされれば、無意識に挨拶を返すのと同じ構造です。

悪いうわさは、まるでウイルスのように広がります。一度広がると、それを止めるのは難しいでしょう。だからと言って、聖人君主のように生きるのもまた難しいですが、少なくとも聞き手としてできることは悪いうわさに振り回されないように、冷静にその話を受け止めることではないでしょうか。

悪いうわさで惑わしたり、惑わされないためにも、その伝え方は十分注意したいところです。

(参考文献)
*1 Eder, D.,& Enke, J. L.(1991). The structure of gossip: Opportunities and constraints on collec-tive expression among adolescents. American Sociological Review, 56(4),494-508.

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