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10人、20人、30人 ーー どんな組織の壁にぶち当たる?

ベンチャー企業は、ビジネスの拡大に伴い、多くの問題に直面します。これらの問題は、事業活動だけでなく、組織観点のものも含まれます。

もちろん全ての企業が同じ問題に直面するわけではありません。事業特性や組織の状況によってさまざまですが、目安として、従業員数が10人、20人、30人と増えるごとに、新たな問題に向き合うことが多いでしょう。

具体的には、どんな「組織の壁」に対処する必要があるのでしょうか?世の中の事例や筆者の経験も踏まえ、紹介したいと思います。




「10人の壁」で起こる"経営トップの抱え込み症候群"


組織が拡大していく中で、最初に問題と向き合うことが多いのは、従業員数が10人を超え始めるときではないでしょうか。


たびたび目にする問題として

  • 人材が定着せず、「入っては辞める」が繰り返される

  • 従業員それぞれが異なる方向を見ており、なかなか足並みが揃わない

などが起きるとされます*1 2。


さて、これら問題に直面したとき、皆さんが経営トップなら何に取り組むでしょうか。ひとつは、自身のマネジメントの在り方に向き合うことが必要かもしれません。特に、これまで経営トップが一人でマネジメントを行っていたなら、経営チームを組成して取り組むか、あるいは、自身の仕事の一部を権限委譲するか、などの決断が求められます。

ただ、どんな決断を取っても、更に悩ましく思うのは、「誰に任せるのか?」という問題ではないでしょうか。自身の同じレベルで経営を考えられる人材は決して多くなく、かと言って時間をかけて人材を育成するだけの余裕も少ないでしょう。

こうしたジレンマに悩まされ、経営トップは知らずのうちに"抱え込み症候群"に陥ってしまうものです。この状態を脱するには、経営トップ自らのマネジメント力を高めることが重要になってきます。


「20人の壁」はいわば"組織化の夜明け前"


さて、経営トップのマネジメント力が向上し、「10人の壁」を越え始めたとしても、また別の問題に直面することになります。

その問題のひとつが、「組織化の夜明け前」問題です。

ひとつが、経営トップの意図が現場になかなか伝わらない、などです*2。スパン・オブ・コントロールの観点から見ると、一人のリーダーが管理できる人数は5~7名程度と言われており*3、この考え方に基づくと、20人の組織では3人程度のリーダーが必要になってくるでしょう。

しかし、リーダー層を作ると、当然ながら、組織も3階層になってしまいます。具体的には「経営」ー「ミドルマネジメント」ー「現場」の階層が生まれてしまい、経営トップの意図がそのまま現場に伝わりづらくなってしまうのです。

また、任せたリーダー達がリーダー業務に集中できるとも限りません。むしろ、急成長中の組織であれば、プレイヤーとしての業務が優先されることが多いのではないでしょうか。その結果、リーダーがプレイングマネージャーになりがちで、なかなか組織的な動きが生まれないものです。

この段階で向き合うことになるのは「明文化」だと考えています。これまで口頭で伝えていた情報を、ルールやガイドラインとして整備し、言語化して浸透させる努力が求められます。これにより、組織全体の理解と一体感を深め、次の成長ステージへと進みやすくなると考えます。


「30人の壁」で訪れる"リーダーシップの危機"


組織が30人近くになると、組織的なマネジメントの重要性が増してきます。

具体的な問題としては、

  • 仕事が分業化し、全体的なコミュニケーションが減少する

  • 評価に対する不平等感が生じ、納得感が失われる

  • 社員の多様性が増し、孤立や対立が生じる

などが見られます(繰り返し申し上げると、事業特性や組織の状態によって、全ての組織にこうした問題が起きるとは限りません)。


さて、こうした問題が起きる中で、特に集中して向き合いたい問題が「経営トップのリーダーシップの危機」です。

これまで経営トップ一人が気合いと根性で乗り越えられてきたとしても、30人前後になると、一人で対応し切るには限界が見え始めます。これは「グレイナーの5段階企業成長モデル」でもしばしば指摘される問題です*4。

もちろん状況によって打ち手も変わりますが、この時期から明確に管理機能の強化や経営の仕組み化の必要性を強く感じることでしょう。

これ以降も、企業はその組織成長とともにさまざまな問題に向き合い続けることになります。これは避けられない現実ですが、その中で重要なのは、直面する問題の性質が変化していることではないでしょうか。

なぜなら、問題の性質が変わるということは、それだけ組織が進化している証拠なのですから。



(参考情報)
*1 PIVOT「10人の壁(前編):スタートアップに価値観の多様性はいらない」https://pivotmedia.co.jp/article/1202(2024年2月15日アクセス)

*2 ウイルネス株式会社「組織が大きくなるプロセスで直面する「10人・20人・40人・100人の壁」」https://willness.co.jp/column/4-hurdles-that-expanding-teams-face/(2024年2月15日アクセス)

*3 グロービス経営大学院「スパン・オブ・コントロール」https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11843.html(2024年2月15日アクセス)

*4 ラリー・E・グレイナー(1979)「企業成長の"フシ"をどう乗り切るか」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 1979年1-2月号

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